マメな糖質補給なくしてル・マンでは勝負できない。レーシングドライバー・中嶋一貴の“適量糖質”
人は糖質なくしては生きていけない。とはいえ、何も考えずに好き放題摂り続けるのはコンディションやパフォーマンスを下げるだけ。各界のトップランナーたちはどんな糖質の摂り方をしているのだろうか? 今回はレーシングドライバー・中嶋一貴さんにインタビュー。
取材・文/黒田創 撮影/大嶋千尋
初出『Tarzan』No.804・2021年2月10日発売
レースによって摂り方が変わる。
2018~20年にかけて世界3大レースの一つであるル・マン24時間レースで3連覇を達成した中嶋一貴選手。肉体的負荷が大きい耐久レースを乗り切るには、糖質の摂り方にも気を使う必要がある。
「長時間のレースで何より怖いのがエネルギー切れと脱水症状。水分と塩分、糖質をコンスタントに摂らないと知らず知らずのうちに集中力が鈍ってしまい、思わぬミスに繫がってしまうんです」
耐久レースの場合、必ずスタートの2時間前までにはパスタなどを摂り、胃でしっかり消化させてから車に乗り込む。レースは時速300kmの世界。カラダに強烈なG(加速度)がかかるので、食べたものをちゃんと消化させることを意識する。
アイドリングタイムは、マッシュルームソースごはん。
「ル・マンは3人のドライバーがいて、3時間程度乗ったら交替し、約6時間休む。これを3回繰り返します。アイドリングタイムでは疲労回復を考えると3時間は寝ておきたいので、車を降りたらシャワーを浴び、ご飯にマッシュルームソースをかけたものなど、ここでも消化吸収のいい食事を流し込むように食べます。
それから仮眠を取ると次の出番まで1時間半。スタッフとの打ち合わせなど準備で忙しいですし、乗る直前は基本的に何も食べません」
走行中は給油などでピットインした際にゼリー飲料を摂ったり、車内に搭載されているドリンクをチューブから飲むなどして糖質を補給する。
「中距離のスプリントレースでは合間に食事を摂らないので、意識するのはレース前の早めの段階で消化のいいものを食べるぐらい。耐久レースでは糖質も水分も、とにかくマメに補給することが大切ですね」