穀類を食べるなら「白よりも黒」を選ぶべき4つの理由
カラダのことを考えるなら、白米より玄米、白パンよりライ麦パン、うどんよりそば、お馴染みのパスタより全粒粉パスタ。それって、なぜ?
取材・文/石飛カノ 撮影/山城健朗 イラストレーション/東海林巨樹 取材協力/吉谷佳代(管理栄養士・桑原塾)
初出『Tarzan』No.804・2021年2月10日発売
毎食だからこそ気にすべき。
主食に含まれる糖質、でんぷんはブドウ糖の鎖が長い分、体内に吸収されるスピードが砂糖などより若干遅い。だから、適量であれば口にしても太るリスクはそれほどない。
確かにそう。でも、砂糖を含むスイーツがたまのごほうびだとすると、主食は毎日毎食口にするもの。どうせ食べるのなら一歩進んで、よりカラダにいい作用が期待できるものを選びたい。
数字とにらめっこして選択眼を磨く必要はなし。白いものより黒いものを選べばいいだけの話。白米より玄米、白パンよりライ麦パン、うどんよりそば、お馴染みのパスタより全粒粉パスタ。
白より黒がお得な理由は以下の4つ。理解すれば黒贔屓になるはず。
理由① GI値
黒主食は吸収速度が遅く、余分な脂肪が溜まりにくい。
そもそも同じ原料なのに、なぜ白と黒の主食が存在するのか? 答えは穀類の「精製」というプロセスにある。
米を例にとってみよう。収穫した稲にはカサカサした籾殻がくっついている。この籾殻を取り除いたのが玄米だ。さらに、玄米から果皮や胚芽、ぬかを取り除いたものが白米。玄米が着ている服を脱がしていくのが精製という作業だ。服を着込んだままの穀物は黒く、丸裸にされた穀物は白いというわけ。
で、この色の違いがカラダへの吸収スピードの違いにそのまま繫がる。カラダにどれだけ速やかに吸収されるかを示した指標をGI値という。ブドウ糖の吸収速度を100とした相対数値で示されたもので、この数値が高いほどカラダにスピーディに吸収され、その分血糖値の急上昇を招きやすいと考えられている。
右の表をご覧の通り、GI値が低いのは米もパンも麺も白より黒。血糖値が急上昇すればインスリンの大量分泌が促され、脂肪合成が進むというのはもうご存じの通り。
主食をがっついて食べがちな腹ぺこ男子ほど白より黒を選ぶのが正解だ。
理由② 食物繊維
黒い主食の食物繊維が、腸内環境を整え脂肪を燃やす。
ではなぜ、白米より玄米、白より黒い主食の方がGI値が低いのか。取り除いた果皮、胚芽、ぬかといった部位に多くの食物繊維が含まれているからだ。玄米に豊富に含まれているのは水に溶けにくい不溶性食物繊維。水分を吸収して膨らむという特性があり、消化に時間がかかるためGI値が低くなるのだ。玄米の食物繊維量は白米の3倍以上もある。
さらに、食物繊維はヒトが持っている酵素では分解できない。米のでんぷん成分は胃から小腸に送られて体内に吸収されるが、食物繊維は小腸からそっくり大腸に送られていく。その結果、便のカサを増して腸の蠕動運動を促すことで便秘の改善にも繫がる。
では、吸収されずエネルギーにもならない食物繊維の役割は、糖質の消化吸収スピードを遅らせたり便秘の解消に尽きるかといえば、否。
食物繊維は大腸の腸内細菌、なかでも善玉菌のエサになる。その分解過程で作られる短鎖脂肪酸と呼ばれる物質が近年大注目されている。短鎖脂肪酸が腸の免疫機能を強化したり、脂肪燃焼を促したり中性脂肪の過剰な蓄積を防ぐことが分かってきたのだ。小麦の食物繊維でも同様に短鎖脂肪酸の恩恵は期待できる。よって、白よりも黒。
理由③ ビタミン・ミネラル
代謝や生命活動に必要な栄養素がぎっしり。
精製というプロセスで取り除かれる胚芽は植物の根や芽になる部分。ぬかは米の本体と胚芽を覆っている薄い皮。これらの部分には食物繊維だけでなく、ビタミンB1やビタミンEといったビタミン類、カルシウムやマグネシウム、鉄などのミネラルも豊富に含まれている。
ビタミンB1は糖質をエネルギーとして消費する際に働く補酵素。これなしには糖質を速やかにエネルギーとして活用できない。朝食にふわふわの白パンだけを食べて一日をスタートしても、脳もカラダもイマイチしゃきっと働かないはずだ。ビタミンEはカラダの酸化を防いでくれる抗酸化ビタミン。さらには血行を促すといった作用も期待できる。
カルシウムは骨や歯の形成に欠かせないのはもちろん、筋肉の収縮や神経伝達に関わっている。そのカルシウムが機能するためにはマグネシウムのサポートが必須。
白い主食はこれらの栄養素をみすみす捨てているようなもの。白米より7分づき米、7分づきより5分づき、さらには3分づきと精製度が低いほど栄養価は高い。最強はむろん玄米。
理由④ ロウビキ
玄米の栄養価はそのまま、白米並みの食感を実現。
玄米が健康にいいのは分かるけど、ボソボソした食感が苦手。鳥のエサ感が強くてイヤ。とくに男性に多いのが、こうした声。
玄米の食べにくさの原因は、表面を覆っている防水性の高い「ロウ」のせい。玄米はいわば稲の種子。発芽条件が整うまでむやみに水を吸って発芽しないよう、ロウでガードされているのだ。一方の白米はぬか層とともにロウも取り除かれているから、吸水性もよく滑らかな口当たりで食べやすいというわけだ。
玄米はある意味で完全食品だが、吸水性がいまひとつなので長い浸水時間が必要。しかも、せっかく備えている栄養素の吸収もあまりよろしくない。そこが唯一の弱点だった。
この弱点を克服したのが「ロウビキ玄米」と呼ばれる新たな玄米。
表面を覆っているロウを取り除くことで白米と同様、簡単に炊けるうえ、白米に劣らない食感を実現した。もちろん、玄米に含まれる栄養価はそのまま。
ボソボソした食感が苦手、胃腸が弱く玄米を消化吸収しにくいという場合は、ロウビキタイプを利用する手も大ありだ。