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糖質オフ生活を始める前に! ビギナーの素朴な疑問を解決します

糖質オフビギナーのA太/会う人、会う人に「最近、太った?」と言われ続けた挙げ句、ようやくダイエットを決意。糖質オフを始めたいが、まだ炭水化物と糖質の違いも不明瞭な初心者。基礎から知りたい。

糖質の摂取を控える糖質制限ダイエットがブームになってしばらく経つ。ロカボ商品やロカボレストランも登場しているが、そもそも糖質オフって、カラダにどんな影響があるの? 6つの素朴な疑問に答えます。

素朴な疑問1「糖質オフすると低血糖になるでしょ?」

これはA太のようなビギナーから寄せられるFAQだが、糖質オフでも低血糖にはならない。

糖質は血中ではブドウ糖としてやりとりされており、その100ml当たりの重量(mg)が血糖値。血糖は全細胞のエネルギー源だから、血糖値が下がりすぎると一大事。そこで血糖値を上げるホルモンはグルカゴン、成長ホルモン、コルチゾール、甲状腺ホルモンなど数種類用意されており、肝臓に蓄えたグリコーゲンや体脂肪を分解してブドウ糖を作り、血糖値を保つ。

これは体内環境を一定範囲内に保とうとするホメオスタシス(恒常性)の仕組みの一つ。気温が下がっても体温が下がらないように、糖質の摂取を減らしたからといって低血糖にはならない。低血糖に注意すべきなのは、糖尿病で血糖値を下げる薬を飲んでいる人が、極端な糖質制限を行ったとき。健常人が糖質オフをしたからといって、低血糖になる心配はないのだ。

素朴な疑問2「糖質オフはリバウンドしやすくて、やる気が出ません」

ダイエットビギナーがもっとも怖がるべきはリバウンド。頑張って痩せたのに、気を抜くと減量前より体重が増える現象である。

糖質オフに限らず、ダイエットを期間限定で行い、やめたら体重と体型が元に戻るのは当たり前。原状復帰するのは仕方ないとしても、減量前より太ってしまうと骨折り損のくたびれ儲けになる。

「糖質オフでリバウンドが起こるケースでいちばん多いのは、糖質のみならずカロリーまで制限してしまうパターンです」(食・楽・健康協会の山田悟理事)

カロリーになる3大栄養素のうち、糖質のみをセーブするのが糖質オフの鉄則。欲張ってそれ以外の脂質やタンパク質まで抑えると、代謝が落ちてリバウンドしやすい。カロリーだけを気にして長年ダイエットをしてきた人は、この際カロリー神話ときっぱり決別し、糖質量だけに目を向けた新しい食事法を身につけよう。

素朴な疑問3「1日1食が流行っています。糖質を1食130g摂るのもアリ?」

山田先生が提唱する糖質オフ=ロカボでは糖質の上限を1日130gに設定している。内訳は、1食40g×3食+間食10g=130g。とはいえ、1食で130g摂ったり、2食で65gずつ摂ったりしてもいいわけではない。

一度に摂る糖質量が増えるほど血糖値は上がりやすく、食後に高血糖が起こる。食後高血糖は、血糖値を下げるインスリンというホルモンの大量分泌を招くため、一転して血糖値が下がりすぎて空腹感が募り、食べすぎに走りやすい。

また糖質量にかかわらず、食事回数が増えるほど痩せやすく、減るほど太りやすい。その一因は、脂肪細胞が分泌するレプチンというホルモンの作用。レプチンには食欲を抑える働きがあるが、食事回数が減るとレプチンの分泌量も減り、お腹が空いてダイエットが続かないのである。

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1日1食だと食欲が高まりやすい
1日3食、朝食抜きの2食、夕食のみの1食で血清中のレプチン濃度の変化を比較した。1食だと食欲を抑えるレプチンの分泌が少なく、食欲が亢進しやすい。

素朴な疑問4「頭を使う仕事には、やはり糖質はたくさん摂るべきでしょ?」

脳細胞は糖質しかエネルギー源にできないから、糖質オフだと脳がきちんと働かない…。これは根拠なく流布する都市伝説のようなもの。たとえ糖質を一切摂らなかったとしても頭はちゃんと働いてくれる。肝臓や腎臓で、アミノ酸や脂質の一種であるグリセロールなどを元に糖質を作リ出す「糖新生」という仕組みがあるからだ。

確かに脳はブドウ糖が大好物だが、それ以外にも脂質から生じるケトン体をエネルギー源にできる。正真正銘、ブドウ糖しか使えないのは、血液中で酸素を運んでいる赤血球くらい。「脳細胞と赤血球で1日130〜150gのブドウ糖を使いますが、糖新生は1日最大150gのブドウ糖が生み出せるのです」(山田先生)

糖質オフでは1日70g以上の糖質を摂っているし、糖新生もあるから、電池切れで頭が働かなくなることはあり得ない。逆に糖質を摂りすぎると前述のように血糖値が急に上がって急に下がりやすく、眠くなって頭がぼんやりする恐れもある。

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都市伝説を鵜呑みにして甘いものをやめないと痩せられないし、逆に頭が働かないことも。

素朴な疑問5「飲み会や会食などが多いので、糖質オフは難しい。諦めないとダメですか?」

糖質オフは、カロリー至上主義のダイエットと違い、お酒を楽しみながら行えるのも利点。糖質が多いビールや日本酒などの醸造酒を避ければ、糖質ゼロの焼酎やウィスキーなら適量が飲めるのだ。

けれど、飲み会や会食の機会が多すぎると、自分のペースで食事ができなくなり、糖質オフが難しいことも。予防策として有効なのは、飲み会や会食は居酒屋のようにアラカルトで注文できるお店を選ぶこと。中華でもイタリアンでもフレンチでも、ご飯やパンや麺類などの穀類とデザートをパスすれば、糖質オフは可能である。

コース料理を食べないといけない状況では、糖質オフ中であると周囲に宣言してお店にも穀類やデザートを外してもらうように頼み込めば、せっかく出された料理を残して気まずい思いをしなくて済む。

「接待のように自分の都合でメニューが選べないなら、いっそ〝今夜は糖質オフはお休み〟と割り切るのも一案です。その方がストレスがなくダイエットが継続しやすいかも」(管理栄養士の美才治真澄さん)

素朴な疑問6「人工甘味料なら、たくさん摂っても平気ですか?」

糖質オフでは砂糖などの甘味が恋しくなることもある。そんなときに賢く利用したいのが人工甘味料。人工甘味料には合成甘味料と糖アルコールがあり、血糖値を上げにくく、カロリーになりにくい。

何でも“人工”とつくとカラダに悪い気がするけれど、フグ毒やカビ毒のように、自然界にも毒性の強いものは多い。“自然”だからOKで“人工”はNGというのは誤った先入観なのだ。それでも気になるなら、人工甘味料の中でもより“自然”な糖アルコールを選ぼう。

キシリトール、ソルビトール、エリスリトールなどの糖アルコールは人為的に合成されたものではなく、自然界に存在するか、または天然素材を原料としたもの。アメリカの食品医薬品局(FDA)も厚生労働省も安全性を評価し、上限量を定めていない。なかでもエリスリトールは血糖値をまったく上げず、カロリーにもならない。

「アスパルテーム、アセスルファムカリウムといった合成甘味料は摂取に上限はありますが、摂りすぎなければ安全」(山田先生)

監修/山田 悟(食・楽・健康協会理事。北里研究所病院糖尿病センター長)、美才治真澄(フードコーディネーター、管理栄養士)

(初出『Tarzan』No.697・2016年6月9日発売)

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