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【加齢のトリセツ】中高年女性の約半数に起こる。外反母趾の原因と対策

中高年女性の約半数が悩まされる外反拇趾は痛くない人もいるが、予防を考えるなら裸足生活も、合わない靴を履き続けるのもよくない。足はいたわりながら長く使うべし。

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女性患者は男性の10倍!?

合う靴が少ない。長時間歩くと趾(ゆび)が痛む。拇趾(親指)の付け根が発赤し、出っ張りも。まさか? そう、恐らくそれは外反拇趾。拇趾から見て、小趾(小指)の側はカラダの外側。拇趾が外側に向かって反っていく現象だ。

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外反拇趾
実際にはアーチに該当する特定の筋肉があるわけではない。複数の筋肉、靱帯、腱などの力が働く結果、中足部にドームが立ち上がる。健常者の足は本来、踵、拇趾球、小趾球の3点で体重を支える“三脚”構造になっている。

外反拇趾
横アーチの中央がせり上がり、適度な反発力で上からの力を受け止める。

外反拇趾
横アーチがつぶれてしまい、趾が付け根から広がっている。外反拇趾の手前の状態。

その発症には明らかに性差があり、中高年女性の約半数に見られ、女性患者は男性の10倍以上とする報告さえある。思春期に多く発症し、中高年期に増悪するという指摘もある。

外反拇趾
もともと思春期の女性に多く発症することが知られている。中学に進学すると通学などで革靴を履く機会が増えるのも影響しているかもしれない。
出典/「外反拇趾の改善のために開発された鼻緒靴の効果について」宇土博『労働の科学』73巻1号2018年

近年外反拇趾の診断でよく測定される拇趾の角度(外反拇趾角)は、50歳ごろから急に大きくなることもわかってきた。

外反拇趾
外反拇趾角/拇趾球の端と踵の端を結ぶ直線から、拇趾がどれだけ小趾側に曲がっている(=外反している)かを測定したもの。男性に比べ女性は50歳を境に角度が増す傾向にある。
外反拇趾

なぜ外反母趾は起こるのか?

さて、外反が起きる前に、横アーチが沈下し、付け根が開く開張足という状態になっている人は少なくない。拇趾と他の4趾は靱帯でつながっているが、開張足になるとこの靱帯は伸ばされる。しかし、拇趾を曲げる力が働くため、拇趾は自然と小趾の方向に引かれる

外反拇趾の原因の一つがこれだとする研究者がいる。それが正しければ、開張足の段階で何らかの対策を講じれば、外反拇趾に発展せずに済むかもしれない。

だが、そもそもなぜこんなことが起こるのか? それは手を見れば何となくわかる。ヒトの手は拇指と他の4指が向き合う構造であるうえ、拇指は関節の可動域が広い。おかげで簡単に物を掴める。

足の構造も基本的に手と同じ。手ほどの器用さはないが、土踏まずというドーム構造を持ち(扁平足の人は別だが)、趾を曲げれば触れた物を少し掴める。遠い昔にヒトの祖先が二足歩行を始めたころの足元は、凹凸だらけの不整地がほとんど。ヒトの足は不整地を掴みながら歩くように発達したと考えられる。

だが、近代になり都市化が進み、足元には平坦な舗装が広がり、足は靴に包まれた。靴を履くと人は往々にして趾を使うことなく歩き回る。運動不足から足は筋力が低下し、ドームは沈下しやすくなる。こんな背景もあって、外反拇趾が増え続けているのだろう。

では裸足で暮らせば予防、改善できるかというと、話はそう単純ではない。いまどきの住居の床は、硬いフローリングが主流。劣化の進む足には荷が重い。欧米人のように屋内でも靴やスリッパを履いて、足をいたわるべきだろう。

改善には気長に取り組もう。

足の運動不足解消に推奨できる代表的なメニューは、趾を使っての足じゃんけんや、床に広げたタオルを趾で手繰り寄せるタオルギャザーなど。ただし、短期間で顕著な効果が出るわけではない。習慣化して気長に取り組もう。

とはいえ、足の運動量が十分に確保できている人は、足底の筋肉が収縮・緊張して力を発揮しているときと、だらりと弛緩しているときとでは、床面から足底(厳密には舟状骨の中心)までの高さの差が大きい。

外反拇趾
バレエ歴平均15年の女性10人と、運動歴がなく測定当時運動習慣のない女性10人を比較。足底筋弛緩時と収縮時のアーチ高の差はバレリーナ群が平均0.9cm、対照群は平均0.47cmと有意な差が生じた。
出典/ 「バレエをしている人としていない人の足底筋肉の差」青木洋子、堀内充、蘆田ひろみ 『靴の医学』26(2):107‐110, 2012.

運動習慣は足底の筋肉も育てるから、土踏まずのドームが沈下しにくくなることを期待でき、外反拇趾の予防にも役立つだろう。テーピングに治療効果のエビデンスはないが、装着して痛みや不快感が和らぐなら悪くない。

角度は痛みの強さと関係がない。

ただ、ここで考えるべきは、すべての外反拇趾を撲滅すべきか、ということだ。冒頭でも触れたが、中高年女性の約半数に起きる現象だが、実際に整形外科を受診する人は限られている。変形が起きていても、痛みなど不快な症状のほとんどない人もいるからだ。

拇趾の角度(外反拇趾角)が大きいと痛そうに見えるが、角度と痛みの強さに直接的な関係はない。では、痛む人には何が起きているのか? 拇趾が外反したため、関節同士が強く接触し、圧力がかかって骨棘(とげ)ができてしまうと、ひどい痛みをもたらす

また、変形が進んで末梢神経の圧迫が起きても痛む。が、すべての人がそうなるわけではない。

痛い、歩けないなど生活に支障を生じたら受診し、診断がつけば、最終的には手術も選択肢になってくるが、痛くなかったり、痛みが小さい人は①費用は安くないが、専門店でオーダーメイドの靴(整形靴)を注文し、履くといい

または、②整形外科で自分の足に合ったインソールを作ってもらうのがリーズナブルな対応だ。インソールに関しては、条件がそろえば保険が適用される。

そもそも人の足は一人一人みんな違うから、既製品に適合しない足は必ず一定数現れる。靴は長時間カラダに密着させて使う、カラダへの影響が大きい道具。合わない靴を履き続ける弊害は軽く見ないことだ。また、自分に合う靴やインソールに、適切な金額を投資するのは決して贅沢ではない。

外反拇趾
陥入爪は深爪や窮屈な靴のせいで主に拇趾の爪が皮膚に食い込み、炎症を起こした状態。内反小趾は窮屈な靴やO脚などにより小趾が拇趾方向に曲がった状態。ハンマートウは第3関節が反り上がり、第2関節は曲がり、第1関節が反る変形性関節症。オス・インターメタターセウムは拇趾と第2趾の間に過剰な骨ができる症状。腫れが小さいうちは痛まないが、大きくなると靴に当たって痛む。

取材・文/廣松正浩 イラストレーション/横田ユキオ
取材協力・監修/町田英一(麻布整形外科クリニック非常勤医師、日本整形外科学会認定医、日本足の外科学会幹事、日本靴医学会評理事、医学博士)

初出『Tarzan』No.815・2021年7月21日発売

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