血流改善の第一歩はとにかく動かすこと
血を巡らせたければ、カラダを動かすことは必須。でも生活を振り返れば、デスクワークが中心で、在宅勤務もまだまだ続きそうな予感。運動の機会も激減…という人は少なくないはず。
心臓から下半身に送られた血液は重力に抵抗して戻るのが正常な動きだが、座りっぱなしで下半身の動きが少ないと血流が滞り、脚のむくみにもつながってしまう。
そんな人にトレーナーの坂詰真二さんがオススメするのが、巡らせトレならぬ“ミルキングトレ”である。
「下半身の筋肉の収縮・弛緩の反復運動を行えば、静脈還流と呼ばれる静脈の血流が促進されます。さらには静脈からしみ出した細胞間質液が元に戻ることで、むくみの改善も期待できる。
なかでも“第二の心臓”と呼ばれるふくらはぎの筋肉を瞬間的に使うことで、脚に溜まった血液が心臓に戻されやすくなるのです。これが、“ミルキングアクション”。
筋トレにランニングなどの有酸素運動を加えると効果的ですが、大きな負荷をかけない動的なストレッチでも、血流の改善は可能ですよ」(坂詰真二さん)
坂詰さん曰く、仕事中に貧乏ゆすりをするだけでもミルキングアクションは起こるという。しかし、オフィスでは隣に迷惑だし少々格好悪い。そこで、ここではデスクの下で密かにできる「ながら運動」と、下肢全体を動かして「血液の戻し」を促すルーティンストレッチ、さらには全身運動で基本の「血液を送る力」を身につけるルーティンサーキットの3つを紹介。
簡単な動きなので誰でもすぐに取り入れられる。
どんなに筋肉が発達していても、姿勢を固定していたら血の巡りは悪くなる。小さな動きでも構わないので、とにかく動かすこと。これが血流改善の第一歩である。
ミルキングアクションって?
私たちの血液は心臓から送り出され、再び心臓に戻る循環によって巡っている。心臓の高さに近い上半身の血液はスムーズに心臓へ戻っていくが、心臓から遠い下半身の血液は重力に抵抗しながら戻る必要がある。
その際、血流を補助するのがミルキングアクションという脚の筋肉の動き。運動によってふくらはぎの筋肉が伸び縮みすると、血液が押し上げられる形で心臓に向かって送り返される仕組みだ。筋肉の動きが牛の乳しぼりに似ていることからこのように名づけられている。
仕事中こそ巡らせよう!「ながら運動」
まずは仕事中に「ながら」でできるミルキングトレの紹介。
特に長時間椅子に座っていると、座面の圧もあって下半身の血の巡りが悪くなるので、デスクワークが長い人は1時間に1回を目安にやってみてほしい。やるとやらないでは大違いだ。
「基本的にはデスクにいながらできる運動で、覚えてしまえば無意識のうちにやれるくらい簡単。こまめに行うのがポイントです。習慣化することで下半身の血の巡りも、むくみもかなりの改善が期待できますよ」
① トウ・タッピング
背もたれに寄りかからないよう椅子に浅く腰かけ、手は座面に。片足を前に出し、爪先で床をポンポンとタッピングする動作を10回。反対側も同様に。オフィスでやるときは周りに音が聞こえないよう注意。
② レッグ・ホールド・スイング
椅子に腰かけ、片脚を床から浮かせ、両手で抱える。そのまま膝から下をワン、ツーのリズムで10回振る。反対側も同様に。机の下で行う場合は、引き出しや天板に当たらないよう、脚は軽く浮かせる程度でもOK。
③ スラローム
背すじを伸ばして椅子に浅く腰かけ、手は座面に置く。次に両足の爪先を軸に、両膝と両足をピタッと揃えたまま左右に10回振る。スキーのスラロームの動きをイメージして、リズムよくやってみよう。
④ ヒール&トウタッチ
背すじを伸ばして椅子に浅く腰かけ、手は座面に。両脚を前に伸ばす。次に片方の足を引いて爪先立ちし、そのまま前に出して踵立ちの状態に。これをリズミカルに10往復。続けて反対側も同様に行う。
「戻し」を促すルーティンストレッチ
家では仕事中のミルキングアクションを強化するべく、下肢全体をしっかり動かして血液の戻りを促そう。特に就寝前などに行うと効果的。
① レッグ・タッピング
床に座り、両脚を揃えてまっすぐ伸ばす。手は斜め後ろに。膝を曲げ伸ばししながら、ふくらはぎとハムストリングスを床にリズミカルに10回叩き打つ。水泳のドルフィンキックのイメージで、脚の重さを使うのがポイント。
② ホールド・キック
床に仰向けになり、両脚を浮かせて膝を揃えて曲げ、両手で膝裏を抱えて支える。次に片方の膝を軽く伸ばし、そのまま左右の膝をバタ足をするイメージでリズミカルに曲げ伸ばしして血流を促す。交互に10回ずつ。
③ サイクル・モーション
床に仰向けになり、腰から下を高く持ち上げる。尻のあたりを両手でしっかり支えよう。次にその姿勢を保ったまま両脚で交互に10回ずつ自転車漕ぎの動きを行う。これもリズミカルに動かし続けるのがポイント。
④ フラッター・キック
床にうつ伏せになってカラダを伸ばし、足の下にクッションを敷く。両脚は揃える。その姿勢のままバタ足の動きを左右交互に10回。クッションがある分、爪先が床に当たっても痛くないので、しっかり叩いてOK。
「送る力」を養うルーティンサーキット
最後は、血液を“送る力”が強化できるサーキット。いずれも爪先と膝を正面に向けた動きで、足や膝、股関節の動きを大きくすることで、静脈の血流を促し、さらには動脈の弾性を高める相乗効果も期待できる。
ここでは1分間の有酸素運動と筋トレ10回を交互に繰り返そう。入浴の前に行うのがおすすめ。
① エア・ロープスキッピング(有酸素運動)
言い換えると「エア縄跳び」。軽く肘を曲げ、ロープの持ち手を持つふりをして構え、縄跳びのつもりで爪先立ちし、大きくカラダを持ち上げ、下ろす。これを1分間。実際に跳んでもいいし、跳ばなくてもOK。
② スプリット・スクワット(筋トレ)
まっすぐ立った姿勢から、脚を前後に開く。手は腰に。そのまま左右の膝を曲げながら真下に腰を落とし、ゆっくり戻す。これを10回繰り返そう。目線は常に正面。背すじを曲げないよう意識すること。反対側も同様に。
③ スポット・ウォーキング(有酸素運動)
まっすぐ立った姿勢から肘を曲げ、片方の踵を高く上げると同時に同じ側の腕を後ろに引き、反対側の腕を前に出す。そのまま交互に踵の上げ下げと腕の出し引きを繰り返し、その場で1分間エア歩行を行う。
④ グッドモーニング
背すじを伸ばしてまっすぐ立ち、手を頭の後ろで組む。次に軽く膝を曲げながら、腰から折り曲げるようにゆっくり上半身を前に倒していく。お辞儀するイメージでなるべく深く倒すこと。10回繰り返す。