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「賞金王はその年一番活躍した人。ただ、勝利数が少なく悔しい」プロゴルファー・今平周吾

2年連続の賞金王に輝いたのは昨年の大きなニュース。正確なショットを武器に戦い続けた一年であった。日々進化する彼のゴルフは、今年、ますます冴えわたる。(雑誌『ターザン』の人気連載「Here Comes Tarzan」、No.780より全文掲載)

歴代最年少記録、でも悔しい。

2019年の男子ゴルフ国内最終戦、日本シリーズJTカップは、今平周吾にとって痺れるような大会だったろう。ここまでで稼いだ賞金総額は1位であるが、2位のS・ノリスがこの大会で優勝すれば逆転されてしまう。そして、シーズン以前に目標として掲げたツアー3勝も、ここで果たせるか否かが決するのだ。この最終戦、見ている者にとってもスリリングな展開だった。

プロゴルファー・今平周吾

最終日18番へ向かう今平は9アンダー。単独首位で、このままパーをセーブすれば、優勝への可能性はぐっと広がる。が、痛恨のスリーパットでダブルボギーを叩き、終わってみれば3位。インタビューで「(パーセーブを)狙った結果」と語ったが、スルリと優勝がその手から滑り落ちてしまったのだ。ただ、優勝したのが石川遼だったので、賞金王の称号は見事獲得することができたのだった。一昨年からの2年連続の賞金王は史上5人目の快挙で、尾崎将司の27歳10か月を抜く、27歳2か月の歴代最年少記録となった。

「僕にとって賞金王は、その年で一番活躍した人というイメージがありますね。ただ、やはり優勝したいというのもあります。勝利数が少ないので、それは悔しい。今年は3勝を目標にがんばりたいですね」

プロゴルファー・今平周吾

確かに彼の言う通り、今平にはなかなか勝てないという印象がある。一昨年は1勝のみで賞金王になったのだが、それが10月のブリヂストンオープン。一緒にラウンドした尾崎に「優勝しないで賞金王はないだろう」と、彼流の激励を受けて奮起した結果だった。

ただ、とくに昨年は16試合でトップ10入りを果たしており、なんと2位は5回を数える。平均ストローク(1ラウンドをパー72で換算したときのストローク数)は2年連続でツアー参加選手唯一の70切りである。いかに安定したゴルフができているかは、これでわかっていただけるだろう。

「毎週毎週上位で戦うというのは、ひとつ重要なことだと思います。最低でもトップ10に入れるようにしたい。常に予選通過が大事な目標。その目標を積み重ねていった結果が、賞金王だったのだと思っています」

初めてコースに行って、すっかりはまった。

今平がゴルフを始めたのが9歳のとき。プロゴルファーの中では、遅いほうであろう。両親の影響だったのだが、本格的に始めるまでは特に何も感じなかったという。

「初めてコースに行って、すっかりはまってしまいましたね。ボールがすごく飛ぶんです。野球でボールを打ったときより。それに、打った感触も気持ちよかった。それで、夢中になっていったという感じです」

プロゴルファー・今平周吾

ゴルフはボールの飛距離がもっとも出る競技だろう。プロ野球の選手の特大ホームラン記録は元西武ライオンズのアレックス・カブレラの180mといわれている。ところが、ゴルフではドライバーで300ヤード(274m)オーバーという選手も少なくない。ゴルフ場で見るとわかるが、ボールは糸を引くように、すごいスピードで一直線に飛んでいく。これが、少年のココロを捉えたことは十分に納得できるのだ。

確かに夢中になった。それは成績にも表れていく。中学時代には関東ジュニアゴルフ選手権で2連覇を達成し、埼玉栄高校1年のときには、日本ジュニアゴルフ選手権競技で1歳年上の松山英樹を破って優勝を果たすのだ。

そして、この頃よりプロになることを意識し始め、そのための大きな決断をする。アスリートの育成では世界トップクラスである、アメリカ・フロリダ州にあるIMGアカデミーの門を叩いたのだ。

プロゴルファー・今平周吾

「プロになりたかったし、それだったら環境がいいアメリカに行くのが一番だと思いました。海外にあるいろんな学校を調べてきて、一番よさそうな場所だったのでIMGアカデミーということになったんです」

今平はこう簡単に言うが、ここに入るのは容易ではない。3回も落ちて、もう嫌気が差したときにやっと入学を許されたという選手もいるのだ。ただ、それだけに環境は抜群である。テニス、野球、バスケットボール、ゴルフなどのプロのトップ選手がオフシーズンの練習場所として使用することがあるほどだ。もちろん指導も一流だし、まわりにはとてつもない実力を持ったライバルたちがひしめき合っているのである。

プロゴルファー・今平周吾

「まず、自分より飛ぶ選手がいっぱいいたので、戸惑いがありました。当時、僕はそれほど飛距離があるほうではなかったので。この先海外でやっていけるのかなという不安があった。というのも、アカデミーに入ったときの目標はアメリカのPGAツアーだったのです。よくテレビで見ていて、出場してみたいと思うようになりました。憧れの選手はやっぱりタイガー・ウッズとか、ロリー・マキロイなんかですね」

