足の医師団がお悩み解決! 巻き爪、水虫、足の臭い、外反母趾…

人生100年時代。カラダの土台である足の状態は、健康寿命に影響大。見て見ぬフリをしてきた足の不調に真剣に向き合おう。国内唯一の足の専門医チームがあなたの悩みを解決する。

取材・文/門上奈央 イラストレーション/渡邉唯

初出『Tarzan』No.828・2022年2月24日発売

足の医師団がお悩み解決! 巻き爪、水虫、足の臭い、外反母趾…

大事な足。何かトラブルがあると、それをカバーしようと歩き方が崩れ、膝や腰の痛みが生じたり姿勢の乱れにつながる。結果、足以外の他の部位の不調を引き起こすことに。

「人生100年時代、健康寿命を延ばすには足をできる限り長く健やかな状態に保つことが重要です。加齢が進むといろいろな不自由が出てきますが、骨折などを機に歩けなくなると生活全般に支障をきたし、ゆくゆくは寝たきりになりかねません」
と話すのは、日本で唯一の足の総合病院〈下北沢病院〉の久道勝也理事長。

30〜40代でも侮るなかれ、足の痛みや不具合があるなら、早く手を打つに越したことはない。が、人によってトラブルは千差万別。そこで足の悩みを抱える8人が、〈下北沢病院〉の専門医チームに相談。症状緩和や改善策を教えてもらった。

足の医師団とは

足の医師団 メンバー

アメリカの足病医学の知見に基づく治療を受けられる国内唯一の足の総合病院〈下北沢病院〉の医師たち。ここには足病総合センターと糖尿病センターがあり、足の病気と糖尿病の診察に特化。フットケア外来やむくみ外来など幅広く、足のあらゆるトラブルに対応。著書に『“歩く力”を落とさない! 新しい「足」のトリセツ』など。https://www.shimokitazawa-hp.or.jp/

新しい「足」のトリセツ

『“歩く力”を落とさない! 新しい「足」のトリセツ』足の老化や病気予防に有効な「アキレス腱伸ばし」や長く歩き続けるためのTipsが一冊に凝縮。1595円。

巻き爪

巻き爪

お悩み:つい深爪してしまい、爪が巻いてきた気がします。歩いていると痛みを感じることも。これ以上“巻き爪化”しないようにするには?

足の爪は指先より伸ばすこと。“捨て寸”と幅を備えた靴もマスト

巻き爪になる原因は何だろう。

「爪はそもそも巻き気味に生えるものですが、親指で地面を踏みしめて足指に正しく体重がかかれば、足指が地面から押し返され、爪のなだらかな曲線を保てます。逆に言えば、爪に均一に力がかからないと爪が徐々に巻いていくということ。

さらに、足指の先端より短く爪を切ると、爪で押さえられていない肉が地面からの反力で盛り上がり、爪が食い込んで巻き爪になる。よって深爪は絶対避けるべきで、足の爪は指先と揃うくらいの長さに整えるのがベストです」(久道先生)

靴も巻き爪の一因になりうる。

「靴の中で指が圧迫されると爪が巻いていきます。靴の先端と指先の間に1〜1.5cmの“捨て寸”があり、靴の中で足が動かないよう横幅がフィットする靴を選びましょう」

足の臭い

足の臭い

お悩み:足の臭いに長年悩んでます。消臭スプレーもかけるようにしてますが、果たして意味があるのか。足が臭わない人と何が違うんでしょうか。

汗かきの人は臭いやすい傾向。ただし適切に処置すれば改善します

「足には多くの種類の雑菌が生息し、なかには角質を食べるものがいて、足の臭いのモトになる物質が分解されます。このように雑菌が原因の足の臭いの場合、足が高温多湿の状態になると繁殖が進む。

汗をかきやすい人は足の臭いも強くなる傾向にあります。こまめに汗を拭いたり、通気性の良い靴下や靴を選ぶことが大切。防臭スプレーも有効ですし、ある種の細菌が原因の場合には、抗生物質を1〜2週間飲んだり塗ったりすることで、強烈な臭いが消えてしまうケースも。

一方、臭いの原因が水虫の場合、水虫の治療薬を使って症状を改善することで足の臭いも軽減されます」(菊池守先生)

自分で気がつかないこともある?

「靴に覆われた特殊な環境にある足は、わきがや口臭と同様に、比較的自覚しにくいのです」

扁平足

扁平足

お悩み:扁平足なのかペタペタ歩きが癖です。土踏まずもほぼなし。そのせいか足がすぐ疲れて困ってます。足のアーチを取り戻すことはできますか。

アーチを完全に取り戻すのは難しい。でも足の筋トレが必要です

扁平足とは、加齢に伴い筋力が落ち、踵の骨が外側に倒れることで、踵と親指を結ぶアーチが落ち込み、土踏まずが地面についた状態のこと。

「扁平足だと力強い蹴り出しが難しくなるんです。このため、ふくらはぎなどの筋肉を過度に使うことになり、足が疲れやすくなります。残念ながらアーチを一度失うと元通りにするのはなかなか難しい。

ですが、視力が低い人がメガネをかけるように、いいアーチを保つための医療用インソールでサポートすることは可能です」(菊池恭太先生)

