季節の変わり目は強いストレスを感じやすい。
人間は、環境の変化に悪影響を受けやすい生き物。なかでも5〜6月は要注意な時期のひとつ。季節の変わり目となるため寒暖差が激しく、自律神経が乱れやすくなる。
また、体温コントロールで肉体にも負担がかかり、体調を崩しやすい。 しかも4月から新生活がスタートした人にとっては、少しずつ環境に慣れてくる時期ということもあって気が緩みがちに。すると、4月から蓄積していた疲労が一気に心身に降りかかり、仕事や勉強に対する意欲を急に失ってしまう。
「いわゆる『五月病』は、ゲームでいうHP(体力)とMP(精神力)が消耗している状態だと思ってください。どちらかが消耗しても人の健康はバランスが崩れます」(ゆうメンタルクリニック院長・ゆうきゆうさん)
体力と精神力は、ゲームだと別々のエネルギーとして表現されているが、実際には連動したひとつのものとして考えられている。だから、ストレスフルな精神状態だと運動する気力が起こらないし、肉体的な疲労が蓄積しているときは集中力が低下しがちだ。
うつ病のサインは日常との差異から考えよう。
カジュアルな意味で用いられがちな「五月病」だが、医師の診断基準となるDSM(※)に則ってみると、その症状は軽度なうつ状態に近いそうだ。
初夏・初冬の時期に増加傾向にある季節性感情障害、季節性うつ病に該当する可能性もあるため要注意だ。 ※DSM…精神疾患や発達障害を診断する際の世界的な診断基準となる統計マニュアルのこと。
下のリストは、厚生労働省が発表している「うつ病で見られる症状」を示したもの。
うつ病のサイン・セルフチェックリスト
- 自分で感じる症状/憂うつ、気分が重い、気分が沈む、悲しい、不安である、イライラする、元気がない、集中力がない、好きなこともやりたくない、細かいことが気になる、悪いことをしたように感じて自分を責める、物事を悪い方へ考える、死にたくなる、眠れない
- 周囲から見てわかる症状/表情が暗い、涙もろい、反応が遅い、落ち着かない、飲酒量が増える
- 体に出る症状/食欲がない、体がだるい、疲れやすい、性欲がない、頭痛、肩こり、動悸、胃の不快感、便秘がち、めまい、口が渇く
どれも日常的に起こりうるものばかりだ。もしこの症状だけで判断がつかない場合は、何を基準に考えればいいのだろうか。
「重要なのは、変化です。睡眠が十分に取れなくなったり、逆に過度に増えたり。少食になったり、過食になったりなど、睡眠・食欲の変化が代表的なうつのサインになりますので、意識してみてください」
また、趣味が楽しめなくなる場合も注意が必要だという。熱が覚めてしまう状態は、肉体的にも精神的にも疲労している可能性が高い。
変化を感じたら、ほったらかしにしない。
では、うつ状態を無視して無理を続けるとどういったリスクが考えられるのだろうか?
「より重症化してしまう可能性があります。もしうつの片鱗があると感じたら、早めにメンタルクリニックで治療することをおすすめします」
うつ病は早期発見ができるかできないかで、回復までの時間が大きく変わるという。「俗に言う五月病だから」と侮っていると悪化する可能性もある。
自助努力が難しい問題であるからこそ、上記の症状や変化を感じたら、自分ひとりで抱え込んだり、精神科に診てもらうなんて…と躊躇したりせずに、まずはメンタルクリニックへ相談してみてはいかがだろうか。話を聞いてもらうことから始めれば、ハードルはそれほど高くないはずだ。