依存症は否認の病気だから抜け出しにくい。
「依存症」と聞いたとき、何を思い浮かべるだろうか? お酒、タバコ、薬物、ギャンブルが一般的だろう。どれも依存してしまうと人間関係や日常生活に支障をきたすものだとされているからだ。
だが、こうした「物質への依存」だけでなく、特定の行為や過程にのめりこんでしまうあまり依存に陥ってしまう「プロセスへの依存」というものも存在する。これにはゲームやスマホ、買い物などが対象に含まれており、私たちの生活にとって依存症という病気が実は身近な存在であることを教えてくれる。
では、一体どのレベルから依存症に該当するのだろうか。まずは、厚生労働省が発表する「依存症の特徴」を見てもらいたい。
- やめたくてもやめられない(コントロールできない)…「今日は止めよう」と思ってもやってしまう、適当なところで切り上げることができない、自らの意思ではどうしようもない
- 徐々に悪化してしまう…放置すればどんどん進行する
- 考え方が極端になってしまう…家族・仕事・将来設計等、生活の全てに優先してのめり込む
- 問題を否認する…借金・家庭内の問題などの現実を見ない、事態の過小評価、事実を認めず攻撃的になる等
- 家族を巻き込んでしまう…家族が悩み、依存症者に注意する一方、借金の肩代わりを行う等の目の前の問題解決に奔走し、身体面・心身面・金銭面で疲弊していく
ゆうき先生は、依存症の問題点についてこう語る。
「依存症は、否認の病気とされており、認めないことが本質だと言われています。お酒をやめなさいと忠告されても、『(自分は)お酒を楽しんでいるだけだ!』と否定から入ってしまうわけです。
この状態から脱するためには、自分自身が依存だと認め、自らの意思でやめようと思わなければなりません。しかし身体が依存状態に陥ると、脳内のホルモンバランスが崩れて精神が不安定になりやすくなります。だから、簡単には抜け出せないんです」
依存症完治率は、ゆうきさんの認識で約3割程度だという。それほどまでに完治が難しい理由は、自分自身で依存を認めることができないからだ。
アディクションにはコネクションが必要。
また、依存症に陥る人は孤独や不安を一人で抱え込んでしまうことが多いそうだ。
「依存症は、自らの苦痛を和らげる自己治療だと言われています。自分の心を癒すことができないから、依存物質に頼ってしまうわけです」
では、どうやったら依存症から抜け出せるのだろうか。
「海外では『アディクション(依存)にはコネクション(つながり)が必要だ』と言われています。つまり、人間関係が重要なんです」
1960年から15年かけて行われたベトナム戦争では、アメリカ兵の15%がヘロイン中毒に陥っていた。アメリカ政府はすぐさま薬物乱用防止対策局を設置したところ、ヘロイン再使用率は5%未満に抑えることができたという。それはなぜか?
南カリフォルニア大学心理学部のウェンデイ・ウッド教授は、軍環境とはまったく異なる環境で家族や友だちと過ごす時間が増えたことが、ヘロイン再発を防いだ大きな要因だと結論づけている(※)。
それほどコネクションは大切なのだ。
自分にとって大切な人が依存症になってしまったら?
ちなみに、友人や家族といった大切な人が依存症になってしまったときは、どのようにして対応すればよいのだろうか?
「依存症は、本人が依存を治すより、周囲がサポートする方が難しいと言われています。強いていえば、会話をする際にできるかぎり相手を否定しないこと。加えて『あなたは』ではなく、『私は』という言い方で話しましょう」
「あなたは依存症だ」「あなたはお酒を飲み過ぎている」と一方的に伝えるのではなく、「お酒を飲んでいると話ができなくて辛いから、なんとかならないかな?」「あなたがお酒を飲み過ぎてしまうと、私が困ってしまう」のように自分を主語にして話すことが大切だ。