糖質は敵じゃない! 「太らない」食べ方の基礎知識
時間、順番、温度を利用すると、糖質が強い味方になる!
取材・文/石飛カノ 撮影/山城健朗 イラストレーション/東海林巨樹 取材協力/吉谷佳代(管理栄養士・桑原塾)
初出『Tarzan』No.804・2021年2月10日発売
自分に必要な糖質の量を知り、質のいいものを選ぶ。さらに食べ方をひと工夫すれば糖質はよきエネルギー源となり、むやみに避けたり恐れたりする必要はまるでなくなる。
例えば1日3食を食べるタイミング、または食べる順番、そして食べるときの温度。この3つの条件を踏まえれば丼やハンバーガー、なんならでっかいおにぎりだって口にして構わない。
糖質コントロールはもはや0か100かの話ではない。ようは太らない食べ方の知識をどれだけ持ち合わせているかどうかにかかっている。現代人、とくにおこもり生活の今は食べても溜め込まず、しっかり使い切るテクニックが必須と心得よう。
① 時間栄養学で悪→良に変化!
一日の食事のタイミングは時間栄養学を活用する。脳とカラダに備わった体内時計を地球の時間軸に合わせて食べれば、太る心配は無用。
朝起きたら太陽の光を浴びて脳の体内時計を覚醒させる。朝食に糖質はマスト。目的はインスリンの分泌を促し、これによってカラダ末梢の体内時計をリセットすること。できればタンパク質もしっかり摂りたい。こちらはタンパク質に含まれるインスリンと似た働きをするペプチドが、やはり末梢の体内時計をリセットさせるから。また、タンパク質を摂ることで体温が上がれば、日中の代謝アップも期待できる。
朝食のブースターを利用すればランチは基本的に何を食べてもオッケー。摂取した糖質は黙っていてもエネルギーとして消費される。
また、日中は脂肪合成を促す時計遺伝子タンパク、ビーマル1が減り夕方3〜4時頃に最小限となる。おやつを食べるリミットはここまで。
その後はカラダの代謝が低下する副交感神経モードにシフトする。つまりここからは食べたら太る時間帯。就寝3時間前までには控えめ糖質で夕食を済ませたい。で、朝までしっかり絶食することで翌日のコルチゾール分泌による交感神経モードに速やかにスイッチできる。
② 順番を変えて糖質を恐れない。
ダイエッターにとってベジファーストはもはや常識。理由は食物繊維が血糖の急上昇を防いでくれるから。食べ順はそればかりではない。タンパク質や汁物ファーストも今日からぜひ、取り入れたい。
肉や魚などのタンパク質を先に摂取すると、小腸からGLP―1という消化管ホルモンが分泌される。すると、胃の運動を抑制して消化スピードを緩やかにすると同時に、膵臓に作用してインスリンの分泌を促す。つまり、ゆっくり吸収される糖質をインスリンがそのつど必要な組織に運んでくれるのだ。
また、スープやコーヒーなど温かい飲み物を最初に口にすると、胃の温度が上がり消化酵素が働きやすくなる。ゆっくりと、でも確実に消化が進めば血糖値が急激に上がるリスクが低下するというわけだ。
ハンバーガーだってコーヒーから始めてタンパク質や野菜の具を先に食べ、最後に炭水化物のバンズをいただけば、まず太らないはず。
③ 温かいはおいしいが、冷たいは太らない!
ごく最近まで、でんぷんはブドウ糖に分解され、小腸から100%吸収されると考えられてきた。ところが近年、でんぷんの一部は消化されずに大腸にまで送られることが分かってきた。これをレジスタントスターチという。レジスタントとは「酵素抵抗性」、酵素反応で消化吸収されないでんぷんという意味だ。
レジスタントスターチにはいくつか種類があるが、そのうちのひとつが冷えた状態のでんぷん。
米にはアミロースとアミロペクチンという2種類の分子があり、炊く前は分子が整然と並んでいる。これをβでんぷんといい、この状態では消化酵素が作用しにくい。水を加えて炊飯するとα化といって分子が枝分かれし、消化酵素によって消化吸収されやすくなる。
ところが炊いたごはんを冷やすと再び炊く前のβでんぷんの構造に近くなり、その一部はレジスタントスターチとして大腸に至る。基本的に体温より低ければレジスタントスターチは含まれると考えていい。大腸に届いたレジスタントスターチは腸内細菌のエサになり、糖質なのに食物繊維のような役割を果たすのだ。冷や飯食らい、上等!