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「死んで蘇る」を3回繰り返す。おうちで簡単“イス坐禅”のやり方

新しい生活様式が叫ばれる今、ココロのトレーニングも重要だ。自宅で簡単に行える「イス坐禅」にトライ!

椅子でできる坐禅。

全身アクビをしたら、その流れで坐禅へと進む。無理して結跏趺坐などする必要はない。椅子に坐っての椅子瞑想でスティルネス体験は十分できる。

「リラックスというのは何かをやることによってもたらされるのではありません。リラックスの邪魔をすることをやめることでもたらされます。坐禅というのは動いて何かを足すのではなく、止まってやめていくというアプローチなんです」

カラダを調える、呼吸を調える、そして心を調える。坐禅の最中はこの3つの柱を実感しながら、あるがままの状態に身を委ねる。

「坐禅は決して苦行ではなく、心地よいもの。今いるところは安全な部屋の中ですから、安心して自分を開いてみましょう」

イス座禅の準備。

① 椅子を選び、集中できる環境を作る。

椅子座禅

まずは椅子の準備。リモートワークで使っているキャスター付きの椅子は不安定なのでNG。肘が当たらないよう肘掛けがない椅子が好ましい。背もたれはあってもなくてもよし。座面はほどほどの硬さがある方がベターだ。

また視界に入るところに物が溢れていると集中できないので、少々お片付けを。

② 膝の位置に注意して椅子の高さを調節する。

椅子座禅

椅子に坐るときは座面の半分より手前に浅く坐り、背もたれには寄りかからない。骨盤を立てて坐ることが重要だ。

さらに、膝の位置にも注意したい。お尻が沈んで膝が座面より上に来ないように。膝は座面の高さかやや低い位置、太腿が床に対して平行より上を向かないように。両足は肩幅の広さで床にしっかりつける。

③ 手のポジションと目線、どちらも楽に自然に。

椅子座禅

手は楽な状態で構わない。もしできるなら、右手を下、左手を上にして重ねる。両手の親指をつけて脚の付け根の中央に手の甲を置く法界定印というポジションをとる。

目は閉じずに自然に開いて行う。前方に視線をそっと落とすようにすると、開きすぎず細めすぎない自然な塩梅になる。口は閉じ、舌を上顎につける。

坐禅の前にカラダをほぐす。

ただでさえストレスの多い現代生活、ここへ来ての「新しい生活様式」でますます身心に緊張が溜まっている状態。といっていきなり坐禅でリセットというわけにはいかない。なぜなら、心とカラダの準備が整っていないから。

「今、煮詰まっている人たちは、おそらくみぞおちが硬くなっていると思います。だまされないようだまされないよう疑い深くなって身も心も閉じている。外気を吸い込まないようにしているので息が浅くなり、みぞおちが硬くなっているはずです。これをほぐすことから始めましょう」

深い呼吸から全身リラックスまで4つのステップで心とカラダの緊張を解いていく。なにはともあれ、とにかくワーク。

ステップ① 「死んで蘇る」を3回繰り返す。

みぞおちの場所は胸骨の一番下から指4本分下がったところ。指でみぞおちに圧をかけながら思い切り息を吐いていく。これは「野口整体」の邪気吐出法という深呼吸の最たる方法。

椅子座禅
【みぞおちの位置】/一番下の肋骨を辿っていくと肋骨の接合点の胸骨がある。胸骨の下から指4本分下にあるのがみぞおち。指でぐーっと押すとえずくように感じる場所。まずはここに触れてみよう。

「カラダの中にもやもや溜まっている邪な空気を吐き切るイメージ。一度死んでみるつもりで息を全部吐き出します。“もう死ぬ”というところまで息を吐いて、しばらく待っていると息を吸いたくなります。カラダが生きたければ自然に息が入ってきて蘇る。1回目はトライアル、2回目はチャレンジ、3回目は仕上げのつもりで行いましょう」

邪気吐出法のやり方

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椅子座禅

正座をして、みぞおちを両手の指で押さえる。

椅子座禅

指でみぞおちに圧をかけ、口を大きく開けて息を吐きながら、上体を前に倒す。

椅子座禅

さらに上体を深く倒して、息を限界まで吐き切る。息絶えるつもりで。

椅子座禅

肺の中の息をすべて吐き尽くしたら指の力を抜いてカラダを起こす。

ステップ② 癒やしの空気を下腹部に満たす。

邪気を吐き切った後は、正気を吸い込む。こちらは正気吸入法。

「自分を癒やす滋養のある空気がまわりにたくさんある、とイメージします。それをストローで吸い込むように自分の中にありったけ入れていきます」

パンパンに吸い込んだ空気を唾を飲み込むようにして下腹に下ろす。邪気を吐き出して空っぽになった空間を、正しい癒やしの空気で満たすのだ。最後に「ウームッ」「大丈夫」と口に出し、カラダの動作を伴った「大丈夫」という情報をメンタルに届ける。下腹=丹田の充実感が心を落ち着かせてくれるはず。

