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「心地良いと思える習慣なら続けられる」難病役を演じた松本穂香が語る健康管理
俳優・松本穂香さん出演の最新作が、2022年3月24日より全世界で配信となるNetflix映画『桜のような僕の恋人』。本作で彼女は、中島健人さん(SexyZone)演じる主人公・朝倉晴人の恋人で、人の何十倍も早く老いていく難病を患う有明美咲を演じています。自身初となる王道ラブストーリーに挑戦した松本さん。この難しい役を演じるにあたって、どのような心構えで臨んだのでしょうか。また、日々意識している健康管理についても伺いました。
キャリア初となる王道ラブストーリーへの挑戦
今回、女優の松本穂香さんが出演する最新作は、Netflix映画『桜のような僕の恋人』。『信長協奏曲』や『今夜、ロマンス劇場で』など、数々の映像作品を手掛けてきた脚本家でありながら、小説家でもある宇山佳佑さんの、発行部数70万部を突破したベストセラー小説が原作です。
松本さんが演じた有明美咲は、美容師として働く明るい25歳の女性。一見どこにでもいるような印象がありますが、実は治療法の見つかっていない病魔が徐々にカラダを蝕んでいます。
意外にも過去に経験がほとんどない、という恋愛作品。それに加え難病を抱えているという難しい役柄だけに、話をもちかけられたときは「本当に自分で大丈夫なのか」と不安がよぎったそう。ただ、それも中島健人さんと一緒に取り組んだ役づくりの期間を経て一掃されたと話します。
「撮影に入る直前、本読みのタイミングでお互いの役を交換して演じてみたんです。そしたら、思わぬ発見があって。私はどちらかというと(中島健人さんが演じる)晴人に似ていると感じる部分が多かったんですけど、逆に健人くんは美咲に似ていると感じる部分が多かったみたいで。それぞれに思ったことを伝え合うことで、役への理解が深まったと思います」

自分が登場するシーン以外は脚本が空白だったので、試写会ではじめて観るシーンも多かったという。
しかも今回の作品では、「会えない時間を想像してほしい」という深川栄洋監督の意向のもと、自身の役が登場しないシーンが空白になった脚本が松本さんと中島さんに渡されていたそう。だからこそ、自身の役はもちろん、主人公の晴人に対して思いを馳せる時間もありました。
「本作では、晴人と美咲が出会い、徐々に仲を深めていく様子が描かれるのですが、それと同じように私と健人くんの関係も段々と築かれていった気がしています。特に物語の前半パートは恋愛の楽しさを全面に押し出すことになっていたので、2人でいる一瞬一瞬の時間をどれだけ大切に過ごせるかを意識して演じました」
心は25歳のまま、カラダだけ老いていく役の難しさ
その状況が一転するのが、美咲の病気が発覚する物語の中盤以降。老化が進行するにつれてハツラツとした笑顔が消え、苦しみの色が濃くなっていきます。そして、ついに心を閉ざすまでに。そうした感情の変化を松本さんはどのように演技に落とし込んだのでしょうか。
「病気の進行によってカラダはどんどん老いていくんですけど、美咲の年齢は25歳のままだから心は若いんですよね。夢もあるし、恋もしたい。そうした葛藤をどうやって表現すればいいのか、すごく悩みました。でも、普通だったら動きの確認だけで終わるところを深川監督が丁寧に感情の変化を説明しながら演出してくださったんです。それがあったから美咲の孤独をうまく表せたのかなって思います」

深川監督は「あなたは森に帰るオオカミです」と独特の表現で美咲の孤独を表現したそう。
この深川監督とのやりとりについて「どこか導かれるような感覚があった」と松本さん。また、演技を褒めてくれることも励みになったとか。
「思っていることをそのまま言葉にしてくださる監督ってなかなかいなくて。でも、深川監督は何気ない演技に対しても『あの演技、すごくよかったよ』と声をかけてくださるので、すごく嬉しかったです」
無理をせず、心地良いことを日課にする
さて、そんな松本さんが日々の健康管理で特に大切にしているのが、睡眠時間をしっかり確保すること。最低でも7時間は寝るように意識していると話します。
「睡眠って暮らしのなかでベースになるものだと思うんです。よく寝られたときとそうではないときでは翌日の体調が全然違うじゃないですか。しかも役者の仕事は、多くの人のサポートがあってはじめて成り立つものなので、コロナ禍になってからは自分のカラダのことをより一層気にかけるようになりました」

眠る前にはお風呂にゆっくり浸かってリラックス。この時間を利用して台詞を覚えることもあるとか。「お風呂に浸かっているとなんだか集中できるんですよね」と松本さん。
過密なスケジュールで動いているにもかかわらず、どこまでも自然体な松本さん。演技のために特別なことはしていないそうで、たまに映画や小説を楽しむくらいだとか。どうやら“無理をしない”を徹底しているようです。ちなみに、カラダづくりのために取り組んでいることは何かあるのでしょうか。
「運動という運動はしていないんですよね。強いて言えば、お風呂上がりのストレッチを日課にしているくらい。それもストイックにやっているというより、心地良いから続けているだけで。プロテインを飲んでいたことも一時期あったんですけど、習慣にはならなかったんですよね。無理に頑張っても嫌になるだけなので、気が向いたらやってみるくらいが私には合っているんだと思います」
松本穂香
まつもと・ほのか/1997年、大阪府出身。2015年の映画『風に立つライオン』で長編映画デビュー。17年、連続テレビ小説「ひよっこ」で一躍注目を浴びる。18年のテレビドラマ「この世界の片隅に」で応募者約3,000人のオーディションを経て主人公のすず役に抜擢。以降、『おいしい家族』(19)、『わたしは光をにぎっている』(19)、『酔うと化け物になる父がつらい』(20)、『みをつくし料理帖』(20)と主演作が相次ぎ後悔、若手実力派女優として魅力を高めている。その他の映画出演作に『ミュジコフィリア』(21)、映画製作プロジェクト「DIVOC-12『ユメミの半生』」(21)など。
取材・文/村上広大 撮影/玉村敬太