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“スリップインするだけ™”じゃない!《スケッチャーズ スリップ・インズ》快適学。
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中級ランナーがフルマラソンで記録を伸ばせない原因のひとつに後半のエネルギー不足が挙げられる。42.195kmを、エネルギー不足を起こすことなく走りきるには、カラダの脂質代謝能力を引き上げることが近道。ここで提案する6つのアイディアに挑戦しよう。
目次
これは理論編の記事で紹介した「高強度運動+低強度ラン」の実践編。その名の通り「ガチ」で走ることでアドレナリンや成長ホルモンが分泌されて脂肪分解が促され、さらに短時間に糖の貯蔵量が減る結果、脂質代謝のスイッチが入る。こうして事前準備しておけば、その後のゆっくりランで脂肪が燃える。さらに、この練習を繰り返せば運動のたびに脂肪が優先して使われるようになっていく。
ここでは具体的な10kmのガチゆる走のやり方を解説しよう。まずは準備運動として1kmのジョギングを行う。それでカラダが温まったら、次の1kmをガチで走る。後先のことを考えずに、あくまでも全力で走るよう意識し、しっかり走り切ろう。普段のペースよりもかなり速く走ることになるのでキツいと思うが、ここは踏ん張りどころ。もしトラックがあれば、200mの全力走×5本でもOKである。
1kmのガチ走を終えたら3分休憩する。水分補給は水で。糖の多いスポーツドリンクだと、脂質代謝のスイッチが入りにくくなるからだ。その後、8kmをゆっくり走る。ペースの目安は、ガチ走とは逆に楽に感じるスピードで構わない。息を整えつつユル~く走って終わろう。
筑波大学体育系教授・鍋倉賢治さんの実験結果によると、ガチゆる走10㎞で通常の10㎞ランの約20%増しで脂質代謝が行われるようになるとか。さらに心肺機能や脚力も同様の向上効果が見込めるなどメリットが多い。
あるランナーが、この練習をフルマラソンの2か月前から週2回行ったところ、長距離練習なしでタイムが5時間台から4時間台にアップした。効果てきめんである。俄然ガチゆる走に興味が湧いてきた人は、早速試してみるべし。
走る前に意識的に脂肪を多めに摂ることで、体内の脂肪が使われやすい状態にするファット・ローディング。レース前にも行うことで少しでも後半の失速を防ぎたいところだが、消化のいい炭水化物を摂るならともかく、レース直前に脂肪分たっぷりの食事はキツい。では、どうやって脂質をうまく摂ればいいのだろうか。
「フルマラソン当日の朝はスタート3時間前までに800~1000キロカロリー摂取するのがセオリー。会場への移動中にコンビニのおにぎりなどでカーボローディングするランナーも多いと思いますが、おすすめはコンビニスイーツでおなじみのロールケーキを加えること。ロールケーキなら糖質と脂質をバランスよく摂れるのです」(鍋倉さん)
中身の具材にもよるが、コンビニおにぎりは1個当たりだいたい200キロカロリー前後。一方、コンビニのロールケーキは1切れ200~300キロカロリー程度だ。つまりおにぎり3個とロールケーキ1切れを食べれば、カーボローディングとファット・ローディングを同時に済ませられる。順序的には、ロールケーキを最後に食べるといい。
もちろん、走っている最中の脂肪摂取は消化が悪いので避けるべし。もしスタート前に時間的余裕があれば、ロールケーキではなくチーズやピザトーストなどで脂肪分を摂ってもOKだ。
ある程度経験を重ねた中級レベルのランナーであれば、「このペースで走れば当分の間走っていられる」という感覚が出来上がってくる。それがキロ6分ペースの人もいれば、キロ7分ペースの人もいるだろう。
しかし、自分が走り続けられるペースがキロ7分だといっても、真冬と真夏では同じキロ7分でもカラダにかかる負荷は大きく変わってくる。そこでもうひとつ、運動強度の指標にしたいのが心拍数である。心拍数が高ければ、それは運動強度が高くなっている証拠。ラン初心者は心拍数の上下動が大きくなるが、走り慣れると安定してくるはず。
たとえば、絶好のランニングシーズンである今の季節に、ちょうどいいペースで走る時の心拍数をチェックしたら150前後だったとしよう。つまりこれがLT(乳酸性作業閾値)ペースなのだが、この150の心拍数を夏も冬もキープして走る。このときペースはキロ7分半のケース(夏場や体調の悪いとき)もあれば、キロ6分半(冬場や体調の良いとき)のケースもあるだろう。しかし心拍数を基準にすることで、カラダにかかる負担をより正確に把握でき、無理なく持久力アップのための練習がこなせるのだ。
