- 整える
タンパク質と、何が同じで、どう違う?ジェーン・スーと〈味の素(株)〉社員が語るアミノ酸のこと。
PR
カラダ作りに関する知識を深める「ストレングス学園」。これまでは筋、神経、骨格の構造に触れてきた。今回からは「エネルギー産生」の仕組みを学んでいこう。
ヒトが身体活動を行うためには、エネルギーが必要不可欠である。では、いかにしてエネルギーは産生されるのか。
代表的なものに食事がある。カラダに必要とされる栄養素(炭水化物、タンパク質、脂質)を摂取すると、細胞内で小さな分子に分解される。この分解過程で、身体活動に必要なエネルギーが放出されるという仕組みだ。
このように、炭水化物のような大きな分子をグルコースなどの小さな分子に分解する過程を「異化」といい、反対に、アミノ酸などの小さな分子をタンパク質のような大きな分子に合成する過程を「同化」という。
人間のカラダはこの異化と同化のバランスによって保たれており、2つの化学反応を合わせて「代謝」と呼ぶ。
俗にいう“太りにくいカラダ”とはこの代謝が良いことを指しており、ダイエットの観点からは分解過程でエネルギーを産生する「異化」を促す運動が推奨されている。けれどオーバーワークは禁物。同化の反応が追いつかないとエネルギーが枯渇するだけでなく、タンパク質が作られず、筋肉もつきにくくなる。
同化と異化からなる代謝は「ATP」と呼ばれる物質を介して、エネルギーの受け渡しが行われている。詳しく見ていこう。
ATPとはアデノシン三リン酸の略語で、下の図のようにアデノシンという物質に3つのリン酸が結合した構造になっている。
いわばエネルギーの一時貯蔵庫のようなもので、リン酸とリン酸の結合部分あたりの「高エネルギーリン酸結合」に多量のエネルギーが蓄えられている。エネルギーは3つ目の末端リン酸が切り離されたときに放出され、熱産生や筋肉の収縮といった体内のさまざまな反応に利用されるというわけだ。
ちなみに、リン酸が1つ切り離された化学物質(アデノシン+2つのリン酸)を「ADP」と呼ぶ。残念ながら筋細胞ではごく少量のATPしか蓄えられないため、筋活動を維持するには常にATPを再合成する必要がある。
筋細胞内で行われるATPの再合成は、酸素を必要としない「ATP-CP系」「解糖系」、酸素を必要とする「有酸素系(酸化機構)」の3パターンに分けられる。
次回からはこれらのエネルギー供給機構について、それぞれ詳しく学んでいこう。
取材・文/黒澤祐美 イラストレーション/モリタクマ 監修/齊藤邦秀(ウェルネススポーツ代表)
初出『Tarzan』No.822・2021年11月11日発売