• 西川貴教、齢五十。読者の「腹筋の悩み」に答えます
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2021.05.28

西川貴教、齢五十。読者の「腹筋の悩み」に答えます

西川貴教

50歳にして肉体美を維持する、いや進化させ続ける西川貴教さんに、読者からの「腹筋の悩み」をぶつけました。(雑誌『ターザン』No.809〈2021年4月22日発売号〉より全文掲載)

歌手で俳優の西川貴教さんは、熱心なトレーニーとしても知られる。2020年は『ベストボディ・ジャパン』に挑戦。一般人に交じって参加した大会のモデルジャパン部門ゴールドクラスで見事優勝を果たした。

今年50歳で発売した写真集でも鍛えられた肉体美を披露した西川さんに、本誌の腹筋特集に出てほしい、そうオファーしたところ、返ってきた返事は「1か月ください」だった。

さすがは何事にも全力投球のプロ中のプロ。結果、ご覧の通りの凄みのある仕上がりを見せてくれた。

そんな西川さんに聞きたい腹筋に関する質問を、本誌「クラブターザン」メンバーに急募。西川さんに答えてもらった。お腹を割るためのヒント満載のQ&Aを精読せよ!


Q 頑張っているのに、お腹が割れない。なぜですか?

まず知ってほしいのは、お腹は誰でも割れているという事実。それはワンちゃんのお腹を触ればわかる。

僕は犬をずっと飼っているので、そのお腹をよく撫でるけど、そこに腹筋なんてまるでない。僕ら人間は、直立二足歩行で姿勢をまっすぐ保つために腹筋が発達してきた。極端に言うなら、鍛えなくても、誰でも腹筋はあるし、割れているんだ。

お腹が割れないなら、初めに必要なのは、万人に存在している腹筋を掘り起こす作業。

腹筋トレも大事だけど、並行して食事を見直したらどうだろう。僕も『ベストボディ〜』に向けてカラダを絞る過程で、ボディメイクに食生活が果たす役割を再認識した。無駄なカロリーをカットし、皮下脂肪を削って腹筋を掘り起こしてみようよ。

Q そろそろクランチを卒業したい。何をやるべき?

僕もクランチはとっくの昔に卒業しているよ。お腹から声を出す歌手という職業柄、もともと腹筋は強かったから、クランチは100回やっても全然効かないんだよねぇ。クランチの弱点は、腹筋の上部ばかりが鍛えられて、下部まで効かせにくいところ。上から下までキレイにお腹が割れてくれない。

お薦めしたいのは、バーにぶら下がった状態で脚を上げるハンギング・レッグレイズ。スタート姿勢で、腰が反るまで思い切り骨盤を前傾させて腹筋をフルストレッチしてから、骨盤を後傾させながら、両膝を巻き上げて腹筋を最大限収縮させる。僕は25回を1セットとして、4セット行っている。同じ回数&セット数のケーブルクランチと交互にやって追い込むことが多いかな。

西川貴教
西川貴教(にしかわ・たかのり)/1970年、滋賀県出身。96年ソロプロジェクト〈T.M.Revolution〉としてデビュー。2018年からは西川貴教名義で音楽活動を開始。圧倒的なライブパフォーマンスに定評。20年、写真集『西川貴教 五十而知天命 五十にして天命を知る』を発売。

Q フッキンを始める決意が固まりません。

僕がトレーニングを始めたのは20年ほど前。その頃、1年間で100本、47都道府県を2周する勢いでライブツアーを敢行していた。3日に1回ライブをやる計算だね。当然疲労は溜まるし、自宅にも1か月以上帰れないから、メンテナンスもできない。元来痩せ型だったので、体重が減り、脱水症状もひどかった。

その状況から抜け出し、疲れにくいカラダを作り、ライブで思う存分暴れるために筋トレを始めたんだ。あなたもフッキンを始めるなら、何のために鍛えるかを改めて見つめてみよう。なんとなくではトレーニングは続かないよ。

