日常に溶け込んだ「陰陽」の考え方を学ぶ(漢方薬剤師・鹿島絵里さん)
「漢方薬店kampo's(カンポーズ)」薬剤師・薬学博士の鹿島絵里さんが漢方医学視点からのカラダづくりを提案する連載「漢方でつくるヘルシーボディ」。今回は「日常に潜む陰陽」をご紹介。
漢方医学的視点からカラダづくりを応援する、漢方薬店kampo’s(カンポーズ)薬剤師・薬学博士の鹿島絵里です。
春にテンションが上がり過ぎるのは要注意!?
ぽかぽかと日差しに暖かさが感じられるようになりましたね。春の陽気が高まっています。さてこの「陽気」、よく見聞きするありふれたワードのように思えますが、けっこう奥が深くて面白い言葉です。
漢方診断では人の体質や疾病の性質に「陰陽」をとらえます。なんとなく、陰は悪いもので陽は良いものというイメージがあるかもしれませんが、理想的なのは陰と陽の真ん中「中庸(ちゅうよう)」で、健康の観点から見れば陰、陽、どちらに傾いていてもよくありません。
とはいえ自然界は陰陽の波を原動力にしていますから、常にバランスがきっちり保たれてフラットなままということは健全ではないですし、そもそもありえません。人のカラダも上手に陰陽の波に乗りながら、巨視的にバランスが取れているのが良い状態といえるでしょう。
春は陽が高まってくるタイミングです。暖かな気候は冬の緊張をほどいてくれますね。一方で、陽の「上昇する性質」が気持ちを不安定にさせることも知っておかなければなりません。陽が強くなる季節は気持ちが昂りやすいものです。イライラしていると思ったら上手に息抜きして、陽への傾きをこじらせないようにしましょう。
と、ここまではよくある養生コラム。日常に溶け込んだ陰陽はまだまだあります!
数字にも陰陽がある
私たちの身近には陰陽がたくさん潜んでいて、先日の雛祭りもそのひとつです。雛祭りは3月3日、桃の節句と呼ばれますが、他にも、七草粥を食べた1月7日は人日(じんじつ)の節句、5月5日は端午の節句、7月7日は七夕の節句、すべて奇数の日付ですね。
数字の奇数は陽、偶数は陰というふうに、数字にも陰陽もあるんです。奇数は縁起が良いとされ、最も大きな奇数の数字「9」が重なる9月9日は重陽(ちょうよう)の節句です。
重陽の節句は現代の日本では馴染みが薄いかもしれませんが、かつては五節句の中で最も重要な日とされていたようです。縁起のいい奇数も二つ重なると偶数になるので、季節の変わり目としてこれらの日を意識して大事に過ごしたのが、現代に伝わっているのです。
男は陽、女は陰にカテゴライズ
雛祭りの話題をもう少し。ちょっと思い出してみてほしいのですが、男雛と女雛はそれぞれ左右どちらに飾られていたでしょうか。
実は性別や左右にも陰陽があり、雛人形もまたこの陰陽のルールに則っているんです。雛人形は左に男雛、右に女雛が配されています。男と左は陽に、女と右は陰にカテゴライズされているというわけです。
人が決めたルールと言えばそれまでですが「妊婦さんの脈からお腹の赤ちゃんの性別がわかる」と言ったら、自然の摂理と陰陽の関係に一段深い興味がわきませんか? 妊娠している女性の左右の手首の脈を同時に比べて、左手首の脈が強ければお腹の赤ちゃんは男の子、右なら女の子というものです。都市伝説の域を出ませんが、これがなかなか当たるとか!?
ご妊娠中の方、またはそのパートナーさん、ふたりで陰陽の神秘を感じてみてはいかがでしょう。