公園&階段を活用したHIITで全身の脂肪を燃やす。
痩せたい人に最適な「ミトコンドリアに効く筋トレ」。
1日3回の簡単体操で「立ち姿勢」を正す。
1分で疲れを解消する前腕マッサージ&ケア。
「ハンドスタンド」自宅で肩が鍛えられる!
お腹周りも絞れる“自宅ピラティス”にトライ。
筋肉を刺激して、むくみを解消せよ!
痩せを取り巻く7つの危険信号とは?
  • 公開:

【加齢のトリセツ】スマホが手放せない現代人に「初期老眼」が進行中

朝起きてから寝るまでスマホやパソコンを操り、近距離の対象ばかりに目を凝らす日々。気付かぬうちに、目には疲労が蓄積していく。その日の疲れはその日のうちに解消すべし!

絶対に、まだのはず! そう自分に言い聞かせても、帰路の電車内でスマホを持つ手は、朝の出勤時と比べて微妙に遠くなっている…ような。

これこそ、いま働き盛りに猛威を振るう“スマホ老眼”、別名・夕方老眼だ。

本格的な老眼が始まる前の一時的な生理現象だが、見え方が悪くなる理由は中高年の老眼と同じ。

スマホ老眼、2つの理由。

初期老眼
老眼でない人の毛様体筋は力むと収縮し、水晶体につながる毛様体小帯が緩み、水晶体は自然と膨らみ、近距離にピントが合う。逆に毛様体筋が緩むと毛様体小帯は引っ張られ、水晶体は薄くなり、遠くにピントが合う。

2つの理由で老眼はやってくる。目は光を角膜と水晶体で屈折させ、網膜の上に像を結ぶことで物を見ている。だが、加齢とともに水晶体を膨らませる毛様体筋の筋力が低下し、薄く広がったままになりがちとなる。これはいわば遠くを見る状態。

また、年とともに水晶体が硬くなるので、近くを見るために水晶体をぐんと膨らませ、屈折率を上げるのは難しくなり、結果的に近くが見えにくくなるのだ。だから、スマホを持つ手がより一層遠くなる。

年齢別水晶体硬度調査
加齢で水晶体は徐々に硬くなり、調節能力は低下。/読書に必要な屈折度は約3~4ジオプターなので、水晶体が硬くなって、この数値に届かなくなる40代以降は多くの人が老眼を感じる。
出典/“Aging of the Human Crystalline Lens and Presbyopia”Adrian Glasser, Ph.D., Mary Ann Croft, M.S., Paul L. Kaufman, M.D.

さらに目の問題だけでなく、情報伝達ルートである視神経に老化、劣化が進めば、見え方への影響は避けられないし、脳の情報処理能力が低下しても視力低下は起きる。

まだ本格的な老眼世代でない人に、こういう現象が起きるのは往々にしてスマホ、パソコンなどのディスプレイを近距離で長時間凝視したため。疲労しきった目はピント調節機能が低下してしまうのだ。

目の疲労と近距離の見えにくさを自覚するなら、本気で目を休ませる生活スタイルに切り替えよう。パソコン作業は60~90分ごとに10~15分程度の休憩を入れるべし。休憩時には目を温めても回復につながる。

加熱による調整力改善調査
温泉気分で目を温めれば、疲労も和らぐ。/約5時間のPC作業後、約40度の蒸しタオルで10分間温めるとピント調節能力が改善した(花王と鶴見大学の共同研究)。
参考サイト/ウェルラボ

初期老眼は「まだ戻れる」。

もちろん、ブルーライトをカットするのもよい工夫。初期老眼の段階で対処すれば、まだ回復力があるので改善は可能だが、放置すると本格的な老眼に直結する可能性あり!

目を休める以外にできる自助努力も実はいろいろあり、昔から推奨されてきたシンプルな方法に、遠近の対象物に対し、交互にピントを合わせて見るというものがある。

遠くを見ることで目の緊張をほぐそう
遠くを見ることで目の緊張をほぐそう。/目から30cmほどの距離にペンを持ち、そこにピントを合わせたら、2m以上先の目標物にピントを合わせる。交互に10回程度繰り返す。眼鏡やコンタクトレンズはしたままで。初期老眼の改善にお勧め。

また、下記のガボール・アイ(初級者向け)を試してほしい。ホログラフィーの発明でノーベル物理学賞を受賞したデニス・ガボール博士考案のガボール・パッチを利用した視力回復法だ。

これを見ることで目に変化をもたらすのではなく、脳の情報処理能力を高めて視力をよくするので、初期老眼だけでなく近視にもいいとされる。カンザス大学は初期老眼21名、近視17名でこのパッチを使って実験を行ったところ、老眼の人の近見視力が平均0.3向上したという。

ガボール・アイのやり方

ガボール・アイのやり方
① 30~40cm離れた場所に貼り、右上のしま模様(ガボール・パッチ)を見る。② 形、向きとも同じしま模様をすべて見つけたら、最後に見つけたしま模様の左右いずれかのしま模様と同じものを目で探す。これを3分間程度繰り返す。疲れたらやめる。指差しはしない。眼鏡、コンタクトレンズの使用者は、使ったままで実施。最初のしま模様は目についたものから始めてもよい。

目の変化はカラダからのメッセージ。

栄養面では老化の両輪に当たる酸化、糖化を遠ざける食生活が望ましい。なかでも目の老化予防で特に問題視されるのは糖化だ。なぜか?

水晶体はほぼ水とタンパク質でできていて血管は通っていない。このため毛様体が作る透明な房水から栄養と酸素をもらっている。また、水晶体を構成する物質は生涯にわたって入れ替わることがほとんどないから、房水に糖が過多なら、糖化産物が蓄積しやすく、目の老化を加速しかねない。

また、物を見る機能のまさに中核を担う黄斑と水晶体はルテインを多く含む。ということは、黄斑と水晶体はルテインをたくさん必要とする可能性が高い。ルテインを多く含むホウレンソウブロッコリーは意識的に摂るといいだろう。

あれこれと自助努力を重ねても改善が感じられず、日常生活に不便をきたすようになったら、まず訪れるべきは眼鏡店ではなく眼科医。初期であっても老眼の近づく世代には、白内障や緑内障が自覚症状もなく始まっていることがあるからだ。

また、目以外の臓器に問題があり、その結果として見え方に変化を生じることがある。たとえば糖尿病が進んで目がかすんだり、隠れ脳梗塞で視野が欠ける、甲状腺機能亢進症(バセドー病)で眼球が大きく突き出てくるような症状を呈するなど、考えられることはいくつもある。

眼鏡店では発見が難しくても、眼科医ならこうした異変を見逃さないはず。中年が近づいたら何ら自覚症状がなくても、年に一度は眼科検診を受けるのがお勧めだ。


200%ぐらいに拡大コピーしてためしてみよう。

ガボール・アイ

取材・文/廣松正浩 イラストレーション/横田ユキオ 取材協力・監修/平松 類(二本松眼科病院、眼科専門医、医学博士)

初出『Tarzan』No.789・2020年6月11日発売

Share
Share