沈黙の臓器「肝臓」の働き、知っていますか?|肝臓ケアの五つの噺
肝臓は、生きていくために最低限必要な基礎代謝量のうち21%を占めている。肝臓は代謝界随一のマルチプレーヤー。多芸な肝臓の5つの噺から、その多様な働きを学ぼう。今回は知っているつもりの「肝臓の働き」について。
取材・文/井上健二 イラストレーション/ニシワキタダシ 取材協力/栗原 毅(栗原クリニック 東京・日本橋院長)
初出『Tarzan』No.806・2021年3月11日発売
噺の枕に「沈黙の臓器」の真実の姿を知っておこう。
肝臓は、別名「沈黙の臓器」。日頃意識する機会は少ないから、手始めにざっと概要を把握したい。左の手のひらをお腹の右上に置いてみよう。そこが肝臓の在り処。左葉と右葉に分かれており、左葉は右葉の4分の1ほどの大きさしかない。重さは成人男子では1.2〜1.5kgもあり、人体で最大の臓器である。
肝臓=レバー。食べるレバーが血の固まりであることからわかるように、肝臓は血液に富むのが特徴。
肝臓に入る血管は門脈と肝動脈。門脈は消化管で吸収した栄養素を含む血液、肝動脈は多くの酸素を含む血液を肝臓に供給する。
供給量は前者が70%、後者が30%だ。肝臓内の血液は肝静脈を通り、腹部と下半身を貫く下大静脈に合流。全身へ送られる。肝臓を構成するのは、2500億個以上の肝細胞。中心静脈を軸として放射状に規則正しく並び、肝小葉というユニットを作る。
肝臓が担っている主な機能をおさらい。
肝臓は2000種以上の酵素を使い、500もの仕事を担う体内の代謝工場。働きは大きく3つだ。
肝臓の3つの機能
- 栄養素の代謝:糖質、タンパク質、脂質の3大栄養素をはじめとする栄養素を代謝する。糖質をグリコーゲンとして蓄え、糖新生で糖質を作る。
- 有害物質の解毒:有害な物質を分解したり、排泄しやすい形に変えたりして無害化する。アルコールの分解と代謝、薬物の分解と代謝を行う。
- 胆汁の生成:脂質を乳化させて吸収を促す胆汁を作っている。胆汁は胆嚢に蓄えられており、必要に応じて十二指腸へと分泌される。
1つ目は、栄養素の代謝。消化管から吸収した栄養素は門脈から、体内で生じた栄養素は肝動脈から流れ込む。肝臓は糖質などからグリコーゲン、脂肪酸から中性脂肪やコレステロール、アミノ酸からタンパク質などを合成する。
2つ目は有害物の解毒。消化管と肝臓が門脈で繫がるのは、肝臓で真っ先に有害物を処理するため。アルコールも人体には有害なので、肝臓で無害化される。
3つ目は胆汁の生成。肝細胞は1日に1Lほどの胆汁を合成する。胆汁は胆囊で濃縮後、十二指腸へ分泌され、摂った脂肪を乳化して消化・吸収しやすくし、ビタミン&ミネラルの吸収を助けている。
肝臓の働きがわかったところで、次回の噺はそんな肝臓の天敵「代謝を下げる脂肪肝」についてお届けする。