飛距離の差は如何ともしがたい。体格のいい外国人がゴロゴロいるなかで、今平は日本人としても小柄な165cmである。だが、それだからこそ、今のスタイルが生まれてきたのだろう。自分の思った場所にボールを運ぶ、コンパクトで正確なショットを手に入れることができたのだ。

プロゴルファー・今平周吾

「アメリカではいろんなコースに行くことができました。それも大きな経験でしたね。今の財産になっているというか。多くが、広くて距離もあるコースです。外国人選手はブンブン振っていくというタイプが多かった。同じことをやっていても、仕方がないと考えていました。ボールを曲げない、アイアンやショートゲームの精度を上げる。ここが大きなポイントだと思っていました」

ショートゲームとは、グリーンまわりの比較的距離の短い(おおむね100ヤード以下)ショットの技術を指す。これを磨くことは非常に重要なこと。いくらボールを飛ばせる力があっても、ショートゲームが下手だと、ピンにボールを寄せられない。

ゴルフではドライバーの1打も、パターの1打も違いはない。そして、飛距離は練習で伸ばしにくいが、ショートゲームは練習すればするだけ、必ず上達するのである。アメリカでの2年の修業を終えて帰国した今平は、2011年にプロに転向した。

プロゴルファー・今平周吾

「日本のツアーは最初の頃はなかなか難しかったです。コースの状況とかもよくわかっていませんでしたし。毎年毎年同じコースを回るうちに少しずつわかって、慣れていった感じです。ただ、一緒に回るプロ選手を見ていて、安定感がすごいなぁ、と思っていました。プロになった頃は、まだ今のようなゴルフはできていませんでしたから」

14年には下部ツアーであるチャレンジツアーで2勝を挙げ、賞金王になる。そして、翌年からのレギュラーツアー出場権を獲得したのだ。

硬めのシャフトで飛距離を伸ばした。

昨年、日本で初めてアメリカのPGAツアーが開催された。ZOZOチャンピオンシップがそれで、タイガー、マキロイなど錚々たるメンバーが顔を揃えた。この大会はタイガーがツアー記録に並ぶ82勝目を飾り、終了したのであるが、今平も出場した。結果こそ59位と振るわなかったが、大きな収穫があった。

「飛距離は当然違うのですが、彼らはすべてにおいて上を行っていると思いました。PGAの選手がほとんど来ていましたから。少しでも追いつけたらいいですね。ただ、ショートゲームだけではなかなか差が縮まらないというのも事実。それで、(クラブを)振れてきてもいるから硬めのシャフトに替えたんです。飛距離が伸ばせますし」

結果、距離も方向性もよくなったようだ。今平のゴルフは、現在進行形でどんどん進化しているのだ。そして、もうひとつ始めたことがある。それが筋力トレーニングである。

プロゴルファー・今平周吾
今平周吾(いまひら・しゅんご)/1992年生まれ。165cm、65kg。2008年、日本ジュニアゴルフ選手権競技で優勝。09年、米フロリダ州のIMGアカデミーに留学。全米ジュニアゴルフ選手権でベスト8に入る。11年にプロ転向。14年にチャレンジツアーで賞金王となり、レギュラーシーズンの出場権を得る。18年1勝、19年に2勝を挙げ、2年連続の賞金王となる。

「18年からやりだしました。飛距離を伸ばしたり、安定感を出すために必要だと思ったんです。下半身が弱かったので、スクワットや、体幹トレーニングをしています。足腰や体幹が強いことが、ゴルフでは一番重要なんですよ。上半身は強さよりも、柔軟性が大切。だから、ストレッチなんかを行っているんです」

これらは、ランニングなどとともに、オフシーズンにしっかりと行われる。というか、できるタイミングがそのときしかないのだ。昨年のツアーは第1戦が1月17日から開催されたSMBCシンガポールオープンで、最終戦が前述したJTカップで12月5日の開催である。全24試合、ほぼ2週に1回試合がある。

ツアーが始まってしまえば、疲労の蓄積は厳禁だ。そのため、マッサージなどのカラダのケアが最優先事項となっていくのだ。先に「今年は3勝したい」と話した今平だが、実はもうひとつ楽しみにしていることがある。それが東京オリンピックだ。

「今、(ランキング)は2番手にいるので、そのままキープしてぜひ出場したいと思っています(上位2人は出場資格が得られる)。コースも地元・埼玉県の霞ヶ関カンツリー倶楽部で、ジュニアの頃からやっていた場所ですからね。コースレイアウトは変わるんでしょうが、けっこう好きなゴルフ場なんです。オリンピックって、国全体で盛り上がる感じじゃないですか。普段はあまり見なかった体操も、内村航平選手のプレーとその盛り上がりをテレビで見て本当にすごいと思いました。僕たちのゴルフもたくさんの人にプレーしている姿を見てもらいたいですね」

取材・文/鈴木一朗 撮影/下屋敷和文

初出『Tarzan』No.780・2020年1月23日発売

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