アーチを支える母趾外転筋を強化する手もある。

「足指でグー・チョキ・パーを行ったり、ショートフット運動(地面から足指5本を浮かせ、親指以外の4本を地面につけてから親指を下ろす動作)も有効です」

踵がカサカサ

踵がカサカサ

お悩み:踵がカサカサでひび割れています。とりあえず保湿クリームを塗ってますが、あまり効果なし。そもそも塗り方が間違ってるのでしょうか。

1回で塗る量と1日に塗る回数を、まずは見直してみましょう

角質が乾燥してターンオーバーが乱れることで踵はカサカサになる。

「対策としては保湿の徹底が一番です。スクラブなどで角質を除去し、入浴後などの角質が一定量の水分を保っているときに保湿クリームを塗るのが有効。クリームを塗った後にラップを巻いて30分〜1時間置いておくのもおすすめです」(久道先生)

クリームを塗る頻度や回数は。

「1日1回で十分な人もいれば、10回塗ってやっと肌が整う人も。足を見て肌が白っぽくふやけている状態(浸軟)であれば保湿過剰なので回数を減らしましょう」

クリームの成分にも注目すべし。

「サリチル酸や尿素など角質を柔らかくする成分を含有したものを。一つのクリームに成分がたくさん入っていると、かぶれることもあるので、シンプルなものを選びましょう」

外反母趾

外反母趾

お悩み:外反母趾のようでたまに痛みます。病院に行くレベルかどうか、何を見て判断すべきですか。これ以上変形しないようやるべきことは?

痛みは外反母趾の初期段階、早めに受診しつつ、足の運動も習慣に

「母趾が第二趾側に曲がり、付け根が外に出っ張った状態が外反母趾。そのまま放置すると、踵を着いて足裏で蹴り出すという接地において、親指をうまく使えずに他の4本の指に負担がかかる。

変形してまもない頃は親指に体重を乗せられる分、痛みが生じます。相談者の方は外反母趾の初期段階にある可能性が高く、早めに病院へ行くべきです。一方、変形が進行すると母趾が使えないので痛みを感じなくなることも。変形自体を治すには手術が必要です」(菊池恭太先生)

変形予防としてできることとは。

「椅子に座り、二の指側に傾いた親指を最大限外側に開いた状態でキープ。この運動を気づいた時にやりましょう。さらに医療用インソールで足のアーチを整えて立った時のアライメントを整えるとベターです」

水虫

水虫

お悩み:同居人が水虫です。自分は水虫ではありませんが、予防としてできることはありますか。水虫の本人は薬で治すしかないのでしょうか。

水虫には最低3か月、薬の服用を。対策は毎日指の間まで洗うのが一番

水虫とは白癬菌というカビが角層の中に入ることで起こる感染症。

「基本的に水虫は薬を使わないとなかなか治らず、3か月は薬を継続してほしいです。カビは高温多湿な場所を好むので、冬場は繁殖しにくいものの実は皮膚の角層に潜み、夏になると再び症状が出るというケースも少なくない。

また、もし同居人の方が病院に行っていなければ必ず受診を勧めましょう。水虫と思っていても実は違う病気だった、というケースもあります」(長﨑和仁先生)

水虫患者の同居人と共に暮らす家で、相談者にできることはあるのか。

「白癬菌が皮膚内に入って感染が成立するまでに約24時間かかります。つまり、24時間以内に足指の間も含めて足全体を清潔に洗うことでリスクを抑えられます。プールや銭湯から帰った時も早めに足を洗うこと」

足底腱膜炎

足底腱膜炎

お悩み:立ち仕事のうえに、週1で走っています。ランナーは足底腱膜炎になりやすいそうですが、予防・症状改善に効くセルフケアはありますか。

急に長距離を走ったり、歩きでも突然歩数を稼ごうとしないことが先決

足底腱膜とは、踵から足指の付け根にかけてついている膜のこと。

「接地のたびにアーチが沈み込んだり戻ったりする、その調整をするのが足底腱膜。しかし足に急激な負担がかかると足底腱膜炎になりやすい。突然長距離を走ったり、何万歩も歩くなど急激な荷重環境の変化により発症のリスクが高まります」(菊池恭太先生)

運動強度を上げるなら少しずつ。カラダを慣らしていくことが肝要だ。

「早期の段階における足底腱膜炎には運動と医療用インソールが有効です。必要な運動は主に2つ、両手を壁について踵をつけたまま行うアキレス腱伸ばしと、床に座り片膝を曲げて、足裏をつかむように手のひらで揉みほぐす足裏マッサージ。またアーチの崩れをサポートするインソールを敷くと楽になるはずです」

タコやウオノメ

タコやウオノメ

お悩み:タコやウオノメをカッターで削ってもまたできて、一向になくならない。どうせ治らないのなら放置してしまおうか、と自暴自棄に…。

放置すると痛みが出るのでNG。ただし削り過ぎにはご注意を

タコは一点に慢性的な圧力がかかったり摩擦が起きることで角質が分厚くなって生じる。一方、ウオノメは一点に集中した力がかかることで芯を作り、内側に食い込む。

「合わない靴を履くことや足の変形などにもよりますが、時に遺伝的要因で足の皮膚が硬くなりやすい人もいます。放置すれば角質がより厚くなり痛みも出やすいのでNG。

カッターで削るのも一つの治療法ですが、削りすぎにより出血して傷口から菌が入るケースも少なくないので、くれぐれも追い込まないこと。サリチル酸や尿素が入った市販の軟膏を使いましょう」(久道先生)

足の変形が原因となることが大半なので、適切に矯正するのが確実。

「医療用インソールで理想的なポジションに整えて、局所的な圧を取ることが最善の措置といえます」