Q 体脂肪を落とそうとすると筋肉も落ちてしまう。

これはトレーニー永遠の課題。

ベストボディの前には、筋肉を落とさずに体脂肪を削るリーンバルクのために、タンパク質を確保しつつ、糖質を徹底的にカットするケトジェニックダイエットに挑んだ。摂取カロリーは1日1800キロカロリーに設定。食事は1日6回に分割し、肉や魚などからタンパク質を摂り、ブロッコリーやアスパラガスなどの野菜、それにきのこなどを摂った。

けど、厳密にケトジェニックを続けるのは辛い。僕も今回の撮影に向けては、1食当たり100g前後の糖質を摂ることにした。それでも体脂肪は増えないし、筋肉は保たれる。トレーニングをしていれば、その程度の糖質はエネルギー源として消費されるからだ。

ただし糖質源は、玄米おにぎりやサツマイモのように、血糖値を上げにくい低GIのものに限る。GIが高すぎると糖質が体脂肪に変わりやすいからね。

Q 筋肉に効かせるコツがわからない。

僕も最初はそうだった。重たいウェイトを上げることばかりにこだわりすぎた挙げ句、肩や肘などの関節を痛めてしまったこともある。

その反省を込めてアドバイスするなら、とにかく一回一回反動を使わないで丁寧に行うことが重要。男子はどれだけ重たいウェイトで鍛えているかを自慢したくなりがちだが、それだと反動を使いたくなり、狙った部位に刺激が入りにくくなる。

腹筋に限らず、筋肉を肥大させたいなら、筋肉を構成している筋線維一本一本まで意識するようにトレーニングした方がいい。そのためには負荷を落としてでも、反動を殺してゆっくりやるべきなんだ。

Q 音楽を聴かないと気分が上がりません。

その気持ちはわかるよ。僕もトレッドミルで有酸素運動をするときは、EDMを聴いたりすることもある。リズムが四つ打ちで、心臓の鼓動に合ってノリやすいから。トレッドミルでは走るのではなく、傾斜7度で時速6㎞の速歩きをしているよ。

でも、筋トレをするときは、音楽は聴かないな。筋トレはフォームがちょっとでも崩れると効かないから、パーソナルトレーナーにミリ単位でフォームをチェックしてもらいながら、修正している。筋トレをしている間は、音楽よりもトレーナーの指示に耳を傾けたいんだ。

一人で鍛えるときも、たまにはヘッドフォンを外し、自らの吐息や心臓の鼓動に耳を澄まし、カラダと対話しながら鍛えてみたらどうだろう。

Q トレーニングをついついサボりたくなります。

トレーニングをサボっても、誰にも迷惑はかからない。結局は自分が納得できるかどうかだ。

僕の場合、サボったことでライブパフォーマンスに悪い影響が出るのがイヤ。動きがキレキレで、止まるべきところでビタッと止める。その当たり前が思ったようにできなくなったら、絶対後悔するとわかっているから、サボりたいとは思わない。

サボりたくなったら、何のために鍛えているかという目的ともう一度向き合ってみたらどうだろう。その目的が果たせないのが悔しいなら、黙って鍛えたくなるはずだ。

西川貴教

Q コンテストに出る覚悟がありません。

偶然が重なって昨年ベストボディに出る運びになったけど、僕はコンテストを目指して鍛えてきたわけではない。フィットネスが好きという理由で20年以上鍛えていたら、幸いにもその延長線上にコンテストボディがあった。だから、トレーニング内容を大きく変えずにコンテストに臨むことができてラッキーだった。

今後も、“その気になればいつでもコンテストに出られるカラダ”は保っておきたいと思っている。実際コンテストにエントリーしなくても、そういう発想でトレーニングを続けたらどうだろう。すると僕みたいに、何かのきっかけで覚悟が決まり、大会に出たくなるかもしれない。それでいいんじゃないかな。

Q 腹筋にどんなサプリがいいかわからない。

単なる噂話レベルではなく、最近はボディメイクにプラスになるというエビデンスが揃ったサプリがたくさん出ている。他人の話を真に受けないで、自分なりに調べて見つけてみるといい。

