- 鍛える
こんなパンを待っていた! 豆でつくられたグルテンフリーの《ZENB ブレッド》
PR
『アメリカの夜』を読んだのは、小説家としてデビューした後、大学生のときです。「特別な存在」になりたい主人公が、「とにかく反復が大事だ」とか言って、誰から求められたわけでもないトレーニングを淡々とやっている姿が、なんかいいんですよね。
当時の僕は、カラダを鍛えれば女の子にもてると勘違いしていたので、合コンの前日とかに、自宅の前でジョギングとかシャトルランとかしていたんですよ。そういう傾向を肯定してくれるように思わせる小説だったのかもしれません。
『超男性』を読んだのも、大学3年か4年のとき。『走ル』という小説の直しをしているときに、編集者に勧められました。
スポーツ感覚でセックスの世界記録に挑戦する者が出てきたり、5人乗りの自転車で機関車と競争する者が出てきたり、物語はわりとめちゃくちゃなんですが、同時に、肉体は楽しさを享受するための道具であり、機械である、だから、楽しんだ者勝ちだっていう、肉体に関する本質を突くようなことも描かれていて、結構考えさせられました。
武田真治さんの『優雅な肉体が最高の復讐である。』は、武田さんが誰にも求められてない戦いを常にしているところがまずいいですね。また、この本は「トレーニングって楽しそう」と思わせてくれもする。
芥川賞を受賞するちょっと前に読んだんですけど、ノミネートが発表されたとき「受賞したら人前に出る機会も増えるかもしれないからちょっと絞っておくか」ってトレーニングをしたものですね。
羽田圭介(はだ・けいすけ)/作家。1985年、東京都生まれ。2003年、高校在学中に『黒冷水』で小説家デビュー。15年に『スクラップ・アンド・ビルド』で芥川賞受賞。その他の作品に『5時過ぎランチ』『成功者K』『コンテクスト・オブ・ザ・デッド』『メタモルフォシス』など。
取材・文/鍵和田啓介 撮影/大嶋千尋
(初出『Tarzan』No.770・2019年8月8日発売)