ボディビルダー級の上腕、手に入りますか?
取材・文/廣松正浩 撮影/小川朋央 スタイリスト/高島聖子 ヘア&メイク/天野誠吾 イラストレーション/モリタクマ 取材協力/有賀誠司(東海大学スポーツ医科学研究所教授) 取材協力・エクササイズ指導/<a href="/tags/shinobu_shimizu/">清水忍</a>(インストラクションズ代表、IPFヘッドトレーナー)
(初出『Tarzan』No.706・2016年10月20日発売)
ビルダーはなぜか上腕周径にこだわる。
腕周径(周囲の長さ)が40cmを超えたら一人前!? ビルダーたちの間では、そんな話があるとかないとか。一般人の平均値は大体30cm弱。ここに筋肉だけを上乗せして、さらに10cm余りとは恐らく規格外。デカすぎて、ぴんと来ないが…。
「身長170cmぐらいの方では、到達はかなり難しいと思います。ボディビルのトップクラスの選手なら、ありうるかもしれませんが」と有賀誠司教授(東海大学)。
通常のスポーツでこのサイズに達する選手は、いないはず。そもそも、その立派な腕を何に使う?
「実のところ、上腕に本当に強い負荷をかけるスポーツはあまりないんです。先に挙げた柔道とかラグビーのように、相手とぶつかり合うような種目でない限りは要求されない強さだからです」
他にあえて挙げるなら、ハンマー投げや砲丸投げのような投擲競技が当てはまるかもしれない。
上腕三頭筋の太さがものをいう。
「そもそも体脂肪抜きで40cm以上というのは至難の業です。そういう人がいるとすればアメフトの選手か大相撲の力士でしょうが、彼らは体脂肪もそれなりについています」と清水忍トレーナー(インストラクションズ代表)。
上腕を太くするというと、真っ先に上腕二頭筋、つまり力こぶの大型化をイメージしがちだが、清水トレーナーはそれだけではないと語る。
「上腕三頭筋が太くならないと、腕は大きく見えません。自然に腕をカラダの横に垂らしたとき、鍛えられた上腕三頭筋は肩より外側に張り出します」
したがって、上腕三頭筋が発達すると、肩幅が広がった印象を与えることにもなる。さらに起始の一つである外側頭の部分も鍛えれば、一層がっちりした感じになってくるだろう。
トレーニーに多いのは上腕二頭筋ばかりをクローズアップするというもの。裏の三頭筋を鍛えてこそはじめてバランスは整うものなのだ。これを、腕における全面性の法則という。
ただし、周径40cmのスペックを追求するのは、確かにボディビルダーだけだろう。
「例えば、ハムストリングスを鍛えて周径が何センチ以上というのは意味があります。脚の太さは脚力に反映されるからです。そして、脚力はほぼすべてのスポーツにとって重要ですが、腕力だけを問われる局面は案外少ないんです。野球選手もサッカー選手も意外に腕は細い人がいますよ」
サイズよりバランス重視で行ってみよう。
実践! 見落としがちな背面を集中的に強化。
1. フレンチプレス
正式名、トライセップス・エクステンション。肘をできるだけ高く上げて曲げ、ダンベルを持つ手は肩甲骨の間を出発し、頭上まで真っ直ぐに引き上げたら、ゆっくり下ろす。反対側の手は腰に当てて。左右各10回×2セット。
2. キックバック
安定した椅子の座面に片手をつき、反対側の脚は後方に伸ばし、上半身は45度以上傾けて用意。自由な側の手に持ち、肘は後方高くに固定し、ダンベルを後方に、できるだけ高く上げたら、ゆっくり下ろす。左右各10回×2セット。