ドラッグストアで手に入る! 咳に効く漢方処方(漢方薬剤師・鹿島絵里さん)
「漢方薬店kampo's(カンポーズ)」薬剤師・薬学博士の鹿島絵里さんが漢方医学視点からのカラダづくりを提案する連載「漢方でつくるヘルシーボディ」。今回は咳止めに効果的な漢方薬について。
咳の性質を見極めて適切な漢方を
漢方医学的視点からカラダづくりを応援する、漢方薬店kampo’s(カンポーズ)薬剤師・薬学博士の鹿島絵里です。
風邪の後にしつこくいつまでも残る咳に悩まされたことはありませんか? 昨今、新型コロナウイルス感染症が流行したこともあり、咳の症状には多くの方が敏感になりましたね。しかし一口に咳といっても、実はいくつか種類があるんです。
ただむやみに咳止め薬を服用しても、飲みやめればまたぶり返したり、薬の副作用で便秘になってしまったりと、思ったように上手くコントロールできないでいる方も多いようです。
漢方では咳の性質をきちんと整理・分類して、こういう時はこの処方と細かく分けています。ちょっと面倒でも、ご自身の体質、そして咳の性質に合ったお薬を選ぶことで、こじらせずに回復できます。
今回はドラッグストアで手に入る咳に効く漢方処方をご紹介します。
咳に効果的な漢方薬4選
① 麻杏甘石湯(まきょうかんせきとう)
・のどの炎症を伴う激しい咳に…
配合生薬の麻黄、杏仁、甘草、石膏の頭文字をとってこの名前がついています。体力がある人向けの処方です。麻黄は気管支を拡張して咳や喘鳴を防ぎます。そして去痰作用のある杏仁、炎症・痛みを和らげる甘草、熱・腫れをしずめる石膏が組み合わされています。気管支を広げ、また痰を出しやすくして呼吸を楽にします。
② 竹筎温胆湯(ちくじょうんたんとう)
・発熱性の感染症による咳や痰、またはその熱が下がったあとも咳や痰の症状が続いたら…
よく眠れないときに向いています。咳で眠れない状態が長く続くとカラダはいつまでも回復できませんから、避けたいシチュエーションですよね。長引く咳は本当に困りものです。この処方はカゼや気管支炎、肺炎などにも使えます。特に高齢者や体力の低下している人に向いている点は、先に紹介した麻杏甘石湯と違うところですね。
③ 桔梗湯(ききょうとう)
・体質にこだわらずに、のどの痛いときに…
桔梗湯を構成する生薬は、桔梗と甘草の二つだけ。桔梗は痰や化膿をとり、甘草は炎症や痛みをやわらげます。たった二つの生薬ですが、構成が単純な処方はシャープに効くのが漢方薬の面白いところです。扁桃炎や咽頭炎など、腫れ・赤み・痛みを伴うときに適しています。
④ 麦門冬湯(ばくもんどうとう)
・濃い痰が続くときに…
これは潤す力で咳を楽にする漢方処方です。痰が濃く、のどに引っかかるような感じでなかなか排出できないときに向いています。強い炎症を伴う風邪の咳などよりは、空気の乾燥で咳が出やすくなるときに効果を発揮してくれます。夜にだけ出る咳も、この処方が著効を示すことがあります。
日々変わる症状に適応できるのも魅力
いかがでしたでしょうか。あの時はこの処方がよかったけど、今ならこっちがよさそう、とか、自分はこれで家族にはこっちとか、使うべき・備えるべき処方のヒントになれば嬉しいです。
漢字が多くて難しく思われがちな漢方薬ですが、セルフケアにはぴったりなんです。体質・症状を見極めて、ベストな処方を選んでくださいね。