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ケースワークで学ぶ、間違いだらけの「トレーニング」

健康によかれと思って頑張っていても、その方向がとんちんかんだと、苦労は多いのに効果はさっぱり。どころか、むしろ悪化するばかり…、なんてことに。今回は、いろんなメソッドにすぐ鞍替えしたり、走りすぎでオーバーワークになったり、そんな間違った「トレーニング」について。

ケース・その1「トレーニングの目的は“SNS”、流行りのメソッドは全部試してます!」

カリスマ女性トレーナーに憧れてジムに。学生時代に運動歴はないけれど、いろんな方法を体験できたらリア充? #筋トレ女子でインスタにもアップして、フォロワーを増やすのが夢です。

スマートフォン

何となくやってきて、自分の挙げた重量を記録するでもなく、単に上げ下げしておしまい。筋トレに来ているはずなのに、エアロのクラスで見かけたり、何が目的やら挙動不審の人がいる。

「一瞬モデルさんかと振り返るほどキレイで、おしゃれなスパッツを穿きこなしている若い女性の中に、同時に我流で糖質制限でもやっているのか、病的に痩せている方を見かけることがあります」(桑原塾の桑原弘樹さん)

少しでも体重が増えることを異様なまでに嫌い、ルーティンらしきものを必死にこなす点ではストイックながら、その方法は大混乱。

「挙がらないのに、勝手に重量を増やそうとするから挙がらない。それが面白くないからパーソナルトレーナーについてみたり、人から聞いた評判で加圧トレーニングに鞍替えしてみたり。あっちにふらふら、こっちにふらふら」

知的好奇心は旺盛ながら、間違った解釈で突っ走り、すぐに飽きる。

「一種の中毒、依存症かもしれません。こういう人がランニングに転じると、運動による活性酸素を浴びまくる派に合流することもあります。また、特定の栄養素に過大な期待を抱き、サプリメント依存症に陥る潜在的可能性も大きいでしょう」

とりあえず、自分が挙げる重量よりも、まずは食事を改善して、自分自身の重量を少し増やした方が健康に近づけるだろう。スパッツはうまく穿きこなせても、見る人によってはただただイタい枯れ枝です。お大事に…。

ケース・その2「目標の『月間走行距離』をクリアするため、意地でも走らなきゃ!」

大変だ! 今月はまだ300kmしか走れていない。今日は天気が悪いけど、レインウェアを着て走ろう。きょうも足首と膝がしくしく。このごろガス欠なのか気力が……。

トレーニングマシン

オーバートレーニングに陥る危険性は持久系の方が高く、脳内麻薬、β-エンドルフィンの快楽の虜になる人も少なくありません」(桑原さん)

はじめは趣味のジョギング程度だったはずが、いつしかとりつかれたように走るようになり、10~20分ではおさまらず、月間走行目標を掲げて非現実的な距離を追ってみたり。

「月間1,000km? 自動車ですか、車検に行きなさい(笑)。こういう人は栄養補給休息が追いつかなくなっています。活性酸素による酸化障害も見た目に表れてきます」

スリムに引き締まっているようでもギスギス、がりがり。屋外で焼くからキレイな焼け方をしていない。関節の故障も増える。周囲の人はその変貌に気づいているが、それを本人には言い出せない。当然、本人は気づかない。

「職場ではアクティブでポジティブ、仕事もバリバリできる人が多いから、会って話している間は若々しさも感じますが、実年齢より10歳以上も老けて見えたりします。本人は年齢より若く見られていると信じ込んでいますが、一般的に持久系をやり過ぎている人は、おじいちゃんに見えやすいですね」

確かにパフォーマンスは走ることによってしか上がらないから、こういう人にとって走ることが練習の中心になるのは仕方ない。だが、夢中になるあまり、そもそも何が目標で走り始めたかを見失いがちになっている。

「サブスリーなのかサブフォーなのか。単に毎日走るだけなのか。よりよく走るには、補助運動としてウェイトトレーニングもやるべきだし、短距離・瞬発系のトレーニングもいいでしょう」

走らない日を作ることも重要だ。休息はさぼりではなく、休息という名のトレーニングと思うべし。

「栄養補給が消費に追いつかず、日ごろ体内のグリコーゲンが枯渇気味のランナーもざらに見かけます。一般的にランナーの体内のグリコーゲンの量は、走る習慣のない人よりも実は少ない。えてしてランナーはスタミナのない不健康なカラダになりがちです」

そのカラダで長距離を走ろうとするから、脂肪燃焼にシフトする前にグリコーゲンを使い果たしてしまい、失速したり完走を逃す。市民マラソン大会でよく見かける風景だ。

「こうしたカラダで走る人は、ビフォーよりもアフターのケアを入念に行うべきです。スタート前はインスリンショックを避けるため、糖の補給には注意も必要ですが、アフターには一刻も早いリカバリーが求められます。単糖類、二糖類も恐れず摂ってください」

ケース・その3「毎日ジムにいるけど、カラダには目立った変化なし……」

今日も来ている、あのおじさん。ベンチプレスと胸まわりをフリーウェイトで少しだけ。 何年も来ているのに、カラダは全然変わらない。他の時間帯でも見かけるし、このジムに住んでない?

ジム

「ジムに行く時間を取りにくいのが多くの人の悩みでしょうに、いつ行っても必ずいる人がいます。よく観察してみると、実は毎日派はすごく多い」(桑原さん)

やらないと気が済まないのか、少々体調が悪くてもやってくる。そして、やることはいつも一緒。昨日と同じ部位を今日も頑張る。けれど、オーバートレーニングにはならない。

「決まり切ったメニューに適応し切っていて、もはやターゲットの部位には効いていないから毎日できるんでしょう。歯磨き、ラジオ体操のような決まり事をやっているのと同じです」

毎日やりたければ、せめて分割法でターゲットを変えながら攻めるべきだし、そもそも回復・成長のための休息も設定しないと疲労が溜まって、まさかのケガの呼び水になる。

「けれど、こういう人は中高年に多く、ジムでも職場でもなかなか周囲の意見に耳を貸そうとしません」

こうした我流の穴に落ちる人は、往々にしてボディメイクに対する知的好奇心が乏しく、サプリメントやプロテインの知識も貧しかったりする。

「疲労回復にクエン酸を勧めたら、水同然に薄めて飲んでいました。クエン酸は一定量が必要だから、あまり薄めては意味がありません。ケチるぐらいなら、水でいいのでは?」

まぁ、現状維持が目標ならば、ちゃんと達成できてますけど。

取材・文/廣松正浩 イラストレーション/安ヶ平正哉 取材協力/桑原弘樹(桑原塾主宰、NESTA JAPANプログラムディベロップメントアドバイザー)

初出『Tarzan』No.799・2020年11月5日発売

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