豊かな自然環境を背景に、中医学の植物研究を進める
中国五大湖の一つ、太湖に面した無錫は上海と南京のほぼ中間にある古都だ。豊かな水を背景に有史以前より農耕が営まれ、漁業も盛んなことから魚米の郷として知られる。この豊かな環境に着目した〈アムウェイ ボタニカルリサーチセンター〉が開業したのは2015年のことだ。
研究所、温室、広大な農地からなる複合施設は、日本では漢方として知られる中国の伝統医学、中医学の研究を行う。その源である植物の有用性や有機農業の可能性を調べ、その成果をサプリメントやスキンケア製品に発展させるためだ。
製品化を行うのは北米初の栄養補給食品を開発したサプリメントカンパニー〈ニュートリライト〉。中国と同社の関係は創業者のカール・レンボーグまで遡る。
アメリカで生まれ育ったレンボーグは1915年に上海へ渡り、粉ミルクの販売を始めた。しかしレンボーグの想定よりもはるかに中国の人々は健康で、しかも富裕層よりも一般層のほうが健康状態が良かった。
1920年代になると彼はその秘訣を探ろうと中医学に興味をもつ。ビタミンが発見されてまもない時期だが、彼は直感的に植物がなんらかの力をもつと、後の活動の礎を築いていく。
植物の可能性を探り、中医学を広めていきたい。
レンボーグの研究は後進に受け継がれ、現在に至る。彼の訪中から1世紀を経て、中医学の有機農業を研究する世界初の施設を、奇しくも上海にほど近い無錫に開設した。
アジアの伝統的な植物を中心に、中国有数の専門知識を持つ研究者が自然の生態系を忠実に再現する最先端の技術などで研究を続ける。中医学の有用性は複雑な化学成分の組み合わせで、単一成分の作用のメカニズムを解明することが難しい。
そこで研究所では中医学でも非常にポピュラーな菊に着目し、世界で初めていくつかの品種の全ゲノム解析を終えた。DNAの解析で、中医学のさらなる可能性を探ろうという。
さらに広大な敷地で、種の保存や新種の開発、生産性の向上を目的とした環境や仕組みの開発、病害虫への対策など、植物にまつわる広範囲な研究も行う。国との共同研究はもちろん、中医学を漢方という独自の文化に発展させた日本、そして欧米の各国の研究者とも連携。
中医学にあまり馴染みのない地域でも、より透明性の高い情報をもって、植物の有用性を届けようと考える。人類の発展に欠かせなかった植物との関係をさらに推し進めるものだといえる。後編は、その取り組みを深掘りしていこう。
Information
問い合わせ先/日本アムウェイ合同会社
HP:https://www.amway.co.jp/