正気吸入法のやり方

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椅子座禅

腹から息を吐いてお腹を凹ませる。

椅子座禅

ストローを吸うように口をすぼめ、胸いっぱいに息を吸って止める。

椅子座禅

パンパンになった空気を唾を飲み込むようにして下腹に下ろす。最後に「ウームッ」と声を出す。

ステップ③ カラダ、心、頭の変化を観察する。

椅子座禅
下腹部に温かさを感じる、もやもやした気分が晴れた、一瞬心配事が頭から離れていたなど、正気を吸い込んだ後はじっくりとリフレクション。

邪気吐出法と正気吸入法を行った後は、心とカラダの変化を観察する。これをリフレクションという。

「カラダの感覚、感情や気分、そして思考。カラダ、心、頭をリフレクションして自分の中に落とし込んでいきます。行う前と後でささやかでもポジティブな変化が見られたら、もっとやってみようという動機づけになります」

ステップ④ 全身を自由に動かし、大きくアクビをする。

椅子座禅
特別なルールはなし。顎がはずれるほど大きく口を開いてアクビ。口だけでなく全身を伸ばし、最も心地よいと感じる感覚に浸る。

最後のステップは全身を使ってアクビをする。坐った姿勢でも仰向け姿勢でも立って行ってもいい。目を閉じてカラダの内側を感じながら、心地よく自由に伸びをしながら大きくアクビ。手、足、首、腋の下、腰、カラダ中を自由に使って一番心地よい感覚を探す。そして一気に全身の力を抜いて数秒キープ。

「巣ごもり生活では頭と手、目しか使っていません。だからカラダの中に余剰エネルギーが溜まって落ち着かない。深呼吸と全身リラックスをすることで、ようやく心がスティルネスの方向に向かいます」

実践! イス坐禅。

椅子座禅
自分のカラダに手紙を書くと、意識的にそうしようとしなくても姿勢が調う。あとは深くゆっくりした呼吸を続け、次々とやってくる感覚や思考をすべて迎え入れる。

① 調身|カラダを支える力を受け入れ、大地との繫がりを回復させる。

「背骨の前側で体重を支えてください」「肋骨の一番上の骨を水平に保ってください」「恥骨とおへその距離を広げてください」「顎をほんの少し引いてください」と自分のカラダに手紙を書くつもりで姿勢を調える

足の裏を床、座骨を椅子にしっかりつけて体重を預ける。すると預けた分だけカラダを支える力が床や椅子からやってくるので、それを迎え入れる。

「メンタルワークでは閉じている自分を開いて、やってくるものを迎え入れることが大事。ガードを固くするほど新鮮なものが入ってこないので、内側でものが腐っていきます。閉じてばかりいると息が詰まります。姿勢を調えて自分を開き、大地との繫がりを回復させましょう」

② 調息|カラダを立てて呼吸し、空気との繫がりを回復。

坐禅中はとにかくゆっくりとした呼吸で。とくに吐く時間をできるだけ長く維持することがポイント。できれば吸ったときの倍の時間をかけて吐き出す。呼吸は鼻からでも口からでもどちらでも構わない

「姿勢が調っていると、座骨の深いところまで自然に空気が入ってきます。人は怖いと感じると前屈みになり、みぞおちで空気がブロックされます。また、姿勢をまっすぐにするぞ!というエゴが入ってくるとやはりみぞおちが硬くなってしまいます。余計なことはせずにカラダを立ててただ息をする。入ってくる空気を邪魔せずに全部迎え入れましょう」

調息はいってみれば、空気との繫がりの回復だ。

③ 調心|五感の情報と思考すべてを迎え入れては流し去る。

最後の調心で、感覚との繫がりの回復をはかる。音、光、匂い、空気の流れ、冷たさ温かさ。目、耳、鼻、肌に届く感覚をひとつ残らず迎え入れる。たとえば、嗅覚の感覚を研ぎ澄ませるためにお香を焚いて坐禅を行うのもひとつの手

「感覚だけでなく不安や恐怖といった感情や思考も迎え入れます。リアクションを起こさず、不安が来ているなと迎え入れるとそのうち去っていきます。自分が空っぽのスペースになれば何が来ても大丈夫。すべてやってきて去っていきます。音や匂いといった感覚に比べ、思考というのはなかなか離れていかないものですが、練習次第で流せるようになります」

怯まず練習あるのみ。

PROFILE
 藤田一照(ふじた・いっしょう)
藤田一照(ふじた・いっしょう)/1954年、愛媛県生まれ。曹洞宗僧侶、翻訳家。東京大学大学院で発達心理学を学ぶなか、坐禅に出合い禅道場に入山。17年間にわたってアメリカで坐禅を指導。曹洞宗国際センター前所長。

取材・文/石飛カノ イラストレーション/高橋将貴

初出『Tarzan』No.790・2020年6月25日発売

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