CONDITIONING
2019.05.24

僕たちのカラダにストレッチが必要な理由

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カラダの硬さは、多くのデメリットをもたらす。姿勢が悪くなり老けて見えるし、筋トレやスポーツ時に肉離れなどのケガをしやすい。転倒しやすく、疲れやすいといったコンディション全般にも関わる。僕たちのカラダにストレッチが必要な、5つの理由。

1. 使わない筋肉は誰でも硬くなる

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若い人ほど筋肉が柔らかく、歳とともに筋肉は硬くなると信じている人は多い。でも筋肉は加齢で硬くなるわけではない。使わないでほったらかしにするから硬くなるのだ。

筋肉は、筋線維という細長い細胞を無数に束ねたもの。筋線維には、アクチンとミオシンが交互に重なるサルコメアというユニットが一列に連なる筋原線維が詰まっている。運動神経から信号が伝わるとアクチンがミオシンの間に滑り込み、サルコメアが一斉に短くなり、筋肉は収縮。信号が消えるとアクチンは元に戻る。筋肉を使わないとサルコメアが減り、筋原線維が短くなるため、動ける範囲が狭まって筋肉は硬くなるのだ。

またデスクワークなどで長時間同じ姿勢を続けると、特定の筋肉に負担が集中してサルコメアがフリーズ。やはり硬くなる。筋肉が硬いと血液循環が悪くなるし、姿勢も崩れる。カラダの動きが乱れて運動時のケガや日常での転倒を招きやすいので×。

2. 柔らかくなるメカニズムが筋肉にはある

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硬い筋肉を柔らかくするのが、ストレッチ。では、どうやって筋肉は柔らかくなるのか。

筋肉は伸縮自在のゴムのようなものだと思われがちだが、それは誤解。実際は縮むだけで伸びはしない。

「筋肉はゴムではなくロープのようなもの。ストレッチを続けると筋肉が伸びやすくなるのは、ロープを足したようにサルコメアの数が追加されて、筋原線維が長くなるためです」(中野ジェームズ修一さん)

筋肉の両端は骨に付くので長さは変わらないが、筋原線維が長くなると柔軟性が上がり、関節可動域も広がる。個人差もあるけれど、ストレッチを3か月以上続けると変化が実感できる。短期的には筋肉を包む筋膜の影響もある。ストレッチを1セットではなく2〜3セット行うと、後半ほど柔軟性が上がる。そんな短期間にサルコメアが増えるわけがない。伸ばし続けると筋膜の抵抗性が下がり、筋肉は伸びやすくなるのだ。

3. 硬くなりやすい筋肉が姿勢を狂わせる

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筋肉は硬くなっても、弱くなっても困る。猫背などの不良姿勢の背景には、硬い筋肉と弱い筋肉の存在がある。猫背では、胸の前にある大胸筋が硬くなり、肩が前に出て左右の肩甲骨が背骨から離れる外転が起こる。しかも対抗して肩甲骨を背骨に引き寄せる内転を担う菱形筋は弱くなりやすく、猫背が固定されやすい。

筋肉には硬くなりやすいタイプと弱くなりやすいタイプがある(下表参照)。硬くなりやすいのは大胸筋をはじめとする姿勢に関わる筋肉。多くは2つの関節を動かす二関節筋だ。一方、弱くなりやすいのは菱形筋など、姿勢に関わる筋肉と対照的な働きをする拮抗筋。多くは1つの関節のみを動かす単関節筋だ。

硬くなりやすい筋肉をストレッチで柔らかくしても、拮抗筋が弱いと正しい姿勢は長くキープできない。ストレッチと並行し、弱くなりやすい筋肉に適度な抵抗をかけて鍛える筋トレも忘れずに行っておきたい。

4. ストレッチで予防できる病気がある

ストレッチを続けると柔軟性が高まり、快適に動ける。筋肉の緊張がオフになるから、肩や腰もラクに。筋トレを組み合わせると姿勢だって正しくリセットされる。

加えてストレッチは、動脈硬化の予防にも効く。動脈硬化とは動脈が硬く狭くなり、血液が詰まりやすい状態。心臓病や脳卒中の元凶だ。

糖尿病の運動療法
生活習慣に起因する2型糖尿病(日本では糖尿病の95%以上を占める)の患者を対象に、43gの糖質を含むジュースを飲んだ後、40分間ストレッチを行った。ストレッチしなかった対照群と比べて血糖値が低く抑えられた。
Nelson et al. Journal of Physiotherapy, 57: 173-178, 2011

まず注目なのは血圧を下げる作用。筋肉が硬いと血管が圧迫されて血圧が上がりやすい。ストレッチで筋肉が柔らかくなると、血管が広がって血圧が下がり、動脈硬化のリスクが下がる。高血糖も動脈硬化を進めるが、ストレッチが血糖値を下げるという報告もある(グラフ参照)。詳細は不明だが、恐らく筋肉を伸び縮みさせるとより多くの血糖の取り込みが促されるのだろう。この他、股関節など下半身の柔軟性が上がると歩幅が広がり日常での活動量がアップ。体脂肪が燃えやすく動脈硬化の危険因子でもある肥満が避けられる。

5. 動的ストレッチで血流UP。関節も健康に

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ストレッチには大きく2種類ある。一つ目は筋肉を静かに伸ばす静的ストレッチ。もっともポピュラーで、とくに断らない限り、ストレッチ=静的ストレッチだ。もう一つは動的ストレッチ。ラジオ体操のようにダイナミックに筋肉を動かす。静的ストレッチのメリットについてはすでに触れたから、ここは動的ストレッチの必要性にスポットを当てよう。

動的ストレッチで筋肉を動かすうちに血液循環が良くなり、体温が上がる。関節の滑りを良くする滑液の分泌も促すから、運動前のウォーミングアップに最適。見逃せないのが、関節内の軟骨への働きかけ。軟骨には血管がなく、スポンジを強く握ると水気が出て、緩めると水気を吸うように、外からの圧力で血液循環を行う。動的ストレッチでは軟骨に適度な圧力変化が及び、血液循環が改善。新陳代謝が促進されて軟骨の状態が良くなる。これで軟骨の劣化による膝や股関節の痛みが防げるのだ。


取材・文/井上健二 イラストレーション/うえむらのぶこ
(初出『Tarzan』No.765・2019年5月23日発売)

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