飲むだけで痩せる漢方薬は存在しません(漢方薬剤師・鹿島絵里さん)
「漢方薬店kampo's(カンポーズ)」薬剤師・薬学博士の鹿島絵里さんが漢方医学視点からのカラダづくりを提案する連載「漢方でつくるヘルシーボディ」。今回はダイエットと漢方薬について。
飲むだけで痩せる漢方薬はない
漢方医学的視点からカラダづくりを応援する、漢方薬店kampo’s(カンポーズ)薬剤師・薬学博士の鹿島絵里です。
「これ飲むと、本当に痩せますか?」と聞かれることがよくあります。漢方薬の防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)です。飲めば痩せる、期待したい気持ちはよく分かりますが、目を覚ましてください! そんな夢の薬はありません。
「でも肥満に効くって書いてあるんですけど…。」確かにそれはそうです。防風通聖散の効能書きは、製薬メーカーによって多少の違いがありますが概ね以下のような内容です。
脂肪太りの体質で、便秘がちなものの次の諸症。
高血圧の随伴症状、腎臓病、心臓衰弱、動脈硬化、慢性腎炎、湿疹。
「防風通聖散」が効く体型とは
さて、この効能書きが言わんとする人物像がいかなるものか、想像がつきませんか? 漢方の世界では実証と呼ばれ、体力が充実したがっちり型の方が服用することを想定しています。
食欲が必要以上に旺盛で太鼓腹、血の質が悪くそれを浄化するためのカラダの機能はキャパオーバー、当然巡りが悪いです。こんな人は心臓や血管、腎臓にも負担がかかりますよね。これがぴったり当てはまる方は、防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)を飲んで欲しいと思います。
でも、脂肪は気になるけど冷えを感じやすい、とか、便秘というより下しやすいとか、そんな方には少しも向きません! 体力がなくて漏れ出るように汗をかく、そんな方も防風通聖散の合わない人です。
そもそも、ダイエット願望があるだけで太鼓腹でもなんでもない方、お呼びじゃありません。
薬を効かせる努力も必要
防風通聖散はカラダの熱を強力に取り去る生薬が入っています。体温を上げて代謝アップしたいという思惑とは逆の効果です。カラダの余分な熱をとった方が巡りがよくなる方が使うものです。
そして飲んだだけで痩せる薬はないと冒頭でも申し上げました。防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)が似合う体質を作ってしまった、もとの習慣を変えないことには、せっかくの漢方薬も焼け石に水です。
お薬を効かせる努力も必要なんです。これは防風通聖散に限ったことではありませんね。逆の言い方をすれば、体質の悩みを作った習慣を改めてカラダに合う漢方薬を使えば、防風通聖散でなくとも瘦せることはあります。
巡りがよくなる、代謝が良くなる、むくみが解消するなど、太鼓腹の脂肪以外にもターゲットは人それぞれですよね。詰まっている、不足しているなどのバランスの偏りをうまく整理するのが漢方で、その先に“痩せる”を含む体質の改善があります。
まずは習慣の見直しから始めよう
今のカラダをどうにかしよう、なりたい自分になろう、そのために習慣を改めようという方の後押しを漢方薬が担うのです。努力してるのに思うようにいかない、我慢ばかりでストレスが溜まる、そんな時はぜひ漢方の知恵を借りてみてほしいと思います。
ですが、その時に選ぶのは必ずしも防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)ではないことは、ここまでお読みいただければもう分かりますよね。まずは理想と違う今を作った原因がどこにあるのか、目を背けずに分析してみましょう! 処方選びはそれからです。