不安障害の特徴は?
大勢の前で話すとき、緊張して汗をかいたり、心臓の鼓動が激しくなったりした経験はないだろうか。不安障害の特徴の一つとして、人の注目が集まることに対して苦手意識が強いということが挙げられる。これは人として正常な反応だが、過度になるとパニック障害や強迫性障害などに進展する恐れがある。事実、アメリカでは成人の約15%が精神障害があるそうだ(※1)。
心理学者のロバート・ヤーキーズとジョン・ドッドソンが考案した「ヤーキーズ・ドッドソンの法則」によれば、最高のパフォーマンスを発揮するためには、適度な不安が欠かせない。だが、不安が過度になるとパフォーマンスの低下を招く原因になる。
※1… MSDマニュアル家庭版 不安症の概要 より。
私のこの不安、どのくらいのレベルなの?
「私たち医師は、DSM-5(精神障害の診断・統計マニュアル第5版)という基準に基づいて診断を行っています」(ゆうメンタルクリニック院長・ゆうきゆうさん)
DSMとは、アメリカ精神医学会が出版している、国際的に利用されている精神疾患の診断基準・診断分類のこと。こちらを参考にしつつ、カウンセリングを通じて患者の経過を観察しているという。
ただし、注意しておきたいのはDSMは自己判断には使えないということだ。熟練した医師により、診断基準の一つとして使用されることを目的として作られている。
セルフチェックには、自覚症状の現れが一つの指標となる。不安が原因で息切れ、めまい、発汗、心拍数の上昇などの身体症状が発生する場合は、精神障害にまで発展している可能性があるので、メンタルクリニックで専門家の診断を受けてみてはいかがだろうか。
経験を積むことで不安は小さくなっていく。
では、個人で心掛けられる不安を軽減する方法はあるのだろうか。
「ひとつは気負いすぎないこと。注目を浴びることが苦手な人は、自分に対する評価が厳しい傾向があります。何事も、10点中3〜4点くらいで及第点だとハードルを下げてみましょう。プレゼンなどの発表の場では『この項目だけ話せればOK』というライトな目標を達成することに主眼を置くといいですね」
全か無かの思考は、結果的に自分の首を絞めることとなる。実力が伴わないまま無理に目標を高く設定してしまうとプレッシャーに押しつぶされてしまうので、実力相応を見極めることが大切だ。
加えて、経験を積むことも不安を拭い去る要素になるという。
「テレビに出演している大物司会者の人もトップアスリートも、私たちと同じ人間ですから、ときには大きなプレッシャーを受けることがあるでしょう。それでも高いパフォーマンスを発揮できるのは、それ相応の経験を積んでいるから。どんなことでも回数を重ねるうちに慣れてくるので、とにかくやり続けることも大切です」
バスケットボール界のレジェンド、マイケル・ジョーダンすらも「成功することを学ぶには、まず失敗することを学ばねばならない」という名言を残している。どんなに偉大な記録を残している人であっても、失敗はつきものということだ。
そして、失敗のなかから成功への道は見えてくる。それは不安の解消にも通じるはず。一度失敗してしまっても、焦ったり落ち込んだりせず、マイペースに回数を重ねてみよう。