節分と漢方の意外な関係(漢方薬剤師・鹿島絵里さん)
「漢方薬店kampo's(カンポーズ)」薬剤師・薬学博士の鹿島絵里さんが漢方医学視点からのカラダづくりを提案する連載「漢方でつくるヘルシーボディ」。今回は「節分」の成り立ちと養生法をご紹介。
漢方医学的視点からカラダづくりを応援する、漢方薬店kampo’s(カンポーズ)薬剤師・薬学博士の鹿島絵里です。
節分と鬼
2022年2月3日は節分です。節分は旧暦の上での季節の最後の日。つまり春夏秋冬のそれぞれの節目で年に計4回ありますが、特にこの冬の終わり、立春の前日の節分は、豆まきをして鬼を祓う習慣があります。
鬼を祓うなんて、なんだか時代錯誤な印象もあるかもしれませんが、昔は正統派のマジメな医学書に「鬼」がわんさと出てきます。「鬼毒」「邪悪鬼魅」「鬼に襲われて死するものは」…などなど、枚挙にいとまがないほど、鬼は日常に存在して人々を脅かす存在でした。
そう、ここでいう鬼とは病気のこと、特に伝染病のことを指しています。伝染病が流行ったりしたときは、豆を投げたり卯杖(うづえ)と呼ばれる木の棒で家来が扮した鬼を撃退する儀式をしたりとか、そんなことが漢の時代にあったようです。
現代の日本で行われる豆まきの風習の原点なのでしょうね。
豆は漢方界の有名生薬図鑑にも登場している
ところで節分に鬼に向かって投げられる豆、いったいどんなありがたいものなのでしょうか。「マメ」という響きが「魔を滅する、魔滅」に通じるというのが最も良く聞く解釈です。
また、漢方に携わる人が尊ぶ三大古典と呼ばれる書物のひとつで、今で言うところの生薬図鑑である『新農本草経(しんのうほんぞうきょう)』にも「大豆は腫れ物に塗ったり、煮て汁を飲めば鬼毒を消して、痛みがなくなる」というようなことが書かれています。
現代では腫れ物にも伝染病にも別の効果的なアプローチがありますので、何も大豆にばかりすがる必要はないのですが、こうしてみるとなんだかありがたさが増してきて、改めて「ちゃんと豆まきして、歳の数だけ食べてみようかな」なんていう気にもなります。
我が家ではまいた豆をあとで美味しくいただくために、炒り大豆がテトラパックに入ったものをまいています。まいた後拾いやすく、美味しくいただけておすすめです。子供のころ実家では落花生をまいていました。
これもあとで拾って食べられる(笑)
春を迎える準備を
節分に際してもう一点、春を迎えたら意識していただきたいことをアドバイスいたします。春といってもまだまだ寒い最中ですので、いきなりコートを脱げとは申しません。防寒具もしっかり使って、寒さ対策はこれまで通りなさってください。
一方で、お日様の光は少しずつパワーを増してきますので、この絶妙な自然のバランスの変化にカラダをさらしてほしいのです。難しくはありません。
ちょっと日向に出てみるとか、カーテンを開けてポカポカの日差しをお部屋に取り込んでみるとか、そんなことでいいんです。季節とともにある人のカラダですから、暦の節目に習慣をマイナーチェンジして、春を迎える準備をしてみてください。