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2つの女性ホルモンをちゃんと知る。病気・不調を事前に防ぐチカラ

数多くのプラスをもたらしてくれる女性ホルモンは、まさにきれいと健康の司令塔。その特徴を知って、生理やエイジングの悩みも解決しよう。

エストロゲンとプロゲステロン。

女性の美容と健康を司る女性ホルモンは、エストロゲン(卵胞ホルモン)プロゲステロン(黄体ホルモン)の大きく2つに分かれる。

このうちエストロゲンは、女性の成長過程でウェストがくびれる、乳房が大きくなるといった変化が見られる第二次性徴前から分泌され始める女性ホルモン。受精卵のベッドとなる子宮内膜を厚くするという働きだけでなく、肌や髪にツヤを出すといった女性に嬉しい作用ももたらしてくれる。

「エストロゲンは他にも、コレステロール値を抑える、自律神経を安定させる、骨を強く保つといった働きがありますが、これらは意外と知られていません。エストロゲンのありがたみを感じるのは、大抵閉経後。つまりエストロゲンがなくなるタイミングです。20代、30代から女性ホルモンの知識を持っておくことで、事前に防げる病気や不調もあります」(産婦人科医の高尾美穂先生)

一方、プロゲステロンは排卵後にのみ分泌されるホルモンで、受精卵が着床しやすい状態に子宮内膜を整える役割を持つ。プロゲステロンが多い時期はイライラ、頭痛、便秘、むくみといった辛いマイナス症状が表れやすいが、これもカラダを守るための大事な作用であることを理解しておこう。

生理の異常を知る意味。

 

女性のカラダは1か月に一度、卵巣から卵子を排出する排卵が起こる。排卵後は妊娠を継続させるためにプロゲステロン分泌量が高まり、受精卵の受け入れ態勢を整えようとする。

が、妊娠していないと気付くとプロゲステロンは必要ないと徐々に減り、子宮の中に準備していた赤ちゃんのためのベッド(子宮内膜)が体外に排出される。これが生理と呼ばれるものだ。

「江戸時代の女性は人生でおよそ50回の生理を経験すると計算されていました。今はその9倍である、450回。平均寿命が延びたことや少子化が関係しているとはいわれるものの、当時と比べると明らかに生理回数が多いことがわかります」(高尾先生)

月経周期とホルモンの変化
月経周期とホルモンの変化/生理周期は25〜38日(うち変動が6日以内)が正常範囲。生理後から排卵日までの期間はエストロゲンの分泌が増え、心身ともに調子がいい時期。一方、排卵日から次の生理までの黄体期は、不調が表れやすい。体温の数値は大まかな目安と考えて。

「月経回数が増えると子宮内膜症の発生頻度が増加することが判明しており、近年増加傾向にあります」

生理の異常を察知して、隠れた病気を早期発見するには、血液検査や基礎体温の記録が有効だ。

「私たちのカラダは卵を温める雌鶏のように、排卵後は妊娠に備えて体温が上がります。0.3〜0.6度というわずかな変化でもキャッチできれば、その間はプロゲステロンが出たといえる。プロゲステロンが出る前には必ず排卵があり、排卵があるということはエストロゲンも出たことになる。つまり生理が順調だと判断することができるのです」

エストロゲンの9つの働き。

1.肌や髪の張り・ツヤを保つ。

エストロゲンの有名な働きといえば、体内でコラーゲンを作り出して肌や髪の潤いを保つ作用。“女性らしさ”という共通点でいえば、女性特有の丸みを帯びたカラダを形成するのもエストロゲンの働きだといわれている。

2.乳腺の発達を促進する。

乳腺は育児のための乳汁を分泌する大事な器官であり、その周りを脂肪が包み込むように形成されているのが乳房だ。乳汁の分泌には乳腺や腺房の発達が不可欠だが、この発達に直接的に関わっているのがエストロゲンである。

3.子宮の働きを活発にする。

初潮を迎えると卵胞と呼ばれる卵を育てる袋が育ち始め、エストロゲンが分泌される。すると子宮内膜は徐々に増殖して厚くなり、カラダは受精卵の着床に向けた準備を始める。このように、妊娠・出産に大きく関与している。

4.悪玉コレステロール値を抑える。

エストロゲンの材料は、実はコレステロールである。つまりエストロゲンが活発に分泌される間は悪玉コレステロールの代謝が促進され、その数値も抑えられる。その結果、動脈硬化などの病気にもなりにくい。

5.自律神経を安定させる。

自律神経のうちエストロゲンに関与するのは、心拍数を下げ、血管を拡張させるといったリラックス作用をもたらす副交感神経。エストロゲンの分泌が盛んな時期は副交感神経が活発になり、ストレスが溜まりにくく、感情も安定する。

6.免疫系を強化する。

エストロゲンが枯渇する閉経期に自己免疫疾患が発症しやすいことから、エストロゲンは私たちのカラダを守る免疫システムとの関わりがあることがわかっている。主な働きは、炎症の抑制や抗体産生の促進など。

7.血管の弾力性を保ち、血流を促進。

血管拡張作用により血流が促進されると、肌の血色が良くなる、冷えやむくみが緩和する、便秘が解消するといった嬉しい効果が得られる。血液の流れが悪いと、エストロゲンが必要な場所へ運ばれなくなり、不調を招くことも。

8.筋肉を維持する。

筋肉にもエストロゲンをキャッチするレセプターがあり、エストロゲンの減少とともに筋肉が萎縮することが明らかになっている。トレーニーがエネルギーを摂るべき理由は、筋肉量が増えやすいようエストロゲンをキープする意味もある。

9.骨を強く保つ。

第二次性徴前からエストロゲンが出始めるとまずは身長の伸びが止まり、次は骨密度を高くして骨を強くする働きに移行する。無月経、つまりエストロゲンがない状態が続くと骨粗鬆症のリスクの原因になるのはこのため。

取材・文/黒澤祐美 撮影/山城健朗 スタイリスト/山内省吾 ヘア&メイク/大谷亮治 取材協力/高尾美穂(産婦人科医・イーク表参道副院長)

初出『Tarzan』No.782・2020年2月22日発売

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