ビーチスポーツ「フレスコボール」で、目指せ100ラリー|フィットネスジェーン・高見奈央が行く vol.3
『ターザン』読者投票で選ばれたフィットネスジェーンこと高見奈央さん。第三回目のフィットネスはフレスコボール。「それってどんなスポーツ?」と?マークが浮かぶ人も多いはず。もちろん高見さんだって聞くも初めて、やるも初めて。いざ、チャレンジング!
取材・文/黒田創 撮影/角戸菜摘 スタイリスト/高島聖子
目次
訪れたのは杉並区の永福体育館。
フィットネスジェーン・高見奈央さんの連載三回目はフレスコボール。どうやらビーチスポーツらしい、との情報は聞いていた高見さん。でも集合場所は京王線下高井戸駅からほど近い、東京都杉並区立永福体育館。
「あれ? 海じゃなくてここでビーチスポーツ???」
高見さんが疑問に思うのも無理はない。実はこの永福体育館、都心部では珍しくビーチコートが開設されていて、ビーチバレーをはじめ、さまざまなビーチスポーツが行えるというナイススポット。
東京五輪に向けてビーチバレー海外代表チームの事前合宿の招致も目指しているそう。早速コートに行ってみるとご覧の通り、目にまぶしいほどのきれいな砂浜が広がっているのだ。
「すごいですね〜! 都心の近くにこんな場所があるなんて!」
高見さん、さっそく着替えて白砂の感触を楽しんでいる。
さて、ひとしきり白砂を楽しんだところでフレスコボール入門。今回教わるのは「日本フレスコボール協会」の代表理事、窪島剣璽さんだ。
フレスコボールってどんなスポーツ?
「フレスコボールは、ブラジルはリオ・デ・ジャネイロ発祥のビーチスポーツ。僕が以前ブラジルを訪れた際にビーチで楽しむ人たちを見かけ、以来虜になり日本で広めようと2013年に協会を設立しました。多くの人に楽しんでもらいたいとさまざまな普及活動を行っています」(窪島さん)
卓球のラケットを3回りくらい大きくしたサイズのラケットと、テニスボールくらいの大きさのボールを手にする窪島さん。
「わかった、それを打ち合うんですね?」(高見さん)
「2人それぞれがラケットを持ち、1個のボールを互いに打ち合ってラリーする。これが基本です。と、言ってもテニスやバレーボールのようにネット越しに相手を打ち負かす競技ではありません。逆に相手の打ちやすい所へとボールを打ち返してあげて、とにかくラリーを続けること。それがフレスコボールなんです」(窪島さん)
「じゃあ、2人が息を合わせて協力し合わないと成り立たないスポーツなんですね」(高見さん)
「おっしゃる通り、言うなれば“思いやりスポーツ”で、相手が打ち損じてもカバーしてあげることで試合を進行させます。最近ではコミュニケーション・デザイン・スポーツなんて呼ばれ方もしますね。試合のときはいかに2人が協力しあい、レベルの高いラリーを続けているかを審判が採点する。球技の中では珍しい採点競技なんです」(窪島さん)
「へ~! ラリーを続けたうえでちゃんと見せ場を作る。それが勝ちにつながるんですね。奥が深いなあ~」(高見さん)
使うのはラケットとボールのみ。
まずはラケットとボールに慣れるところから。ラケットを真上に向けてボールをポーン、ポーンと弾ませる高見さん。
「バレーボール経験者なのでボールを扱うのはけっこう得意なんです。ほら、どうですか?」(高見さん)
次はラリーにチャレンジ!
基本ルールではペア同士の間は最低7mだが、練習ということで4~5mからスタート。窪島さんからのボールに返す高見さん。だけど最初はなかなか相手の正面にボールが行かない。
「思っていたより全然難しいです。つい打ち返そうとして、強いボールになっちゃうんですよね。どうやったらやさしくフワっと返せるんだろう…」(高見さん)
悩める高見さんに窪島さんからアドバイスが。
まずは基本的な打ち方を覚えよう。
「テニスやバドミントンのイメージでラケットを振っちゃう人、結構多いんです。ラケットの面を相手にまっすぐ向けて、なるべく手首を返さずにボールを押し出すようにポン打つ。これでやってみてください」(窪島さん)
アドバイス通りに来たボールをポンと押し出すように打つ高見さん。するとラリーも長く続くように。さすが、呑み込みが早い!