最近は脈拍計測機能付きウォッチがたくさんある(脈拍数は心拍数の指標になる)。中級レベルになったら、導入することをオススメする。
持久力はもちろん、脚力、ついでに心肺能力も鍛えられるのが起伏のある道でのラン練習。起伏のある道、と言われて山道を思い浮かべ、トレランや山登りを想像して「山まで行くのは無理だよね」と諦めてしまった人、それは早合点というものだ。
べつに山まで行かずとも、少し周りを見渡せば自分の生活圏内に起伏は意外とたくさんある。近所の道路のちょっとした上り坂、下り坂だって立派な起伏だし、少し広めの公園や緑地まで足を延ばせば、大抵の場合周回路や階段が設けられているはず。また、木々の間の小道などを辿っていけば何かしらのアップダウンがあるケースも。普段走っているロードのコースに、こうしたルートを取り入れてみよう。言うなれば近場で行うプチ・クロスカントリーのすすめである。
とくに野原や公園などの不整地は、舗装路を走る場合に比べて足首まわりや膝関節の柔軟性向上、太腿やふくらはぎなど筋力の強化が期待できる。加えて、まだまだ日中は気温が高い今のシーズンでも、公園や緑地の木々の中に一歩入れば涼しく、快適に走れる。何より街中を走るのとは爽快感が違う。
もしあなたが通常のランニングに少し飽きていたら、こうした異なる刺激を入れてみよう。普段と違うエッセンスはランを続けるためのモチベーションにもなり得るのだ。
上り坂や下り坂など、傾斜のある路面を走るのも持久力向上には効果的。上り坂ランでは心肺機能、下り坂ランでは筋力が鍛えられるのだ。しかし、いずれも正しく効果を得るためには、フォームでいくつか注意点がある。
「坂道は我流で走るとフォームを崩します。まず上り坂ですが、中級レベルのランナーの中には坂に差し掛かったら上体をあえて前傾させ、小さなピッチを刻んで一歩一歩上っていくケースが見受けられます。しかしあまり深く上体を前傾させすぎると、着地時に膝が大きく曲がって前進時に再び伸び上がる。まるで屈伸しながら上るような形になり、膝や太腿への負担が増してしまいます。前傾姿勢はほどほどにしましょう」(ランニングコーチの牧野仁さん)
一方、下り坂ではスピードが出ることへの恐怖心が先立ってカラダが後傾し、踵でブレーキをかけながら走ってしまうケースがあるという。その結果、膝がロックして痛めたり、またオーバーストライド気味に走ることで、本来省エネで走れるはずの下りで余計なエネルギーを使ってしまうケースも多い。
最初は少し怖いかもしれないが、下り坂でもやや前傾気味に走ってみよう。その際ストライドはあくまで狭く、小さなピッチで走ること。結果的にこの走り方がエネルギーロスを防ぎ、カラダにかかる負担も少なくなる。
他の時間帯に走るのと比べ、格段に脂質酸化率が高くなる朝食前の朝ラン。また、一日の始まりのウォーミングアップとしても大きな意味がある。しかしいざやろうと思うとやはりハードルが高い。実践する際はいくつかの注意点を押さえておきたい。
「まず、走り慣れないうちの朝ランはあまりオススメできません。まだフォームができていませんし、低血糖状態で走ると他の時間帯よりも転倒などによるケガのリスクも高くなります。始めるのは少しラン経験を積んでから、と心得ましょう」(牧野さん)
朝ランはいつも以上に運動強度が高くなっている点も留意したい。ある程度カラダを動かしてから走る他の時間帯とは異なり、それまでまるっきり休めていたカラダをいきなり動かすのだから当然と言えば当然なのだが、朝ランで普段通りのペースで走る必要はまったくない。キロ8分でもキロ7分でもいいので、あくまでゆっくりペースを保つこと。
朝は体温が低いこともお忘れなく。カラダは睡眠時に大きく体温を下げ、朝に向けて徐々に上がるパターンを毎日繰り返している。つまり起き抜けは体温が低い。時間が許す限り準備運動を行い、少しでもカラダを温めた状態で走ろう。合間にダイナミックストレッチを挟むのも関節の動きを良くするのにいいだろう。
最後に、朝ランを終えたら、必ず朝食をしっかり食べること。すでに脂肪は燃えやすい状態になっているので、糖質を摂っても問題なし。スローランとはいえ空腹で走ってきたわけだから、その後に食べる食事はいっそう美味しく感じられるはず。
朝ランは準備と心構えをしっかりと。そして、無理は禁物である。
取材・文/黒田 創 撮影/山城健朗 スタイリスト/高島聖子 ヘア&メイク/大谷亮治 監修/鍋倉賢治(筑波大学体育系) 取材協力/牧野 仁(マラソン完走請負人」スポーツネットワークサービス代表)
(初出『Tarzan』No.728・2017年10月12日発売)