骨盤と背骨はなぜ歪む?
トレーニングをしていると耳にする「コンディショニング」という言葉を、詳しく紐解いていく「コンディショニングのひみつ」連載。第8回は「左右の骨盤の高さ」に原因がある姿勢の歪みについて。
取材・文/黒澤祐美 漫画/コルシカ 監修/<a href="/tags/kunihide_saito/">齊藤邦秀</a>(ウェルネススポーツ代表)
初出『Tarzan』No.815・2021年7月21日発売
日常動作の癖が招く左右バランスを整える。
今回は前額面(カラダを前後に分ける面)の不良姿勢を学ぼう。前額面から見た際の不良姿勢の一つが、脊柱の側弯。専門的には「脊柱側弯症」といい、胸から腰にかけての脊柱が“くの字”あるいは“逆・くの字”のように左右どちらかに弯曲している状態を指す。
エックス線写真で弯曲の角度が10度以上である場合を側弯症とするため、自己判断は難しい。とはいえそのままの状態を放置すると、腰の痛みや凝り、脊髄障害による神経症状、肺活量の減少や息切れなどの呼吸異常が起こる可能性があるため、改善が必要になる。
鏡を見て骨盤や肩の高さの極端なアンバランスを感じたら、一度専門医で診てもらうことが大切だ。
脊柱側弯症は大きく分けて「構築性脊柱側弯症」と「非構築性脊柱側弯症」の2種類がある。構築性脊柱側弯症は骨そのものの構造的な異常を指し、自分で改善するのは難しいため、前述の通り一度専門医へ行くのが望ましい。
一方で非構築性脊柱側弯症は、普段の座り方や日常生活内の動作の癖により、筋や筋膜のバランスが崩れることで起こる弯曲のこと。左右どちらかの筋肉が硬直、あるいは弱化し、骨盤の高さと脚の長さに左右差が生じるケースが多い。すぐに大きな障害につながることは少ないものの、見た目のアンバランスのほかにも、腰痛やO脚などを招く恐れがある。
今回はそんな非構築性脊柱側弯症にフォーカスし、アプローチを考えていく。まず、下のイラストを見てみよう。
これは〝逆・くの字〟のように脊柱が右に弯曲している状態だ。硬化している筋肉は、自分から見て、
- 左の腰方形筋
- 右の中臀筋
- 左の内転筋
反対に弱化している筋肉は、
- 右の腰方形筋
- 左の中臀筋
- 右の内転筋
このように筋のアンバランスが起こると、硬化した筋肉が骨盤を引っ張り、左右の高さに差が生じるというわけだ。この硬化と弱化のバランスさえ把握できれば、あとは硬化した筋肉をストレッチやセルフマッサージで緩め、弱化した筋肉を鍛えるアプローチをするのみ。もしも左右が逆の場合は、入れ替えて行おう。
エクササイズ例
左右の筋バランスが崩れる原因は脚組み、横座り、片脚荷重、同じ方向で横向き寝などが考えられるため、これらの体勢をとらない意識を持つことも改善策の一つになる。
さらに、日常動作ではあまり使われず、筋力が衰えやすい内腿を鍛えるというアプローチも有効だ。椅子に(床の場合は膝を立てて)座った状態で、両膝の間に畳んだタオルを挟む。それを潰すように、膝を内側にギュッと押し込むと内腿を鍛えることができる。
両内腿をバランスよく鍛えたら、次に姿勢から左右の筋バランスをチェックし、硬化している側の内腿を念入りにストレッチ。腰部と臀部へのアプローチと合わせて内腿の筋肉をニュートラルに保つことで、骨盤の左右バランスが整っていく。
復習クイズ
答え:「胸のストレッチ」がNG。