初めてラケットを握ってから1時間、動きがサマになり、ラリーも50回、60回といい感じに続き始める高見さん。ラリーが続くのは見ていても気持ちが良く、お互いのコンビネーションを観察するのも楽しい。フレスコボールは見て楽しむスポーツでもあるのだ。
「最初は全然だったけど、コツが掴めてきてパートナーとの息も合うようになってくると無茶苦茶楽しい。これ、ずっとやっていたいかも(笑)」(高見さん)
ふと横を見ると、速い球をバンバン打ち返し合いながら延々とラリーを続けるスゴ腕プレーヤーが。彼らは練習に来ていた神奈川の〈逗子フレスコボールクラブ〉と東京の〈Fun Lovin’ Carioca〉のクラブチームメンバーなのだ。
「すごい! あれだけ思い切り打ち返してもラリーが続くんだ…」(高見さん)
その正確かつスピード感あふれるプレーに見惚れる高見さん。
「すぐにあのレベルになるのは難しくても、ちょっとしたテクニックで“魅せる技”を身につけたり、さらにラリーを続けられるようになれるはず。せっかくですからそのあたりも練習してみましょうか」(窪島さん)
もう一歩進んだテクニックの練習を。
逗子フレスコボールクラブの斎藤亮太選手が教えてくれたのは、素手でボールを掴む練習。斎藤さんが軽く放るボールを手でキャッチする高見さん。一体、これが何の練習に…?
「これはラリーを続けるための練習。素手でボールを確実にキャッチすることで、ラケットを正面に向けてスイートスポットでボールを受ける、つまり一番いい球を相手に返す感覚を養えるんです」(斎藤さん)
納得。確実にボールを受けて、あとは真正面に向けて押し出す。この基本動作が身に着けば相手が受けやすい球を常に返すことができるというわけ。最初はミスっていた高見さんも次第にキャッチできるようになってきた。
「なるほど、まずはしっかり懐にボールを呼び込んでから返すんですね。私、最初はどうボールを返すかばかり考えていて“受ける”なんて考えもしなかった。目から鱗です!」(高見さん)
フォアに慣れたらバックにも。
「次はバックハンドの練習です。カラダの正面や持ち手の反対側にボールが飛んで来たときは、ラケットの裏側、バックハンドを使うとスムーズに返せます」(斎藤さん)
「いきなりバックハンドなんてできますかね?」とちょっとドキドキの高見さん。
「基本は最初にやったフォアハンドと同じです。確実にラケットの真ん中で受けるようにして、あとは手首を返さずに押し出す。このイメージです」(斎藤さん)
何度か練習するとスムーズに返せるようになってきた高見さん。テクニックの幅が広がってきた!
“股越し”という技もあるんです。
「ボールを低めに返されたらこんな技もアリです」と足の間からラケットを出して打ち返す斎藤さん。すごいテクニック!
「できるかなあ?」と言いながら器用に片脚を上げて「ほっ!」とボールを返す高見さん。さすがの運動神経です。
「こういうトリッキーな打ち方やさっきやったバックハンドは、試合だと加点対象になるんですよ」(斎藤さん)
「そっか、レベルが上がるとそういうテクニックも組み込んで高得点を目指すんですね。おもしろい!」(高見さん)
2時間の体験の締めくくりに、100ラリーを目指す!
初体験で基本の打ち方とちょっとしたテクニックを学んだ高見さん。これだけでも十分満喫という内容だが、そこで窪島さんがひとこと。
「最後に連続100ラリーを目指しませんか?」
「えっ!」となる高見さん。
「フレスコボールは100ラリー続けば中級レベルと言えます。高見さんは呑み込みが早いし、さっき60ラリーはできたので100を目指してみてもいいんじゃないかと」(窪島さん)
「うわ!いきなりプレッシャーが…。でも確かに100ラリーできたら最高ですもんね。高見、挑戦します!」(高見さん)
言うは易く行うは難し、とはよく言ったもの。始めたばかりで100ラリーを目指すのは、そうすんなりいくはずもありません。数字を意識するあまり力が入ってしまい、時にはイージーミスも。
30回、50回とラリーが続くと「お、今回はイケるんじゃない?」と周りも期待。もちろん打ち合う2人も同じ気持ち。でもやっぱり簡単じゃない。少し打ち損じると無情にもボールは砂浜にポトリ。
「あ~~悔しい!」地団駄を踏む高見さんの心境、痛いほどわかります!
