独自のヒール形状で“快適に山を下れる”〈HOKA ONE ONE〉の《テンナイン ハイク GTX》
進化系ヒールが山歩きを変える。新感覚ハイキングブーツ。
取材・文/黒田創 イラストレーション/羽鳥好美
初出『Tarzan』No.802・2021年1月4日発売
ホカ オネオネの思想。
後ろ側にヒール部分が大きくせり出したこのシューズ。外見もかなりのインパクトだが、実際に履くとそれ以上に驚かされる。厚底ランニングシューズやトレイルシューズでおなじみ〈HOKA ONE ONE〉(ホカ オネオネ)の新作ハイキングブーツ《テンナイン ハイク GTX》だ。
特殊な自然環境で履かれるハイキングシューズ作りにおいては、安定感やホールド性など、メーカーやモデルごとにある種の「思想」が存在する。常に独自のテクノロジーを追求するHOKAのそれは“いかに快適に山を下れるか”。
山を登る人ならご存じかと思うが、ガチガチに足をホールドしてソールもゴツいシューズは、上りはよくても下りは接地時に踵や爪先がいちいち引っかかる感覚がある。一歩一歩ブレーキをかけながら下りるようで、少なくとも気持ちよさはない。
拡張された踵の意味。
このブーツは見ての通り、ヒールが後ろに拡張されている(履くと横への広がりもかなりある)。これは水上を走るホバークラフトのスカートからヒントを得た独自のHubbleヒール形状と呼ばれ、面積が広い分、従来のシューズよりも接地が早く、山道でも安心して体重を預けられる。感覚的には硬すぎず軟らかすぎず、クッションと反発のバランスのよさが気に入った。
もうひとつ特筆すべきが、踵着地からの体重移動のスムーズさ。爪先と踵の引っかかりを排除した構造で、滑らかに、転がるように重心を移動しながら前へと進むことができる。上りはもちろん、特に下りの際にその気持ちよさを感じることができるだろう。
ソールとアッパーにも要注目。
アウトソールには軽さとタフさを両立したヴィブラム社製のソール構造を採用し、5mmの突起を設けている。これが砂地や階段、木の根っこ、岩場、雨天時など、あらゆる路面状況で強いグリップ力を発揮し、拡張されたヒール構造と相まって安全性と快適性を強化している。ソールの重量を軽くしたことで全体の重量も軽減され、片足504g(27.0cmの場合)とかなり軽い部類だ。
アッパーは水濡れから足を守るGORE-TEX ®ファブリクスの防水メンブレンを裏地に採用し、内側も防水仕様になっているため雨もへっちゃら。足首まわりを囲むパッドはしっかり厚く、守るべきところは守ってくれる安心感をひしと感じる。
滑らかに着地し、スムーズに前進できるこのハイキングブーツ。低山からガチ登山まで、山に行くのがもっと楽しくなる一足だ。