元関取直伝! 股関節に効くエクササイズ
股関節のエクササイズは数あれど、古くから行われてきたのが相撲の「四股」と「股割り」ではないだろうか。それは現代でも相撲部屋で日々行われており、力士は股関節が柔らかいというイメージも強い。
そんな当人に、相撲ならではの股関節に効くエクササイズを教わりたい!というわけで、現役時代は阿夢露の四股名で活躍した元幕内力士で、現在はスポーツトレーナーとして活動するニコライ・イワノフさんの元へ。
カラダが硬くケガ続き。以来股関節のケアに目覚める
「実は入門した頃は股関節が硬く、毎日の股割りがとても辛かった。最初に覚えた日本語が“痛い”だったくらいです(笑)。
当時はただ強くなりたいと考え、筋トレや相撲の稽古ばかりやっていました。ところがその後に左右の膝に大ケガを負ってしまい、もっとカラダを柔らかくしておくべきだったと後悔したのです。その後は予防のために股関節の柔軟性を重視するようになりました」(ニコライ・イワノフさん)
外国人力士が引退後、トレーナーに転身するのは非常に珍しいケースだという。しかしニコライさんは現役時代の経験を踏まえ、股関節の硬さゆえにケガする人を一人でも少なくするべく、日本語を勉強し、指導に必要な資格を取得した。
「股関節は立ったり座ったりはもちろん、日常のあらゆる場面で使う部位ですし、スポーツをする人にとっては柔軟性だけではなく稼働性や安定性も必要。また、あらゆるエクササイズにも関係しており、股関節の機能をバランスよく鍛えることで、効果を実感できるんです」
そんな彼が提案するのが、股関節に効く相撲トレーニング。相撲の基本である「攻め」と「守り」の型に分け、7種類を紹介してくれた。
「股関節が硬い人や動きに不調がある人も、毎日コツコツ取り組んでもらえると改善が期待できるはず。まずは股割りや四股の動きから。時間がある日は他のものもやってみてください」
股関節に効く相撲トレ・攻めの3種
① 仕切りの型からの摺り足ステップ
腰を落としたまま、床を摺り足で進むのは意外としんどい。足を上げないよう意識すること。股関節の稼働性や安定性の向上、股関節まわりの筋力を鍛えたい人におすすめ。
- 足を肩幅よりやや広め、爪先を外側に向けて立ち、膝を曲げ前傾姿勢で腰を落とし床に両拳をつける。
- 手を床から離し前に構え、腰を落としたままの姿勢で、床を摺るように左足を前方にスライドさせる。
- 次に右足をスライドさせる。これを左右交互に繰り返しながら前進や後退を繰り返す。5m程度あるいは10~20歩程度を移動。
② ダンベルスイング
足をしっかり開いてやるスクワット系の上下運動は、下半身の筋トレおよび股関節のエクササイズに最適。特に全身の瞬発力と、足腰のバネやパワーを高めたい人におすすめ。
- 足は肩幅よりやや広め、爪先は外側に向けて立つ。両手でダンベルやペットボトルなどを持ち、膝を曲げながら前傾姿勢で腰を落としていく。
- 股関節を伸展させるタイミングでダンベルを前面で振り上げたら、1のスタートポジションに戻る。1、2をリズミカルに20回繰り返す。下ろした時に息を吸い、上げる時に吐く。
③ 基本の四股
まさに基本中の基本。股関節まわりの筋肉が伸びるので、血流が良くなるメリットも。片脚でバランスを維持するのが不安定な人や、たびたびふらついたり、転んでしまう人におすすめ。
- 足を肩幅よりやや広め、爪先を外側に向けて立ち、ゆっくり腰を落としていく。両手は膝上あたりに添える。相撲の「腰割り」の姿勢。
- 右脚の膝を曲げながら体重を乗せ、左脚を上げていく。この時、上体を右側に傾けるようにするとバランスが取れ、左脚も自然と上がる。
- 右脚の膝を伸ばしながら左脚をさらに高く上げていく。無理のない高さでOK。ゆっくり脚を下ろしたら、軸脚を変え左右10回ずつ行う。
股関節に効く相撲トレ・守りの4種
① スクワット股関節 WITH ひねりランジ
スクワットにランジを組み合わせたエクササイズ。股関節を左右、前後に大きく動かせるのがポイントだ。股関節の内旋および外旋の可動域を広げたい人におすすめ。
- 足を肩幅よりやや広め、爪先を外側に向けて立ったら、両手を広げ前に出し、ゆっくり腰を下ろしていく。
- そのままの姿勢で腰を上げる。
- 股関節をひねりながら足先を左に向けて、ランジの姿勢になるように腰を下ろす。1〜3を左右5回ずつ繰り返す。
② ぶつかりスクワット
斜め姿勢から、脚をサッと入れ替えながらスクワットの動き。瞬発力や足腰のバネ、筋力をパワーアップしたい人や、股関節の柔軟性を高めたい人におすすめ。
- 相撲のぶつかり稽古で言う「胸を出す」姿勢。左足を前、右足は後ろに広げて、爪先は外側に向ける。
- そのままの姿勢でゆっくり腰を落としていく。
- その場で軽くジャンプするようにして左右の脚を入れ替える。再び1の(左右逆の)姿勢に戻り、同様にリズミカルに繰り返す。左右5回ずつ。
③ 四股ストレッチ
脚を大きく開くこと自体が苦手な人は、まずはこれから始めるのがおすすめ。手や腕を使って開脚状態をキープし、ゆっくりカラダを上下させよう。毎日続ければ効果が出るはず。
足を肩幅よりやや広め、爪先を外側に向けて立ったら、ゆっくり腰を落としていく。手で足首をつかんだらそのまま腰を低い位置で上げ下げさせる。この時、肘は膝の内側に当てて脚を広げるようにする。計10回ほど上下させる。
④ 伸脚と股割りストレッチ
股関節の稼働性や柔軟性の改善はもちろん、周りの筋肉も刺激する伸脚と股割りの組み合わせ。トレーニング後、凝り固まりやすい股関節周辺をストレッチしたい人にもおすすめ。
伸脚
股割りの前に、股関節が動きやすくするストレッチを。脚を大きく開き、右に踏み込む。右足は浮かさず、左の爪先は上に。右肘で膝を外側へ押すようにすると股関節がより広がりやすい。同時に伸ばした左足の爪先は上からさらに後ろへ向けていく。左右5回ずつ繰り返す。
股割り
- タオル2〜3枚を重ねた上に座り(写真ではストレッチ専用クッションを使用)、骨盤を立てることで、股関節を自然に開きやすくする。膝を伸ばし脚をできるだけ大きく広げる。
- 右手を上げて脇を伸ばしながら、上半身を真横に倒していく。目線は正面に、背すじも真っ直ぐにキープ。左右10回ずつ繰り返す。