何度か惜しいところまで行っても60ラリーの壁を越えられなかった高見さん。夏場で、しかも地面は足をとられる砂。当然ながら疲れもたまり、カラダも少しずつ動かなくなってくる。でも10数回のチャレンジで、ついに85ラリーまで到達!
「うわ~、今のは100まで行けるかと思った!でもここまできたからには絶対達成するまでやめません!」(高見さん)
何度となくラリーを一からやり直す。そして…。
「86、87、88、89、90!」
その場にいる全員が固唾をのむ。慎重に、慎重に打ち返す高見さんペア。
次の瞬間、その時は訪れた!
「95!96!97!98!99!……100!!!」
気力も体力もそろそろ限界、と思われたものの、最後の最後に集中力を振り絞って見事100ラリー達成!
「よっしゃあああああああ! やったああああ! 嬉しいいいいいいい!」(高見さん)
何度もジャンプして全身で喜びを表す高見さん。見ているこっちも思わずもらい泣きしそうな100ラリー達成! おめでとう! マジで感動!
「いや~、100ラリー本当に行けましたね! こんなにしんどいと思わなかった(笑)。その分達成感が半端ないです!!」(高見さん)
喜びつつも、パートナーへの感謝も忘れない。
「100ラリーってコミュニケーションがとれていないと絶対に続かないし、2人の集中力が切れないことも大事。私ひとりじゃなく、そのすべてがかみ合っての記録だから嬉しさもひとしおですね!」(高見さん)
改めて、フレスコボールの感想は?
「今までやってきたバレーボールと全然感覚が違って、ボールを相手のいない場所ではなく相手の返しやすいところに打つ。真正面に相対している相手と協力して、しかも採点競技というのが本当に面白いなあって」(高見さん)
やっていくうちにフレスコボールの魅力に気が付いたようだ。
「最後の最後はボールを見るより、パートナーの目と動きに集中して気持ちを渡してあげる感覚でした。自然と手首を返さなくなりましたし、それがラリーが続く一番のポイントなのかもしれませんね。
私が崩れればパートナーも崩れるから、自分よりパートナーのためにちゃんとプレーするし、球技だけどまるで二人三脚というか…。もちろん楽しいんだけど、それだけじゃなくて気持ちを通じ合わせる新しい感覚のスポーツなんです」(高見さん)
窪島さんから見て、高見さんのプレーはどうでしたか?
「正直、一日でここまでできるとは思いませんでした(笑)。ラケット競技自体が初めてと言っていましたけど、運動神経がいいので呑み込みも早いし、欠点もすぐに修正できる。最後の100ラリー達成は素直に感動しましたよ! 高見さんはすごくセンスがあるので、機会があればまたチャレンジしてほしいですね」(窪島さん)
フレスコボールは身体接触もなく、女性でも始めやすいwithコロナ時代のソーシャルディスタンススポーツでもあるんです、と窪島さん。
「いま日本の競技者人口は約3千人ですが、うち4割程度が女性です。力がモノをいうスポーツではないので男女ミックスのペアも普通に組めるのが理由としては大きく、高見さんのように初心者でも上達しやすい。そもそも運動量が多いですし、全身運動なのでダイエットにも効果的。事実、ブラジルではダイエットスポーツとして広く受け入れられています」(窪島さん)
新型コロナの状況にもよるが、観戦の機会があればぜひ体感してみてほしい。フレスコボールは見るのもやるのも絶対楽しいはず。 最後にここだけの話。約2時間砂浜の上を駆けずり回った高見さん、翌日目が覚めたところ…?
「全身がバッキバキで金縛りにあったように起き上がれませんでした…。砂浜のスポーツはそれだけ筋肉を使うってことですね…(笑)」 (高見さん)
INFORMATION
フレスコボールの日本選手権が9月に開催!
「ビオレUVアスリズム フレスコボール ジャパンオープン2020」
開催日:2020年9月19日〜20日(2日間)
開催場所:千葉県千葉市美浜区(稲毛海岸)※予定
フレスコボールの日本国内最高峰の大会。日本代表選手を決めるJFBAランキングも大きな影響がある大会で、国内のトップレベルの躍動感のあるフレスコボールを見ることが出来ます。詳しくは日本フレスコボール協会公式HPにて。