図解、正しいアルコール消毒方法。菌を徹底的に除去するアルコール消毒術

病原体を“持ち込まない、持ち出さない、拡げない”。感染予防の3原則に徹するため、正しく理解したいアルコール消毒について改めて学ぼう。

取材・文/門上奈央 イラストレーション/中村知史 取材協力/小林寅喆(東邦大学看護学部感染制御学研究室教授)、石鞍信哉(メディコムジャパン)

初出『Tarzan』No.788・2020年5月28日発売

消毒液は「量」ではない。

「アルコール消毒の一番の目的は殺菌。手洗いで目に見える汚れを落とした後、アルコールで除菌しましょう」(小林教授)

「即効性と速乾性に優れたアルコール消毒は感染予防対策として非常に有効です。手を洗った後のほか、食事前やトイレ後、買い物の支払い時にお金に触れた後、ゴミを捨てた後などの消毒をぜひ習慣にしてください」(石鞍さん)

手指衛生の早見表
アルコール消毒と手洗いの効用を混同しがちだが、行う目的から違う。手指衛生には両方セットで行うことが大原則。

目に見える汚れがなければ手洗いをスキップして即消毒でOK。消毒液を見つけたら使わない手はないが、かつては”清潔好き”の人以外、消毒する習慣はあまりなかったはず。使用時に留意すべきこととは。

「流れ作業的に消毒せず、規定量の液を手全体に満遍なくすり込むことを心がけましょう。逆に言えば、必要以上の量を使っても殺菌効果が高まることはありません」(石鞍さん)

「途中で手が乾いてきたら液の量が足りていない証し。全体的にすり込んだ後に、手が液体で軽く湿っているくらいが適量です」(小林教授)

正しいアルコール消毒方法。

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アルコール消毒方法その1
下まで完全に押し込んで手のひらに消毒液を取る。500円玉大くらいが目安。
アルコール消毒のNG方法
出す量をケチると手に行き渡らない。“軽いプッシュ”は厳禁。
アルコール消毒方法その2
手指全体にムラなくのばしたら、消毒液をよくすり込んで肌になじませる。
アルコール消毒方法その3
手の甲や指の間にすり込む。指の間や手の甲の凹凸もムラのないよう入念に。
アルコール消毒方法その4
両手を合わせて縦方向と横方向にすり合わせつつ、手のひら全体にのばす。
アルコール消毒方法その5
両手指を結ぶようにして指先や指の背、爪の周辺も忘れず消毒液をすり込む。
アルコール消毒方法その6
親指全体にもすり込む。反対の手で親指をつかみ、その手でねじるように。
アルコール消毒方法その7
手が完全に乾くまで手の甲や指の間などの塗りにくい所に重点的にすり込む。

正しいアルコール消毒を実行できたら感染予防には実に効果的。ただしアルコール消毒液が不足しているのが現状だ。

「手作りアルコールでも殺菌効果は十分まかなえます。アルコールの種類を間違えないことと、手指衛生に最適な70〜80%のアルコール濃度で作ることがポイント」(石鞍さん)

「環境用消毒液もあわせて用意しては。小さな容器で携帯してスマホの画面やドアの取っ手など除菌すると安心です」(小林教授)

身の回りは環境用消毒液でクリーンに。

手でよく触れる場所やモノも環境用消毒液で常に清潔に保とう。手指用と作り方は同じ。原料とする液体は、一般的に「塩素系漂白剤」と記載される次亜塩素酸ナトリウム。完成した消毒液を布につけ、汚れを拭き取る。机などを消毒する場合、予め食器用洗剤を含ませた布で汚れを落とすのがベター。


手指用アルコール消毒液を作ろう!

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手作りアルコール消毒液の材料
手作りアルコール消毒液の材料/手指衛生用のアルコールは無水エタノール。1字違いの「メタノール」は大量に使うと大変有毒なので誤用に要注意。完成した消毒液を入れる容器は携帯用のシャンプーなどの空きボトルでも代用可。
アルコール消毒液の作り方その1
ペットボトル本体の寸胴な部分に油性ペンで5本の線を引く。アルコールや水を注ぐ際の目安となるので、線の間隔は均等に。
アルコール消毒液の作り方その2
引いた線の4つ目の目盛りまで無水エタノールを注ぐ。アルコール:水の比率はおよそ4:1になるのが適当だ。
アルコール消毒液の作り方その3
水は一度沸騰させて、塩素やカルキなどを飛ばしておこう。水の粗熱が取れたら、ペットボトルの残り1目盛り分、注ぎ入れる。
アルコール消毒液の作り方その4
ボトルのキャップを閉めて上下にそっと振ってから、詰め替え用容器に移す。作った消毒液はなるべく早く使い切ること。