• 【加齢のトリセツ】実は、日本人の10人に1人が持っている!? 神出鬼没の「胆石症」
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2021.03.28

【加齢のトリセツ】実は、日本人の10人に1人が持っている!? 神出鬼没の「胆石症」

胆石症実
症例の多い胆囊結石の大多数を占めるコレステロール胆石保有者は、脂っこい食事の1~2時間後に胃の周囲、みぞおちあたりに強い痛みを感じることがある。また、就寝中に寝返りを打つと結石が動き、胆囊管の開口部に近づくことで起きることもある。背中や右肩に関連痛が発生することも。

自覚症状がなく、医療の網をすり抜けてしまう胆石。胆囊だけでなく肝臓、膵臓にも悪影響を及ぼすことがある。我慢すればそのうち治まるなんて軽く考え、生活の改善や受診を怠ると、痛いツケが!

石ができても無症状のケースも。

自覚症状は皆目ないのに、健康診断の腹部エコー検査で“石ができてます”と驚きの宣告。症状はないため経過観察になったものの、放っておいて大丈夫? なかには激痛に見舞われる人もいるというが…。

肝臓で作られる胆汁が流れ、十二指腸内に放出されるまでのルート、胆道のどこかで石ができ、痛みだけでなく、ときに生命に関わる重大事態を招くのが胆石症。立派な石が成長しても、まるで無症状の人もいるため、統計調査で実態を把握するのは困難だ。

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「国民基礎調査」(厚生労働省)に基づく推計総患者数では、1990年度までは増加が報告されている。その後、減少傾向が報告されているが、無症状の患者は受診しない可能性が高い。水面下では増えているのだろう。一説には日本人の10人に1人は胆石を持っているという。
出典/『平成29年患者調査』(厚生労働省)

だが、医療機関からの報告でいくらか傾向は見える。確認された胆石症は胆囊由来のものが過半数を占め、総胆管結石を合わせれば100%近くに達する。

胆石症実
総胆管結石症の中には胆囊結石からの落下胆石も含まれている可能性がある。胆囊結石はこれよりもずっと多いかもしれない。
出典/「胆管結石の疫学と病態」(正田純一、海野倫明/胆道24巻1号 127~134, 2010)

なぜ胆石はできるのか?

そもそもなぜ石ができるのか? それには胆汁の役割と成り立ちを知るのが近道だ。胆汁はコレステロールやレシチン、胆汁酸や赤血球由来の色素、ビリルビンなどを材料に肝臓が合成する。

食事で摂った脂質、糖質の消化を円滑に進めるため、胆汁はこれらの栄養を分解し、膵液の消化酵素を効きやすくする。胆囊は胆道の途中で胆汁を溜め、5~10倍の濃度にまで濃縮する。

胆汁の中にコレステロールが多いと、この濃縮過程で析出することがある。胆囊結石の多くはこうして生まれ、成長する。胆管内に細菌感染が起こると、白血球(好中球)がこれを処理しようとして分泌した物質が核となり、ビリルビンとカルシウムを材料に結石を生じることもある。

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胆汁と膵液は十二指腸への出口=十二指腸乳頭部を共有する構造になっているため、ここを結石が塞ぐと膵臓にも悪影響が及ぶことがある。

軽い発作は胃痛にも似ている。

コレステロール結石とビリルビン・カルシウム結石で症例のほとんどを占め、肝臓内の胆管内に生じる結石は1%程度とされる。そして、胆石が胆囊管付近に存在していると、食後の胆囊の収縮の際に、筋肉によって胆石が胆囊頸部にはまって胆囊の内圧が急上昇し、激しい痛みを生じることがある。これが胆石発作だ。

だが、時間がたち筋肉の収縮や炎症が解消して胆石が動きやすくなり、胆汁の流れが再開すると、発作が見事に鎮まることも。

少し耐えれば痛みが去ることを知った人は、受診しない可能性もある。また、軽い胆石発作は胃の痛みと判別が困難なので、ますます実態の把握は難しくなる。

患者の追跡調査では、診断後すぐ何らかの症状の出ることはあっても、中長期的には鎮まっていくとする報告もある。

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無症状胆石の保有者に有害な症状の発生するのは診断後の1~3年が最も多く、経過観察期間が長くなるほど合併症の発生頻度は低下するという報告もある。

だが、胆石を持っていることは間違いなくリスクだ。時間がたっても胆石が動かず、胆道のどこかを塞ぎ続けると、胆汁の成分が刺激となって胆囊に炎症が起こったり、胆汁によって流されなくなった細菌は爆発的に増えかねない。特に胆管炎は血中に細菌感染が広がりやすく、発熱や黄疸の出ることがあり、対応を誤ると意識障害、ショック症状、敗血症や多臓器不全症候群にも発展しうる。

また十二指腸への出口、十二指腸乳頭部近く(共通管部)では総胆管と主膵管が合流する。ここを胆石が塞ぐと、行き先を失った膵液が膵臓に逆流し、急性膵炎を招くことも。

いまはまだ無症状でも、胆石があるとわかっているなら単なる経過観察にとどめず、治療を検討するのもおすすめだ。

服薬、手術も選択肢だが…。

一般的な胆石症の治療は薬物療法手術の2つだ。10~15mm未満の小さいコレステロール胆石には胆汁酸の一種、ウルソデオキシコール酸を処方することがある。胆汁酸を補うとコレステロール胆石を少しずつ溶かせるからだ。なお、15mmを超える大きな胆石が、胆管内で微動もしないような場合は、体外衝撃波結石破砕療法で胆石を砕いてから服薬・内視鏡治療という手法もある。

胆囊内の胆石は手術による胆囊摘出だ。胆石発作を起こしたことのある患者には推奨される。胆囊を全摘すると濃縮されなくなるため、胆汁としての機能は低下する。そのせいで、脂っこいものを食べるとお腹が緩くなる人も現れるが、これは食事の仕方次第で乗り越えられる。

ただし、こうした処置で症状が治まっても、胆石のできやすい体質や生活を変えない限りは再発も考えられる。欧米ではコレステロール胆石ができやすい人には5つのFがあるとされてきた。Forty(40代)Female(女性)Fair(白人)Fatty(肥満)Fecund(多産婦)だ。

日本人にはぴんと来ないものもあるが、ここからぼんやりと見えてくるのは、不活発で運動不足のライフスタイル。細菌感染が引き金の胆石症もあって、生活習慣病とは言い切れないが、活発な生活は(少なくとも)胆囊を揺り動かし、胆汁を攪拌するだろう。揺れ動く液体の中で結晶はできにくい。運動は副作用のない予防薬だ。心ゆくまで存分にどうぞ!

取材・文/廣松正浩 イラストレーション/横田ユキオ 取材協力・監修/吉良文孝(東長崎駅前内科クリニック院長、サイキンソーCMEO、日本消化器学会専門医)

初出『Tarzan』No.805・2021年2月25日発売

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