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タンパク質も過剰摂取はNG? ネットに広がるウワサを斬る!

巷に流布するタンパク質の悪いウワサ。「肝臓・腎臓の機能が低下する」だとか「オナラが臭くなる」なんて説もある。いくら摂っても問題なしとも聞くし、結局のところどっちがホントなの? 気になる5項目を追求。相模女子大学栄養科学部の柳沢香絵准教授に訊きました。

体重1kg当たり、約1gのタンパク質を

カラダ作りに欠かせないタンパク質。体重1kg当たりの1日の必要量は、運動をしていない人でも0.8〜1.0g、トレーニングをしている人なら1.2〜2.0g程度とされている。

基本的にはトレーニーの味方であるタンパク質だが、過剰摂取はカラダに悪いというよからぬウワサも耳にする。タンパク質は諸刃の剣なのだろうか。

「厚生労働省が発表している『日本人の食事摂取基準 2015年版』というものがあります。ここには各栄養素の必要量と推奨量とともに、これ以上の量を継続摂取すると健康障害が発生するリスクが生じる“耐容上限量”が示されています。ビタミン、ミネラル類の多くはこの耐容上限量が策定されていますが、タンパク質にはありません」(相模女子大学栄養科学部・柳沢香絵准教授)

タンパク質に“摂りすぎ”はない?

「もちろん研究データの不足という可能性はありますが、現時点でタンパク質を多く摂ることで健康障害が生じるという科学的根拠はないのです」

もちろんタンパク質を可能な限り多量に摂れという話ではない。耐容上限量が示されてない=安全の保証、ではないし、適量以上のタンパク質を摂取しても、その分だけ筋肉が増えるわけでもない。

タンパク質を増やすと合成の利用率は減少
タンパク質を増やすと合成の利用率は減少
それぞれ1日に体重1㎏当たり1g摂取(左)と、2g摂取(右)の比較。必要量以上に摂取しても、筋肉など末梢組織の合成に利用される割合が増えないことを示している。

上のグラフを見てほしい。体重1kg当たり1gのタンパク質を摂取した場合と、2g摂取した場合を比較すると、後者のほうは、内臓での分解(尿素の合成)が高まる分、筋肉などの末梢組織に供給されるアミノ酸の割合が減少。つまり必要量以上を摂取しても、エネルギーに使われたり、脂肪に変わる可能性が高いのだ。

また、「筋タンパクの分解を進行させないのに意味のあるタンパク質量は、1回の摂取で70gまでという報告もあります」とのこと。

タンパク質の過剰摂取は、即危険ではないが推奨されるわけでもない。これを踏まえたうえで、ウワサの真偽を検証していこう!

ウワサ1「肝臓・腎臓の機能が低下する」

タンパク質には窒素が含まれている。タンパク質をアミノ酸に分解する過程でフリーになった窒素は、アンモニアに変わる。毒性が高いアンモニアを尿素に変換するのが肝臓の役目だ。

その尿素は腎臓を経て、尿に混じって体外へと排出される。タンパク質を過剰に摂取すると、窒素の処理のために肝臓と腎臓が酷使され、結果、機能低下に及ぶというのが、ウワサの論拠だ。

しかし、窒素の処理に追われることは確かではあるものの、それによって健康障害が起こるリスクは少ない。

それよりも気をつけたいのは、運動による内臓へのストレスだ。血尿や血便が出るレベルはもちろんオーバーワーク。長時間に及ぶ運動は内臓への負担も大きいので、しっかりと休息を取りたい。

もともと肝臓や腎臓が弱い場合は、タンパク質の過剰摂取、激しいスポーツともにリスクが上がるので十分に注意しよう。

→結論「肝臓や腎臓が弱い人は注意!」

ウワサ2「余ったアミノ酸が脂肪に変わる」

タンパク質はアミノ酸に分解、吸収され、筋肉のみならず、皮膚や髪、血管、消化器などの材料になる。せっかくトレーニングをしても、タンパク質が不足していると筋肉がつきにくいどころか、痩せてしまうこともある。

だからといって、タンパク質を多く摂るほど筋肉が大きくなるというわけではない。

「タンパク質を構成しているアミノ酸は、たくさん摂取してもその状態でカラダに貯めておくことはできません。使い切れなかった分は脂肪になってしまいます」(柳沢先生)

タンパク質は1g当たり4kcalの熱量を発生するエネルギー源でもある。摂取カロリー(特に糖質)が足りなければエネルギーとして利用されるし、ダブつけば脂肪に変わる。

高タンパク低脂肪食なら太らないという油断は禁物。カロリーの収支に気を配る必要がある。マッチョを目指して摂ったタンパク質で、プヨプヨにならないよう気をつけるべし!

→結論「本当!」

ウワサ3「カルシウムが流れ出て骨粗鬆症になる」

骨密度の低下により、骨折を引き起こしやすくなる骨粗鬆症も、タンパク質の過剰摂取が原因になるというウワサがある。

タンパク質を過剰に摂取すると体内が酸性に傾く。それを中和するために骨のカルシウムが利用され、尿とともに排出される。これが骨粗鬆症を招くメカニズムとされている。

しかし、骨のカルシウムが一時的に利用されることと、骨粗鬆症になることは別々に考えるべきで、タンパク質の過剰摂取が、骨粗鬆症に直接的に結びつくという決定的な根拠はない。ただ、リスクを高める可能性はあるので注意が必要だ。

骨粗鬆症を気にするのならば、カルシウムやビタミンD、ビタミンKなどの栄養素をしっかりと摂ることも大切になる。

→結論「リスクが高まる可能性あり!」

ウワサ4「大腸菌が増えてオナラが臭くなる」

動物性タンパク質を過剰に摂取すると、大腸菌などが増えて、腸内環境が悪化。結果、オナラが臭くなるという説がある。

「経験がある!」という人もいるかもしれないが、タンパク質の多量摂取だけが腸内環境を悪化させるわけではない。

トレーニングを始めて食事を高タンパクに切り替えようとすると、自然と意識が肉類に向かう。脂身の多い肉を食べれば脂質も増える。タンパク質の摂取を優先して食事をした結果、野菜を食べる量が減り、腸内環境に大きく影響する食物繊維や発酵食品の摂取量が少なくなる場合も多い。

タンパク質が多くなることよりも、栄養素全体のバランスが崩れることに問題がある。オナラのニオイが気になったら、食事のバランスを見直そう。

→結論「可能性あり!」

ウワサ5「クエン酸が減り尿路結石になる」

尿路結石とは、腎臓、尿管、膀胱、尿道といった尿路にできるシュウ酸カルシウムやリン酸カルシウムなどの塊のこと。このシュウ酸カルシウム結石にも、動物性タンパク質の過剰摂取が深く関係しているというウワサがある。

シュウ酸カルシウム結石は、尿中に排出されたカルシウムと、ホウレンソウやコーヒーなどに含まれるシュウ酸が結合し、結晶となって成長したもの。この結晶化や成長を抑えるのがクエン酸やマグネシウムだ。動物性タンパク質はクエン酸を減少させ、尿中のカルシウムやシュウ酸を増加させるといわれている。

現時点で、タンパク質の過剰摂取→尿路結石となる決定的な根拠はないものの、リスクは上がる。適量の摂取を心がけたい。

→結論「リスクが高まる可能性あり!」

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取材・文/神津文人 撮影/小川朋央 スタイリスト/西森萌 監修/柳沢香絵(相模女子大学栄養科学部健康栄養学科准教授)

(初出『Tarzan』No.726・2017年9月14日発売)

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