僕が愛用しているのは、脂肪燃焼作用があるカルニチンパウダーと、必須アミノ酸のEAA。朝はコーヒーからカフェインを摂る。ミトコンドリアを活性化し、カラダを細胞レベルで元気にするTRUもいいね。

Q 噂を信じて腹筋をつけたのに、声がちゃんと出ない。

こういうお悩みは、若手ミュージシャンからもよく聞く。彼らに「どんな腹筋をやっているの?」と尋ねると、だいたいクランチなんだ。それでは腹筋上部しか鍛錬されない。あなたもクランチ派なのかな。

声を出すのに大切なのは、お腹の奥にある大きな風船に貯めた空気を100%使い、横隔膜を上手に動かすこと。そのためには歯磨きのチューブを絞り出すように、下から徐々に腹筋を使うべき。上ばかりいくら強くなっても、風船の下部に貯めた空気は押し上げられないから、吸った空気の3〜4割しか使えない。

それでは声が思ったように出なくて当たり前。すでに紹介したハンギング・レッグレイズなどで、腹筋を下から上まで満遍なく鍛えよう。

普通歌手は歳を重ねるごとに声帯が硬くなってしまい、高音を出しにくくなるもの。けど、僕は腹筋下部まで鍛えているおかげで、デビュー当時と比べてトップノート(最高音)が全音で2つほど上がっている。同業者にビックリされるけどね。

Q 鶏胸肉に飽きた。オススメのタンパク源は?

同感だなぁ。僕も一時期は鶏胸肉とささみばかり食べ続けたので、飽き飽きして受け付けなくなった。

いまはジビエや、カジキマグロやタラなどの魚類などからタンパク質を摂っている。なかでもオススメなのはカンガルー肉(ルーミート)。野生のカンガルーの肉だ。

野生のカンガルーは体脂肪率3%前後のアスリートボディ。ルーミートも低脂肪高タンパクで、体脂肪を落とす共役リノール酸もリッチだ。

手に入るのは、オーストラリアから届く冷凍食品。冷凍肉を水に浸けて一晩かけてゆっくり解凍し、ドリップを出すのが美味しくするコツ。あとはローストビーフを作るように表面を焼き、アルミホイルで包んで余熱で火を通す。

味わいは馬肉に近い赤身肉のテイスト。試してみて!

Q トレーニング前のウォーミングアップに割く時間がもったいない。

いやいや、もったいないと思ったらダメでしょ。

僕は1日おきにジムに行くけど、毎回基本には忠実。肩甲骨や骨盤の動きを良くするウォーミングアップを欠かさないし、ベンチプレスの前には重りを付けないシャフトだけで10回ほどの予備動作を行ってから、本格的に鍛え始める。

これで怪我のリスクが下がるし、正しいフォームで効率的に鍛えられるんだ。終了後はピラティスなどで姿勢を整えて、サウナで汗を流しているよ。

僕も過去に経験して悔しい思いをしているけど、故障してトレーニングしたくてもできなくなる時間が、いちばんもったいない。何事もベーシックは疎かにしないこと。

Q チートデイがないと頑張れません。ダメですか?

チートデイのおかげで頑張れるなら、それはそれでいいじゃない。

僕自身は、チートデイは設けていない。せっかく鍛えたのに、それでカラダの絞りが甘くなるのは許せないから。そういえば、お酒もほとんど飲まなくなったなぁ。

ラーメンやケーキが食べたくなる瞬間もあるよ。眠る前の空腹時は、マニアが二郎系ラーメンを食べている動画を探して観たりしている。食べたくならないかって? いや、僕に代わって誰かが食べてくれていると思うと、それで満足できるんだ。

Q お腹が割れたら、次はどこを鍛えるべき?

