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糖質オフと筋肉の関係は? 運動大好きなあなたの素朴な疑問を解決します

運動大好きなランニングマンC男/学生時代は運動部に所属。お腹の緩みが気になりだして自宅で筋トレを始め、やっと筋肉がついてきた。1年前からランニングにも目覚め、今年はフルマラソンの大会に挑戦したい。

糖質オフビギナーのA太、ダイエットマニアのB子に続き、今回は筋トレが習慣になっているC男の登場。「糖質オフと筋肉の関係は?」「ケトン体が運動にいいというけれど本当?」「運動するからには糖質をとらなければいけない?」など、素朴な疑問を解決します。

素朴な疑問1「糖質オフだと筋肉が分解されてしまうのが心配」

苦労して作った筋肉が分解されるのは、C男ならずとも嫌なもの。カロリー制限でダイエットをすると、足りないエネルギーを補うために、筋肉のタンパク質が分解されやすい。

タンパク質は、運動時以外は滅多にエネルギー源にはならないのだが、カロリー制限をするとアミノ酸に分解されて緊急避難的に消費されるのだ。筋肉は安静時の代謝(基礎代謝)の20〜30%を占めているから、筋肉が減ると代謝が下がってしまい、食事量を戻したときにリバウンドに悩まされやすい。

ならば糖質オフではどうなのか。

糖質オフではカロリーは減らさないので、カロリー制限ダイエットのような筋肉の分解は起こりにくい。

減らすのは糖質のみであり、タンパク質や脂質は積極的に摂ってよし。体内で合成できない必須アミノ酸をバランス良く含む肉類、魚介類、大豆食品などから、タンパク質をしっかり摂ろう。そうすれば筋肉の消耗を気にせずに済むし、カロリー制限ダイエットにありがちなリバウンドに悩まされることも少ない。

素朴な疑問2「ケトン体が運動にいいと聞きますが、本当?」

緩い糖質オフで1日130gの糖質を摂る理由は、厳しすぎると続かないうえに、糖質を減らしすぎるとケトン体が増えるため。

ケトン体はβ-ヒドロキシ酪酸、アセトン、アセト酢酸の総称。糖質の摂取を減らすと、体脂肪から分解された脂肪酸が増えて肝臓で合成される。ケトン体は脳をはじめとする細胞のエネルギー源だが、本分は飢餓状態のような非常時のエネルギー源。ケトン体に頼り続けるのは不自然だ。

C男が言うように、筋肉は運動時のエネルギー源としてケトン体を利用する。ところが、ケトン体の濃度が高くなりすぎると、筋肉はケトン体が取り込めなくなる。

「筋肉と違い、脳は際限なくケトン体が取り込めますから、ケトン体は飢餓時でも脳を働かせる働きが主眼であり、筋肉のエネルギー源としての役割は限られたものだと考えられます」(食・楽・健康協会の山田悟理事)

ケトン体は血管の内側を覆う内皮細胞の機能を下げたり、ケトアシドーシスを起こしたりする恐れもあるから、厳しすぎる糖質制限は控えたい。

素朴な疑問3「運動するから、やはり糖質はたくさん摂るべきですよね?」

運動のエネルギー源は糖質とケトン体を含めた脂質。糖質はグリコーゲン、脂質は体脂肪(中性脂肪)として蓄えられているが、体脂肪は何十㎏と貯められるのに、グリコーゲンは筋肉と肝臓に400g程度しか貯蔵できない。

このため、マラソンのように長時間行う運動では、グリコーゲンの枯渇を避けるため、糖質摂取を増やして貯蔵量を上乗せするグリコーゲン・ローディング(GL)が行われる。

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糖質オフでもグリコーゲンは回復する
最大酸素摂取量の64%ペースで3時間トレッドミルを走り、高糖質食(HC)と低糖質食(LC)で筋肉のグリコーゲン量を比較。運動直後、運動後2時間で低糖質食は高糖質食と同等に回復。 Jeff S. Volek et al,. 2015

けれど、高糖質にしてもGLがうまくいくとは限らない。なかには高糖質で高血糖になり、糖尿病を招くケースもある。糖質オフ食と高糖質食が運動に与える影響を調べた研究では、糖質オフ食では脂質を効率的に使えるようになり、運動後のグリコーゲンの回復も高糖質食と変わらないという結論が出ている。

糖質は運動中に補えば、すぐに使われて高血糖にも陥らないから、GLを無理に行う必要性はないのである。

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運動中の筋肉は糖質をどんどん取り込むから、糖質はカラダを動かしながら摂るのが正解だ。

監修/山田 悟(食・楽・健康協会理事。北里研究所病院糖尿病センター長)、美才治真澄(フードコーディネーター、管理栄養士)

(初出『Tarzan』No.697・2016年6月9日発売)

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