• 世界一の団体・WWEで“トップ”として闘い続ける、中邑真輔のトレーニング、食事、リカバリー
COLUMN
2020.03.27

世界一の団体・WWEで“トップ”として闘い続ける、中邑真輔のトレーニング、食事、リカバリー

世界一の団体・WWEで“トップ”として闘い続ける、中邑真輔のトレーニング、食事、リカバリー

全米を、そして世界を熱狂させるWWEの中心で「イヤァオー!」と叫ぶ。“キング・オブ・ストロングスタイル”、中邑選手のカラダ作りとコンディショニングに迫る。

プロレスラーから“スーパースター”へ。

世界180か国以上で放送され、スポーツエンターテインメントの最高峰とされるアメリカの団体・WWE。所属する選手たちは“プロレスラー”ではなく、“スーパースター”と呼ばれる。

これすなわち、「別格の存在のみが入団を認められる」という、WWEの矜持の表れとも言える。選手はアメリカを中心に各国からスカウトされた、規格外のフィジカルの持ち主ばかり。

中邑真輔選手
©2020 WWE, Inc. All Rights Reserved

そんな選ばれし猛者たちのなかから、真の意味で“メインイベンター”と呼ばれるのは、ほんの一握り。2016年、新日本プロレスからWWEへの移籍以降、中邑真輔選手はトップグループで闘い続けている。

煌びやかなリングでスーパースターであるために、中邑選手はいかにして心身を作っているのだろうか。

中邑真輔選手
2002年に新日本プロレスに入門し、新日本のテーゼである“ストロングスタイル”を象徴する選手としてファンの支持を集めてきた中邑真輔選手。03年に新日本の最高峰、IWGPヘビー級チャンピオンを初戴冠。2016年、WWEに移籍。7月2日大阪、3・4日横浜にて開催される『WWE Live Japan』への出場を予定している。https://wwe.co.jp/
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ロード中は、とにかく食の選択肢が少ない。

「WWEのスケジュールって、エグいんですよ(笑)。ほんと、怪我できない。新日本(プロレス)のときは、基本は団体のバスや新幹線で移動だったけど、WWEは次の会場まで車を運転して自力で行かないといけない。海外の試合も、『いついつにココに集合』ってアナウンスだけがあって、エアのチケット以外、ホテルや車は自分で手配する。そこはタフにならないとやっていけないですね」(中邑選手)

中邑真輔選手
©2020 WWE, Inc. All Rights Reserved

「ただ、肉体管理については新日時代より、しっかりできている気がします。日本には美味しいものがそこら中にあるじゃないですか。ついつい暴飲暴食してしまう。まあ、昭和のプロレスラー像への憧れもありましたね(笑)。

アメリカでは試合が終わって悠長に食事を取っていたら、とても次の街まで辿り着かない。とりあえずプロテインを摂って移動すると。着いたら着いたで、店が閉まっていて、とにかく食の選択肢が少ない」

自宅にいるときは、自炊が多い。

焼肉10人前をぺろり、などなど、プロレスラーは食の逸話に事欠かない。そういう豪快さも、プロレスラーの魅力ではある。ただ、アメリカでのロード中心の生活という“環境”に身を置くことで、食への意識は変化せざるを得なかった。

「コンディショニングを考えたら、やっぱり日本食になりますね。カロリーや栄養素を計算して、そのうえで食べたいものとなったら、もう自分で作るしかない。自宅にいるときは、自炊が多いですね。

子供にも野菜をたくさん食べてもらうために、鍋にしたりとか。ツアー中は“ミールプレップ”。冷凍のお弁当宅配サービスなのですが、“減量用” “バルクアップ用” “ビーガン用”など、いろんな種類があって、自分でカロリーやタンパク質量を設定して献立を選べる。アメリカではレスラーやボディビルダーの間で人気が高くて、自分も保冷バッグに入れて持ち歩いています。今週はこのメーカーのものにしようとか、いろいろ試しています。外食よりコストも抑えられるし、カラダにもいい。すごく重宝してますね」

中邑真輔選手
©2020 WWE, Inc. All Rights Reserved

WWE移籍当初は1日の総カロリーや摂取栄養素などもトレーナーの助言に従っていた。ただ、継続するなかで、そのメニューが日本人の自分の肉体に合うのか、最新の栄養学にどこまで則っているのか、疑問がわいてきたという。

「アメリカでお願いしたトレーナーはゴリゴリのタイプだったんですよ。めちゃくちゃ、いいヤツなんですけどね。彼が『炭水化物は絶対に摂るな』とか『1日6食タンパク質のみ』なんて言うから、それってどうなのかなって。『おまえのトレーニングメニューは採用するけど、食事は自分でやる!』って、そこからはカロリー計算をメインに調整しています。

1日2000カロリーくらい、多くて2500かな。あまりキツキツにやり過ぎると、飽きちゃうんで、そこはストレスにならないように。糖質は断然、白米。朝昼と炭水化物を抜いてカロリーを抑えて、夜に白いごはんを食べると。それぐらいのバランスがちょうどいい。三種混合プロテインにチアシードを入れたりして、タンパク質は計算して摂取しています」

