日本初のアルペンスキー金メダリストは苗場から生まれる? 超一流選手のスキー指導をレポート

"雪上のF1"と呼ばれ世界最速のスキーヤーが集まる「FISアルペンスキーワールドカップ2020にいがた湯沢苗場大会」が2月22日・23日、苗場スキー場で開催された。続く24日には超一流選手のスキー指導が直接受けられるイベントが行われ、小学5年生以上の参加者100人が大回転、回転の滑走テクニックを学んだ。

取材・撮影・文/坂田滋久

世界トップクラスのスキーヤーたちの直接指導が実現。

すごい勢いでゲレンデを滑り降りてくる。ワールドカップ出場選手の指導を受けに来た小学生、中学生、高校生らおよそ100人のスキーヤーたちの滑りは、ボーゲンぐらいしかできない『ターザン』編集部員サカタの目には、いずれも相当なレベルに見える。しかし、世界トップクラスの3人のアスリートの滑りを間近に見た彼ら、彼女らは溜息まじりに言うのだ。「すごい…」「レベルが全然違う…」「速い…」と。

Dave Riding選手
「きっと上達するから楽しもう!」と参加者を盛り上げるDave Ryding選手。

この日「Goldwin Racing Camp in Naeba」で模範の滑りを見せて、参加者にアドバイスを行ったのはFISワールドカップの回転(SL)第一シード選手のDave Ryding(イギリス)、若手有望選手で昨シーズンFISワールドカップのクラニスカゴラで大回転(GS)12位に入ったSam Maes(ベルギー)、そして日本を代表する石井智也選手(ゴールドウインSC)の3名。午前中は大回転、午後は回転の指導が行われた。

腹筋を引き締めることがスピードの条件だ!

Sam Maes選手
雪面に図を描いて参加者に説明する親切なSam Maes選手。

「ゲートがここだとすると、あなたはこのように回ってきたけれども、腹筋を引き締めてカラダが流れないようにすれば滑りがもっと合理的になるはず。もっと速くなるには腹筋を引き締めて!」などと親身なアドバイスを受けて、参加者はすぐリフトで上がり、いま聞いたことを試しながら滑り降りてくることができる。

上体が不安定だとコース取りが甘くなるから、腹筋をしっかり固めることが重要らしい。どんなスポーツも腹筋は命だ。

 

日本人スキーヤーの欠点は、ポールに当たりに行ってしまうこと。

石井智也選手
参加者の滑りを見て、身振りを交えて熱く指導する石井智也選手。

「いいね! すごくいい! けど惜しいのは急ぐあまり肩でポールに当たりに行ってること。そこを我慢して外側の脚にしっかり重心を置いて、肩でポールに当たりに行かない。そのほうが安定するし、タイムも縮まるから!」と石井選手は多くの参加者に指導していた。

「ヨーロッパのスキーヤーはポールに当たりに行く人が少ないんだけど、なぜか日本人は当たりに行く人が多いから、何度でも言い続けないと…」とつぶやいて、次の少年にも熱く指導する。「わかりました!」と答えて、少年はまた滑りに行った。

午後に回転の技術をチェックしている様子
午前中の大回転の後、昼食休憩をはさんで午後は回転の技術をチェック。午前より午後のほうが、参加者が明らかに上達しているのがわかる。

「レベルが違う…」と誰かが漏らしたが、Dave選手、Sam選手、石井選手の滑りを見ると3人とも上体が前後左右にブレない。小中高生ら100人の滑りは、それに比べれば上体が反ったり、左右に肩が傾いたりしている。自分はボーゲンぐらいしかできないのに、トップ選手のアドバイスを聞いていたら、だんだんレベルの違いがわかってきた。

そして100人の参加者は午前より午後のほうが明らかに上達している。この中から、数年後にはアルペンスキーの金メダリストが登場するかもしれないと思ったら、とても楽しみになってきた。