里山でe-MTBを始めてみよう!|初夏のアクティビティQ&A

早くも暑くなり始めた都会を抜けて、気の置けない仲間と気楽に遊びたい。特に昨今話題のe-MTBで気の向くままに楽しめる“ちょいゆるアクティビティ”がおすすめだ!

編集・取材・文/門上奈央 撮影/久保田亜矢 取材協力/丸山八智代(スペシャライズドアンバサダー)

初出『Tarzan』No.811・2021年5月27日発売

どんな道でもすいすい、眺望を満喫しながらライド!

ダウンヒル最高!! とはしゃぐ自分に、自分で驚いた。今までMTBはおろかクロスバイクに乗ったことしかなく、街を走るなかで上り坂に出くわすたびに萎えるような私に里山を走る楽しさを教えてくれたのは、e-MTBとプロライダーの経歴を持つ丸山八智代さんだ。

教えてくれた人
丸山八智代さん
丸山八智代(まるやま・やちよ)/〈スペシャライズド〉アンバサダー。過去にはMTBクロスカントリーやダウンヒルの国内レースで活躍。現在はMTBインストラクター&ガイドを務める。

「普通のMTBだとトレイルライドを1本こなすので精一杯なコースでも、電動アシストのおかげで3本は難なく走れるんですよ」(丸山さん)

走りに行く前にこの言葉を聞き、“バイクに通じた丸山さんも納得する乗り心地を、アシストがあれば私も追体験できるかも”と思った。

e-MTBとは?
e-MTB

電動アシスト付きのスポーツバイク。2010年代半ば以降、日本仕様のモデルが普及。クロスバイクやロードバイクなどあるが、e-MTBは変速ギアなどの機能性に優れており走行性能が高く、オフロードも快適に走れる。バッテリー容量や充電にかかる時間などはメーカーにより異なる。

その期待感をe-MTBは裏切らなかった。1つ目の上り道に差しかかりまずはギアのみ調整。この時の体感はクロスバイクで上り坂を走る時に近いが、いざアシストの電源を入れた途端、全身がふわぁ〜と軽くなった。ペダルを回すほど平地を走るような体感に近づいていく。こんな感覚、未知!

だんだん慣れてくると上り道なのにコースから見える風景を満喫(何、この余裕!?)。あっという間に高地に着き、全身で風を受けつつ坂を下る。森の中も快走した。しかも翌日筋肉痛は皆無。お値段はやや張るけれど、未知の景色に導いてくれることは間違いない。

初めての「e-MTB」Q&A。

結局、普通のMTBと何が違う? 乗車前点検や操作法、価格などの基礎知識を押さえてからe-MTBならではの爽快感を味わおう!

Q1. e-MTBに乗る前にチェックすべきことは?

A. 毎回乗車前点検として6項目を確認しよう。

タイヤの空気圧やボルトの締め付け具合を確かめるのは通常のスポーツバイクと同様だが、e-MTB特有のチェック項目といえばバッテリー。走行中に充電が切れてしまうとノーアシストで帰らなければいけないので、フル充電の状態で出発すべし。メーカーによっては別売りの予備バッテリーなどを用意しておくと安心だが、2〜3時間程度のライディングであれば、基本的に内蔵されたバッテリーで間に合う。

オフロードを走るうえで重要なギアはあらかじめ平地で試走して確認。ブレーキについてはブレーキレバーを握った時にタイヤが動いてしまわないか、停車した状態でチェック。

まずは電源を切った状態で、左右で異なるブレーキレバーの特性や操作を習得。特に塩梅を知るべきは前輪に関与する右ブレーキ。下り坂で右側のレバーだけで止まると前転するリスクが高まる。両手のレバーに指をかけ、状況に応じてそれらの加減を調整しながら走ること。

ギアも確認したら電源をON。アシストとギアの合わせ技で推進力や走り心地の違いを把握しよう。サドルの高さは走りながらそのつど調整。

【乗車前チェックリスト】

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チェック① タイヤ

チェック① タイヤ

空気圧ポンプを使い、タイヤの側面に記された適正値を満たしているかを前輪・後輪ともにチェック。

チェック② バッテリー

チェック② バッテリー

出発前に充電が満タンであることが絶対条件。充電時間は機種によるが、だいたい2〜5時間程度。

チェック③ クランク、ハンドル

チェック③ クランク、ハンドル

タイヤのクランクやハンドルなどのボルトは毎回乗車前に必ず六角レンチで締め直すこと。

チェック④ ブレーキ、ギア

チェック④ ブレーキ、ギア

走り出す前にブレーキとギアがかかるか確認。同時に、急ブレーキをかけた時に踵を下ろしお尻を引く、正しい姿勢を実践すべし。

Q2. ライドをするとき、最低限用意すべきものは?