筋肉は無理に大きくしない。部位ごとに丁寧に。

WWEにはいわゆるビルダー的な“ゴリマッチョ”が多いが、中邑さんの肉体はとてもナチュラルだ。しなやかさと機能性は新日時代と変わらぬ、いや、さらに高まった感すらある。過酷なロードのなか、いかにトレーニングをしているのだろうか。

「メニューはトレーナーに組んでもらっています。筋肉の量と機能を上げながら、サイズを少しずつ上げていく。無理に大きくするのではなく、本当にちょっとずつ上げていく感じですね。筋トレは部位ごとに丁寧にやっていく。最後に、HIITトレーンングで仕上げます」

中邑真輔選手
©2020 WWE, Inc. All Rights Reserved

「ロード中は、次の街へ先乗りして時間があったら、ジムを探して、そこに行くと。基本は一人。一緒に移動する選手がいても、試合スケジュールは違っていることもあるので、誰かとトレーニングすることを前提にすると調整が難しくなる。だから、ジムに“スミスマシーン”があると、すごく助かります。

あとは、その街の知り合いにツテがあれば、ボクシングジムに行ってミット打ちをやったり。でも、チェーン系のジムで、とにかくやれるメニューをこなすと。その積み重ねですね」

サーフィンには助けられている。

ロードが過酷だからこそ、フロリダ州オーランドの自宅で過ごす時間は、中邑選手の貴重なリラックスタイム。新日本プロレス所属時に始めたサーフィンへの熱は、アメリカに来てさらに高まっているようだ。そもそもサーフィンにハマるきっかけは?

「ブラジルで試合があったとき、リオのコパカバーナのサーファーたちがとにかくカラダがよくて。聞くと、みんな柔術もやっていると。ああ、それってカッコいいなと思って、当時の練習拠点であるロスですぐボードを買って。僕のサーフィンデビューはマリブビーチです(笑)。当然、洗濯機に放り込まれたみたいに波に揉まれて、ローカルたちに『どけ!』って言われて。鼻水を垂らしながら帰ったっていうのが、サーフィン初日ですね」

中邑真輔選手
©️Shinsuke Nakamura

サーフィンを語るときの、中邑選手はとにかく笑顔! まさに生活に不可欠のものになっている。コンディショニングの面での寄与も大きいようだ。

「サーフィンに助けられている部分はありますね。肉体のリカバリー的にも重要。ずっと座ったままで長時間移動して筋トレして、次の日は飛行機で寝て、現地で試合して、また筋トレして。サーフィンは全身運動だし、パドリングが肩関節のストレッチにもなる。思いっきり波に乗って疲れが引いたときには、カラダそのものが回復しています。

何より、いいガス抜きというか、メンタルヘルス的にも、サーフィンがあって良かったなと。ただ単にうまくなりたいって気持ちだけです。スマホ片手にとかありえないし、すべてを取っ払って集中させてくれる。トレーニングであり、リラックスであり、趣味でありっていうね。とにかく、大切なものですね」

中邑真輔選手
©️Shinsuke Nakamura

生まれ故郷、京都の丹後は海に面した街。オーランドからビーチまでは少し距離はあるが、アクセスしやすい環境にある。中邑選手にとって、海そのものも特別な存在であるようだ。

「海でしか経験できないことが、確実にある。フロリダの海、アトランティックオーシャンにはいろんなビーチがあるんですよ。あるビーチでは波を待っていたらイルカに囲まれたり、また違うビーチでは海面にどでかい影があると思ったらマナティだったり。ウミガメも見ますね。

どのビーチも、湘南のように混んでないのがいい。ココアビーチからちょっと南に行った、あまり知られていないビーチに行ったとき、僕とおじいさんと、あと2人くらい海に入っていたのかな。そうしたら、おじいさんが『今日は混んでるから緊張するな』って声をかけてきて(笑)。ビーチブレイクで波も読みづらいけど、とにかくのんびりしている。その感じがたまらなくいい。サーフィンはばっちりなので、あとは柔術。そろそろ再開しようと思っているんです」

中邑真輔選手
中邑真輔(なかむら・しんすけ)/1980年、京都府生まれ。青山学院大学ではレスリング部と美術部、同時に在籍。2002年に新日本プロレスに入門。同年8月にデビュー後、レスリングでの実績も買われ、ロスの道場で総合格闘技のトレーニングを積む。同年大晦日には強豪、ダニエル・グレイシーと総合格闘技ルールで闘う。新日本のテーゼである“ストロングスタイル”を象徴する選手としてファンの支持を集める。03年に新日本の最高峰、IWGPヘビー級チャンピオンを初戴冠。2016年、WWEに移籍。7月2日大阪、3・4日横浜にて開催の『WWE Live Japan』に出場予定。https://wwe.co.jp/
撮影/杉田裕一

取材・文/編集部

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