80代では、ほぼ100%の人が罹患。
相手が逆光を背負ったら、まぶしくて顔が見られなかった、などという経験のある人には、「老眼ですっかり目が弱くなったなぁ」とぼやきの一つも出るところ。かもしれないが、これは老眼の症状ではなく、白内障が始まっている可能性を否定できない。
白内障の症状は人によってさまざまで、景色がかすんで見えたり、物が二重に見える人がいれば、眼鏡が合わなくなる人もいる。逆に老眼鏡がいらなくなる人もいる。
もしや?と思う人は下のチェックリストに答えてみよう。意外と身に覚えのある項目はないだろうか?
白内障は外から入る光を屈折させて通す水晶体が濁る老化現象。水晶体のどこが濁るかで、さまざまな見え方の違いを生み出す。白内障は50代から増え始め、80代ではほぼ100%の人にやってくる 。少子高齢化の進んだ日本にとっては国民病の最たるものだ。
原因は加齢そのものをはじめ、紫外線による酸化ストレス、ステロイド薬の副作用、糖尿病の合併症、アトピー性皮膚炎の患者が無意識に目の周りをかきむしってなど、いろいろといわれている。
なかには疲れ目のマッサージと称して、眼球を押す習慣から発症する人もいる。実は眼球を押すのは非常に危険な行為で、眼球心臓反射を起こすと徐脈、不整脈、最悪の場合心停止をもたらすことがある。癖になっている人は、即座にやめるべし。
残念ながら白内障に効果的な治療薬はなく、初期に進行を緩やかにする目的で内服薬か点眼薬を処方されることがある。
だが、進行を完全に止めることはできないので、いずれ手術で水晶体を摘出し、眼内レンズを挿入して治すことになる。
事実上、治療はこの手術だけなので、日本では毎年120万人以上が手術を受けているし、高齢化に伴い件数は増え続けている。これは全手術の中で最多であり、術式が確立していて安全性は非常に高い。
手術は局所麻酔(注射ではなく、点眼が多い)で行われ、ほぼ無痛。要する時間も15~25分程度と一般的には非常に短く、日帰りで行っている医療機関も多い。先進国では手術で確実に治る眼疾患だが、世界全体で見ると、白内障はいまなお人類が失明する最大の原因だ。
いかに安全性が高いとはいえ、手術である以上リスクを伴う。合併症の発生は少ないが、眼圧に異常を及ぼしたり、網膜剝離の呼び水になることもある。生活に支障や不快がなければ、手術を急ぐことはない。
眼鏡などで調節することで何とかやりくりできて、そのまま天寿をまっとうできるなら、それも一つの選択肢。ただし、手術を恐れるあまり先送りにして、水晶体の混濁が著しくなってからだと、手術に要する時間が長くなったり、1回の手術では済まなくなることがある。手術で治す意思があるなら、時期は担当医とよく相談しておこう。
抗酸化物質の摂取と近視回避が予防策だ。
手術で視力を取り戻すと、中高年の場合、高血圧や不眠症が軽減することがある。よく見えないままでいると、万事消極的になって新しい情報に接することが減り、将来的には認知症のリスクを増やすともいわれている。目がよく見えるというのは、非常に大切なことなのだ。
少しでも白内障を遠ざけたければ、目の老化を予防するに限る。つまり、前回の老眼予防でお勧めしたこととほぼ同じ。ホウレンソウやブロッコリーで摂ったルテインを、目にしっかり届けること。
水晶体の酸化障害を抑えるには、抗酸化物質はたっぷり摂ろう。通常食で摂り切れなければ、サプリメントでビタミンA、C、Eをはじめ各種ファイトケミカルも怠りなく。
本や雑誌を読むときは、目から30cmは離すように。至近距離で物を見ることは近視を募らせる。軽い近視でも白内障を罹患するリスクは1.6倍になり、強い近視だとなんと12倍になるという報告がある。近視の予防は白内障の予防につながる。
なお、手術を受けた人はそれ以前よりもクリアなレンズを取り戻すことになる。ということは、紫外線対策はいままで以上に重要になる。網膜保護のためにもサングラスの効果的活用は習慣化しよう!