A. 必需品はヘルメット! あとは小物類を揃えて。

ヘルメットはマストで、多方向衝撃保護システムこと「MIPS」を搭載したタイプがおすすめ。外側のシェルとインナーライナーの間に低摩耗レイヤーを加えた3重構造により、転倒などで頭部をぶつけると低摩耗レイヤーが頭の動きに伴いスライドして衝撃を緩和。頭に被り、顎紐を締めたら、ヘルメットの下で頭がぐらつかないようアジャストロックを調整するのを忘れずに。

e-MTB乗車の際の必須アイテム
丸山さんの所持品をチェック。防水性能が高い10Lのバックパックを携行。少し長めにライディングをしたい日は補助バッテリーも持参しよう。

脱水症状対策として飲み物はマスト。また長い距離を走りたい時はエナジーバーなど栄養補給できる間食も入れておくといいだろう。

小物類は専用のアイテムだと間違いないが、身近なものでも代用できる。手の疲労軽減や転倒時の手の保護を果たすグローブは滑り止め加工を施したラバー軍手でOK。またニーパッドがない場合はタイトフィットなワークアウト用のロングパンツを穿くか、ショートパンツ×レギンスを選べば足さばきがラク。

凹凸の多い悪路に挑む時は非常時に備えてタイヤレバーやパッチ、ポンプなどの工具類も携行すべし。

Q3. 覚えておきたい操作法は?

A. ツアーに参加するか講習を受けるのが一番。

普段からスポーツバイクを愛用する人であっても、購入前には必ずプロから乗り方を学ぶべし。電動アシストの有無により乗り心地は異なり、またオフロードを安全に走るにはブレーキやギアの調整以外にもアシストの活用や切り返しなどの知識や技術を求められるからだ。

ネットで自ら収集した情報だけでは走行中も最適解を探らねばならず、ケガなどのリスクも当然高まる。実店舗で買う時に販売員から最低限のレクチャーは受けられるが、e-MTBで専用コースを走るツアーを催行する専用施設に行くのが理想的。

【購入前に乗り心地を試せる専用施設】

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フォレストバイク

フォレストバイク
小田原市の森の中に造成された専用のフロートレイルを走れる。上級者向けの特別講習も。1人2,000円〜。専用ページより予約可。 https://www.forestbike.jp

トレイルアドベンチャー ・フジ

トレイルアドベンチャー ・フジ
富士山の麓の里山を巡るツアーや、早朝または夕方に山中湖周辺を走るツアーを開催(平日限定)。いずれも1人8,800円。https://trailadventure.jp

講師から指導を受けられるだけでなくe-MTBのいろんな機種の試走ができるので、自分に合った“相棒”を見つけるきっかけに。


e-MTBエントリー向けモデル3選。

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メリダ eBIG.NINE 400

長く走れてコスパ抜群。

メリダ eBIG.NINE 400

バッテリーがダウンチューブに組み込まれたインチューブバッテリー式フレームのデザイン。タイヤは29erでオフロードでも安定した走行が可能。航続距離は最長約140km(ECOモード)。21.1km(Sサイズ)。438,900円。問い合わせ先/メリダ tel. 0465-80-0661。

パナソニック XM2

簡単操作で扱いやすい。

パナソニック XM2

高トルク型マルチスピードドライブユニットとワイドレシオによるアシストで、急な坂もすいすい上れる。走行速度や走行距離などを確認できるセンター液晶ディスプレイ付き。航続距離は最長約107km。24kg。426,800円。問い合わせ先/パナソニック tel. 0120-781603。

スペシャライズド LEVO SL COMP

長く走れる軽量性が◎。

スペシャライズド LEVO SL COMP

上記で体験者が使用。バッテリー完全内蔵型ながら19.5kgと軽量性に特化。専用アプリと接続するとモーターを自分の走り方に合わせてチューニングするなど機能性も高い。航続距離は最長約130km。649,000円。問い合わせ先/スペシャライズド tel. 046-297-4373。