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タンパク質と、何が同じで、どう違う?ジェーン・スーと〈味の素(株)〉社員が語るアミノ酸のこと。
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車に電車に動く階段に動く歩道、世の中とかく便利になりすぎた。それがどうした?とどこ吹く風のあなた、歩くなんて当たり前のことだから、運動じゃないと思っていないか? とんでもない。ウォークはランに負けない恩恵をもたらす立派な運動。おろそかにすれば近い将来必ず後悔することになり、今日から歩き出せばいいことずくめ。そう、気づいた者勝ちなんです!
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「インターバル速歩」(※)を5か月間行った結果、BMIが下のグラフのように変化。そのメソッドの提唱者、信州大学教授・能㔟博さんによれば、「4か月くらいになると体脂肪が減って脚の筋肉のラインが見えるようになり、入らなかったズボンもスルッと入るようになります」。
※インターバル速歩…能㔟さんが独自に開発したメソッド。それぞれ3分間の「普通歩き」(目安:時速4km)と「ややキツい速歩き」(目安:時速6km)を交互に5セット繰り返す。計30分のウォーキングを週4回行う。
HDLコレステロールの別名は“善玉コレステロール”。数値が高いほど健康状態がよいということを示す。「HDLは血管壁に沈着したコレステロールを取り除き、肝臓に運ぶ働きがあります。結果的に動脈硬化の予防に繫がるといえるでしょう。男女ともに1日の歩数が多い人ほどHDLの値が高いことが分かっています」(東海学園大学教授・森悟さん)。
上のデータでも分かる通り、1日の歩数が多い人ほど血圧は低い。1回の歩行でも血圧降下作用はあるという。「以前、ウォーキングイベントに参加した人の血圧を計測したところ、全員がウォーキング前に比べて10〜20程度低下していました」(長尾クリニック院長・長尾和宏さん)。
5か月のインターバル速歩で生活習慣病の罹患率の指標が軒なみ低下。「体力の低い人ほど生活習慣病指標の低下の割合が多いことが分かります。指標が低下するのと逆転するように体力は上がっていきます」(能㔟さん)。
アルツハイマー型認知症の原因は、異常タンパクの脳への沈着。「最近の研究では20代から沈着が始まっていることが分かっています。その異常タンパクは歩くことで取り除けるのです。とくに歩きながら計算をする、川柳を作るといったデュアルタスクが有効とされています」(長尾さん)。
「睡眠医学の観点から見れば、早朝に歩くことは非常に有効。朝の光が脳にある体内時計の中枢に働きかけて、約15時間後、睡眠ホルモンのメラトニンが分泌されます。ウォーキングで副交感神経の機能も高まるので、自律神経のバランスも整い質のいい睡眠がとれるようになると考えられます」(長尾さん)。
毎日排便がある人は1日の歩数が5,000歩以上。これが4,000歩になると2日に1回、3日に1回と頻度が低下。「一般的に運動は結腸がんの予防に繫がることが指摘されています。運動によって胃腸での停滞時間が短縮されることがその理由です」(森さん)。便秘予防には1日5,000歩以上が望ましい。
1日の歩行時間が30分未満の人は、2時間以上歩く人に比べて糖尿病のリスクが1.23倍高かった。これは国立がん研究センターの大規模調査によって明らかにされた数値。「食事による血糖値の上下動は、歩くことで低くなります。毎日歩き続けることで体重が減って、BMIが25以下になると、血糖値はみるみる下がっていきます」(長尾さん)。
「歩行と腸内環境に関する研究はありませんが、仮説としてウォーキングで腸が刺激され、腸内環境が改善することは十分考えられます」(長尾さん)。ストレス社会の現代病、過敏性腸症候群(IBS)の改善も期待できそう。
ウォーキングで腸内環境が整うとする。腸内環境は免疫力に密接に関わっているので、その結果、免疫力がアップする可能性は高い。「がんの患者さんに漢方を処方し毎日歩くことを勧めたことがありますが、その結果2か月ほどで、腫瘍マーカーが20分の1に下がりました。また、毎日歩いている人は不思議なほど風邪をひきません。データはありませんが、リンパ球の活性度が上がっている可能性は高いと思います」(長尾さん)。
マラソン大会ではときに心肺停止の状態に陥る人もいる。「走るというのはレベルの高い運動。最初は心肺や膝などに負担の少ないウォーキングを継続することをおすすめします。物足りなくなったらジョギング、ランと移行していけばいい話。いきなりトップギアで走り出す必要はありません」(長尾さん)
取材・文/石飛カノ 撮影/小川朋央 スタイリスト/山内省吾 ヘア&メイク/天野誠吾 取材協力/長尾和宏(長尾クリニック院長、東京医科大学客員教授)、能㔟 博(信州大学学術研究院医学系教授)、森 悟(東海学園大学スポーツ健康科学部教授)
(初出『Tarzan』No.691・2016年3月10日発売)