ぎっくり腰の緊急マニュアル。なぜ? なに? どうすればいい?
ドイツでは「魔女の一突き」とも呼ばれる急性の腰痛。筋肉の質、骨密度の低下にも注意が必要。
取材・文/神津文人 イラストレーション/コルシカ 取材協力/伊藤和憲(明治国際医療大学鍼灸学部教授)
初出『Tarzan』No.803・2021年1月28日発売
目次
無理に動かすと損傷が大きくなる!
寝違えと同様(詳しくはこちらの記事を参照:寝違えた時の緊急マニュアル)、急性の腰の痛みは、ストレッチやマッサージで筋肉に負荷をかけるのはNG。炎症や損傷が大きくなる可能性が高いからだ。凝りなどには適している低周波治療も、ぎっくり腰の発症直後は避けたほうがいい。
もちろん、無理に動かすのも症状を悪化させる場合が多い。まずは、安静にして筋肉を動かさず、患部を冷やし痛みが治まるのを待つのが得策だ。
① まず患部を冷やしておとなしく。
ぎっくり腰を起こした場合、筋肉や靱帯が炎症を起こしているケースが多いため、患部を冷やして安静にすることが大切。氷囊を使ったアイシングに加え、抗炎症作用のある冷湿布も有効。入浴して温めるのは逆効果になる可能性が高い。
② 軽症であれば1〜2日で動けるようになる。
筋肉が軽い炎症を起こした程度のものであれば、1〜2日で痛みが和らぎ、日常生活程度の範囲で動けるようになる。もちろん、激しいスポーツや長時間に及ぶデスクワークなどの無理は禁物。様子を見ながら少しずつ腰を動かしていこう。
③ 痛みが和らいだら“温め”に切り替える。
2〜3日が経過し、痛みが引いてきたらアイシングから温めに切り替えて、血流を促して損傷部分の修復を図ろう。入浴も効果はあるが、温度、時間ともに十分ではなく、深部を温めにくいのでカイロや温湿布などを活用するとよい。
④ 数日安静にしても痛みが続くなら病院へ。
痛みが激しいぎっくり腰の場合、炎症や損傷が大きいので2〜3日のアイシングをしながらの安静が必要。それでも痛みが変わらない、もしくは状態が悪化していると感じたら、病院へ。画像診断を受けて、医師の判断を仰ごう。
⑤ 痺れがあったら、神経にトラブルが起きた証拠。
下半身のどこかに痺れを感じる場合、おそらく神経まで影響が及んでいるので、病院で画像診断を受けよう。ぎっくり腰の影響で神経に障害が起こると、頻尿、尿が出ないという症状が出ることもある。いずれにせよ、医師の判断を仰ぎたい。
⑥ 痛みだけなら、関節や骨の損傷をしていることも。
数日安静にしても痛みが強く、かつ痺れがない場合、関節や骨に損傷が及んでいる可能性が高い。病院へ行き、レントゲンやMRIなどの画像診断を受け、状態を確認しよう。慢性腰痛に移行することもあるので正しい対処が必要となる。
予防には運動習慣と質の高い食生活が不可欠。
ぎっくり腰とは、急性腰痛の一種。腰を支える筋肉、靱帯、関節などに急激な負荷がかかり、損傷や炎症を起こしたものだ。軽度な炎症程度であれば大きな問題はないものの、場合によっては筋断裂や圧迫骨折、椎間板を傷つけたことによる痺れなどを起こすこともあるので、甘く見てはいけない。
重い荷物を持ったときなど、急激に強い負荷がかかれば、誰しもぎっくり腰を起こす可能性はある。しかし、ぎっくり腰を起こしやすい人がいるのも事実だ。
筋肉量が減っていたり、加齢によって関節や椎間板などが変性していたり、筋肉が冷えていると、ぎっくり腰を起こす可能性が高くなる。運動不足、運動後のケア不足、ストレス、栄養不足などで筋肉の質が落ちている人もリスクが高い。
筋肉はゴムのようなもので、劣化して硬くなっていれば、当然損傷しやすい。子どもがぎっくり腰になったという話を聞かないのは、筋肉の質が高く、柔らかいからなのだ。また、骨密度が低下していると、急激な腰への負荷が原因で、圧迫骨折を起こすこともあるので注意。