お腹が割れても、他の部位がゆるゆるではカッコ悪いよな。

男性はとくに、腹筋を含めて、目立つカラダの表側ばかり鍛えたがる傾向がある。胸の大胸筋、肩の三角筋、上腕の二頭筋、太腿の大腿四頭筋などだね。僕もかつてはそうだったけど、カラダは表側も裏側もバランス良く鍛えるべき

いまは背中の僧帽筋や広背筋、三角筋のリア(後部)、太腿後ろ側のハムストリングスなども忘れずにトレーニングしている。表裏のバランスが整うと軸がしっかりして姿勢が良くなり、より動けるカラダになってライブパフォーマンスの精度も上がってきたという感覚がある。

種目が増えてくると一度にこなせなくなるから、日によって鍛える部位を変えるスプリット・ルーティンを取り入れるといい。僕は胸まわり、背中まわり、肩と腹筋、下半身という4つのルーティンを1日おきにやるようにしている。それに有酸素は毎回プラスしているよ。

Q 筋トレで疲れて仕事に全力で取り組めません。

本来なら仕事をバリバリやっても疲れないカラダを作るために、筋トレが役立つはず。疲労回復と栄養補給が足りないのかな。僕はトレーニングのおかげで、思い切り仕事ができている実感がある。

ひと世代前のエンタメ界は、怠惰な生活をしている不良がカッコよく、ヘルシーな生活をするのはカッコ悪いという風潮が残っていた気がする。近年その意識が大きく変わり、良い作品を届けるには、カラダを健康に保つべきだと考える人が増えた

僕はこの業界に30年いるけど、西川貴教として再始動してまだ4年目。新人のつもりで、20〜30代に負けないパフォーマンスをファンたちに見せたい。同世代のステージをたまに観ると、若い頃より動かなくなっている人がほとんど。

大汗かいてステージ狭しと暴れ回る僕の公演と同じチケット代だと考えると、「すごくコスパがいいな」と思ってしまう(笑)。コスパが悪くても、今後も僕は自分のやりたいことをやるだけ。そのためにトレーニングがある。

Q 肌が汚くて鍛えても上裸に抵抗が。美肌になるには?

ありがたいことに、肌がキレイだってよく言われる。とくに熱心にスキンケアしているわけじゃないから、遺伝なのかな。

食生活の影響も大きいかもしれない。筋肉と同じように肌も食べたもので作られているから。僕の食事はほぼ自炊だし、ジャンクなものは一切食べない。食事が満足に摂れそうにないときは、お弁当と水筒を持参してコントロールしている。

でも、肌がキレイなのは、いいことばかりではないよ。ベストボディのときは、自分の美肌に悩まされた。キメが細かすぎるおかげで、体脂肪率4%まで絞ってもふっくら見えてしまい、唇が切れるくらい水を抜いてもカリカリに仕上がったボディにならなかったんだ。モスト・マスキュラー(僧帽筋や肩の大きさ、腕の太さを強調するポーズ)が決まらず、全然勝てる気がしなかった。

そして筋トレよりも減量よりも苦しめられたのは、タンニング。その年から肌を褐色に見せるボディカラーリングが禁止されたので、タンニングで焼くほかなかった。色白なので、上手に焼くのにかなり苦労したよ。

Q 一体何歳まで鍛えるべきなのか、悩んでいます。

僕は今年で51歳だけど、ベストボディには60歳以上のレジェンドクラス、プラチナクラスがあり、僕より年上のシニアたちが多く参加していた。彼らの姿を目の当たりにすると、この先もフィットネスにはずっと真剣に向き合い続けないといけないと改めて考えさせられた。

トレーニングに年齢制限はない。何歳になっても取り組めるし、努力すれば必ず報われる。自ら年齢制限をする必要はないよ。

僕はいまだに夢半ば。やりたいことが山ほどある。いつまでも夢を追いかけたいから、その土台となるフィジカルは、いくつになっても整えておきたい。だから、一日でも長くトレーニングを続けるつもり!

取材中のメイキング動画もどうぞ!

取材・文/井上健二 撮影/山城健朗 スタイリスト/菱沼將人(Deep-End) ヘア&メイク/浅沼 薫(Deep-End)

初出『Tarzan』No.809・2021年4月22日発売

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