【棚橋弘至・連載】第12回:知識&モチベが高まる! YouTube活用のススメ
新日本プロレス「100年に一人の逸材」棚橋弘至が綴る、大胸筋のように厚く、起立筋の溝のように深い筋肉コラム。第12回のテーマは「モチベーションの保ち方」について。
ピッチャーをやりたい、から始めた筋トレ
中学校2年生から筋力トレーニングを始めました。
親戚の叔父さんが持っていた10キロのダンベル2つとブルワーカー(※当時、雑誌の裏表紙とかによく載っていたトレーニング器具。「1日7分」が売り文句だったような)を、自宅に持ち帰ったのがきっかけでした。
14歳の僕は野球部でライトで8番という、絵に描いたようなライパチくんだったわけですが「高校に進学したらピッチャーをやりたい!」という分不相応な大志を抱いており、「速球派投手になるには、まず筋肉をつけなければ」という考えからでした。
寝る前に布団の上でブルワーカーと格闘し、高校2年生の頃には、ぽっこりお腹もへこみ(後に、反り腰が原因だったと分かる)、野球部冬季のウエイトトレーニングにより、同級生男子からは一目置かれる細マッチョにはなれていました。
野球部でもレフトを守りながら、2番手投手になり、速球派の投手ではなくサイドスローの変化球投手でしたが、一応、夢は叶えました。ええ、実は肩周りに筋肉が付いて可動域が狭くなり、腕が太くなり過ぎて、投球時にしならないという(泣)。
しかしながら、こうして続けてきたトレーニングは、僕をプロレスラーへの道へと導いてくれたのでした。
35歳で訪れたカラダの変化
と、長くなりましたが、こうして、ウエイトトレーニングをスタートしたわけです。そして、大学、新日本プロレスと歳を重ねて行く度に、トレーニング内容も徐々に本格的になり、その都度、カラダに変化が現れるようになりました。
特にプロレスラーになってからは、高回数のヒンズースクワットや腕だけでのロープ登り、周りに影響された無理な重量設定(笑)、道場生活での充実した食事(ちゃんこ)などでデビューまでの6か月で12キロ増(90→102kg)という筋量アップに成功しました。
順風満帆でプロレス界の筋肉アイコン(自称)にまでのし上がったわけですが、35歳を過ぎたくらいでしょうか? 変化が訪れます。加齢による基礎代謝の低下。良いときの記憶に頼り過ぎたトレーニング内容の過信などもあり、体脂肪がなかなか落ちにくくなっていました。
それでも、自分のやり方は間違っていないと意固地に継続した結果、年一で激太りするという残念な恒例行事を年表に加えることとなってしまったのです。
前進するために始めたYouTube視聴
僕が前に進むためには、まず現実を受け入れる必要があったわけです。年齢、ケガ、コンディションに合ったトレーニング内容を設定して調整することを意識しました。
そして、これに加え、新しく学びを得るために始めたこと。それは、ビルダーさんやフィジーカーさんのトレーニング動画を観ることでした。YouTubeで検索すると本当に多くのトレーニング動画が出てきます。僕は、その日のトレーニング部位や内容によって検索しています。
例えば「トレーニング 胸 ダンベル」とか「背中 自重」など検索すると、色んなシチュエーション(ジム、外、自宅)などのトレーニング動画を観ることができるのです。
ええ。本当に、いい時代になりましたね。
動画の内容は、初心者向けというよりは、僕みたいな中・上級者がトレーニング内容に刺激や発見を得るために観ている場合が多いと思われます。種目の組み合わせ方、セット数、レップ数、設定重量、インターバルなど本当に詳しく教えてくれます。
そして、何より、トレーニング動画を観て1番得られるものがあります。それは、モチベーションです。人の頑張っている姿は無意識のうちに「自分も頑張らないと」とか「このトレーニング方法やってみたい」とか良い刺激を与えてくれるのです。
しかしながら、『ターザン』さんでコラムを書かせていただいているわけで、文字媒体と動画の関係性も触れておかなければなりません。
棚橋流・文字&動画媒体の使い分け
その答えは…「知識量と筋肉量は比例する(仮説)」ということになります。『ターザン』さんで、トレーニング内容、部位、知識、やり方、効かせ方を学ぶ。そして、動画でさらに理解を深め、モチベーションを上げて、トレーニングへ向かう。そうすれば、さらに充実した結果が得られると思います。
僕は最近、毎回、トレーニング動画を観てから練習へと向かいます。キャリアとしては長いことやっていますが、それでもまだ知らないやり方があったり、新しく気付かされることがままあるからです。
人間のカラダには可逆性と言って「受けたダメージよりも強くなって回復する」という機能があります。こうして、強くなってしまった筋繊維をどうやったら破壊できるのか? 高重量? 高回数? パートナー? こう考えるとウエイトトレーニングは、自分との闘いというわけです。
自分自身と向かい合い、少し前の自分に打ち勝ってこそ得られるのが筋肉。だとすると、日に日に変わって行くのは、見た目だけではなく、心なのかもしれませんね。
棚橋弘至
たなはし・ひろし/1976年生まれ。新日本プロレス所属。立命館大学法学部卒業後、1999年デビュー。低迷期にあった同団体をV字回復に導き、昨今のプロレスブームをリング内外の活動で支える。