本気でかめはめ波を打ちたくて。ARスポーツ・HADO誕生のすべて
いま話題のeスポーツ分野で、ひと際注目を集めているのが「HADO(ハドー)」。「HADO」ってなに? 最先端のAR技術を駆使した「HADO」の考案者である福田浩士さんに語ってもらった。
取材・文/菅野茂雄
福田浩士さん
教えてくれた人
ふくだ・ひろしさん。東京大学大学院卒業後、2014年に株式会社meleapを設立し、AR技術を駆使したHADOを考案した。
いま注目のeスポーツ「HADO」とは?
AR(拡張現実)技術を用いたHADOは、ヘッドマウントディスプレイとアームセンサーを装着して行う新しいeスポーツだ。
2022年春には、東京の台場に本格的な競技施設を構え、大会の運営やYoutubeでのライブ配信等も行うなど、益々人気が上昇中。そんなHADOについて、考案者であり、HADOを運営する企業〈meleap〉の代表を務める福田浩士さんに語ってもらった。そもそも、開発のきっかけは何だったのだろうか?
「僕は小学生の頃から、ドラゴンボールのかめはめ波を本気で打てるようになりたいと思っていたんです。そんな魔法のイメージを現在の技術を使って形にしたのがHADOですね。
僕のアイデアをエンジニアと相談して徐々に形作ってきました。僕自身は、大学ではIT系の学科ではなかったので、一から勉強をしましたね。実は、最初にイメージしていたのは、バーチャルのモンスターと戦うようなものだったんです。
だけど仲間とプロトタイプを作っていくうちに、仮想敵と戦うよりも対人のチーム戦の方が、より白熱するんじゃないかという結論に辿りついたんです。実際に多くの人が参加できるし、仮想敵を常時アップデートする必要がないので、技術的にもビジネス的にも運営しやすいですね」(福田さん)
ステータスの振り分けで戦略が変わる
HADOで使用されるツールは、ヘッドマウントディスプレイとアームセンサー。それぞれにスマホが搭載され、プレイヤー視点には、ARの会場が映し出されている。
アームセンサーを装着した方の腕を立てるとエナジーボールゲージがチャージされ、前にまっすぐ伸ばすことでエナジーボールが発射される。
また、腕を下げシールドゲージを溜めてそのまま振り上げることでシールドを出現させることができる。1チーム3人で構成されるチーム戦が基本で、試合時間は80秒。
各プレイヤーのライフは1人につき4つで、エナジーボールをぶつけられると減る。ライフを4つ削られると相手チームに1ポイントが入り、ライフをすべて失ったプレイヤーは、一定時間試合に参加できない。
最終的にポイントを多く獲得したチームが勝利となる。
試合前にはアームセンサー上で、エナジーボールとシールド性能のカスタマイズが可能。エナジーボールの大きさ、スピード、エナジーゲージのチャージ速度、シールドの枚数と強度の4つのパラメータを振り分けることで、プレイスタイルに合わせた設定ができる仕組み。
「チームによってシールドを強化してディフェンシブに戦ったり、逆に攻撃的なスタイルにしたり調整できるのが魅力なんです。言葉にすると分かりにくいかもしれませんが、HADOは、実際にプレイしてみるとすぐできるようになるのでぜひ一度プレイしてもらいたいですね。
今でも、友達同士でワイワイ楽しんで帰っていくグループもいますし、パラメーターでハンデも付けられるので、小学生でも大人と同等に戦えますね。ちなみに、初心者向けの体験会もありますし、本当に上手くなりたい人向けにインストラクターに教えてもらうアカデミーもあります」(福田さん)
アイドルが語るHADOの魅力
HADOの大会では芸能人やアイドルたちも参戦、試合を盛り上げている。
新世代を担うアイドルたちによって繰り広げられる〈HADOアイドルウォーズ〉では、今までに200名以上のアイドルたちが熱戦を繰り広げ、優勝を目指してきた。そのひとりが、〈アイドルグループ民族ハッピー組〉のメンバー馬渕恭子さん。
「HADOの楽しさは、素敵な仲間が増えることです。もっと上手くなりたいので、特徴を掴むために試合中も相手プレイヤーを良く見るようにしています。試合では、コミュニケーションをとることが勝つための最大のコツだと思います。
試合後には、チームの仲間も対戦相手も笑って『お疲れ様』と言える素敵な関係になれるのもいいですね。
ちなみに、普段のライブの振り付けにも上下運動(球をよける練習)を取り入れているんです。ファンの方とHADO部を毎月開催して一緒に強化してもらってます!」(馬渕さん)
HADOはまだ未完成。目指す未来とは?
プレイヤー同士が白熱の試合を繰り広げるHADOは、国内だけでなく、世界にも競技人口を増やしている。
現在は、39か国109箇所にHADOの店舗を構え、2019年には世界一を決める《HADO WORLD CUP 2019》が日本で開催された。そんなHADOが向かう未来像とはどんなものなのだろうか?
「客観的に見るとHADOというeスポーツは、完成しているように見えるかもしれませんが、実は僕らのなかではまだまだ未完成なんです。
例えば、現在はヘッドマウントディスプレイを使っていますが、これを装着しなくてもできるようになるとか、リアルとバーチャルの境界がなくなるような体験を提供するとか。非日常ではなくてあくまでも日常に溶け込むような環境を目指しています」(福田さん)
サッカーや野球のように世界的規模で行われるリアルスポーツに並ぶeスポーツとして、HADOがオリンピック種目に選ばれる日もそう遠くはないのかもしれない。