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NEATを増やして体温を上げよう。低体温を脱出する生活術

運動不足や生活環境の変化で、低体温の人が急増している現代。体温を1度、上げる方法を教えます。真健庵クリニック院長の星子尚美先生に教えてもらいました。

まずは、低体温チェック!

4つ以上チェックがついた人は、低体温症の可能性大!

□1年に2回以上、風邪をひく

□口内炎ができやすい

□爪が割れやすい。縦の筋が多い

□切り傷、擦り傷が治りにくい

□睡眠不足を感じやすい

□手足が冷たい

□デスクワークが多い

□日頃あまりカラダを動かさない

□タバコを吸う

□冷たい飲み物を1日2回以上飲む

□朝食を食べないことが多い

生活環境の変化が低体温社会を生んだ。

最近の調査では、ここ30年の間で平熱が36度未満の人が20倍以上に増えていることが明らかになっている。低体温の状態を放置すると代謝機能が低下し、さまざまな不調の原因となる。

低体温社会になったのは、食生活や生活環境の変化が大きな要因だと星子尚美先生は話す。

「夏はトマトやキュウリなどカラダを冷やす野菜で火照ったカラダを鎮め、冬はカラダを温める食材で寒さを防ぐ。旬の食べ物で体温を調節するのは日本人の生活の知恵でした。ところが近年は季節を問わず野菜が流通し、冷房が効いた室内で冷たいものを食べることも日常的になった。

変わったのは食生活だけではありません。地球温暖化により夏は冷房をつけずにはいられなくなり、交通手段の普及で成人の筋力が低下。その結果、現代人の発汗機能が落ち、カラダは自己防衛反応として発熱しにくい状態を作っています。これが低体温を招いているのです」

34度が生死の境目!? 健康的な平熱は37度。

平熱は?と聞かれたら、多くの人は36度前後と答えるだろう。でも実はそれ、やや低体温気味。健康を保つために維持すべき平熱は36.5〜37度といわれている。

平熱とは起床時・午前・午後・就寝前の1日4回測定した体温の平均値。一説では、カラダの深部の体温が35度以下になると低体温症と見なされ、全身の震え、呼吸の乱れ、顔面蒼白といった症状が表れることもあるとか。風邪で高熱を出す以上に危険なのは、低体温の方かもしれない。

「代謝酵素がもっとも働きやすい体温は37度前後とされ、実際に昔の人はこのぐらいの体温がありました。だから代謝もよく、女性でも数十kgの米俵をラクラク担ぐパワーがあった。生活環境を戻すことは難しいので、カラダを温める工夫をしましょう」

まずは頭寒足熱。オフィスではブランケットを膝に、厚めの靴下を履くなどし下半身を温める。夜は入浴でじんわり汗をかく習慣を。

低体温を甘く見るべからず。疾患を併発する恐れあり!

体温が1度下がるだけで、免疫力は約3割下がるといわれている。この状態が恒常的になると、重篤な疾患を招く危険も。その代表的な病気が、がんだ。

「がん細胞は嫌気性で低温を好む性質があり、特に活発に増殖するのが低体温の人の平熱と同じぐらいの35度前後。実際にがん患者さんの体温を測ると35度台の低体温の人が非常に多いです」

さらに、血管系にも影響が。

「体温が下がり血流が悪くなるとタンパク質の合成や分解ができなくなり、不必要な老廃物を腎臓や肝臓に送り込んで処理することも難しくなる。すると処理しきれなかった老廃物が血管に溜まり、最悪の場合は血栓ができてしまう場合もあります。

これが脳梗塞や心筋梗塞につながることも。体温が1.5度低下することで、心臓疾患のリスクがおよそ2〜3倍に上がることもわかっています」

体温が低い自覚がある人は早いうちに生活習慣を見直しておこう。

必要以上に動く習慣がつけば自然と消費エネルギーが増える。

自らコピーを取り、他のスタッフのところに出向いて話し、お茶を入れ、せかせかと働く人。一方で、地蔵のようにデスク前から一歩も動かず一日を過ごす人。

この2人は一目瞭然で、前者の方がNEAT(非運動性活動熱産生)が多い。NEATとは、日常の生活活動で消費されるエネルギーのこと。このNEATを増やせば活動代謝が上がり、消費量も上がるといわれている。もちろん体温も。

NEATを増やすコツは、とにかくこまめに動くこと。職場だったらエレベーターを使わない、ランチは少し遠くの店に行く。自宅だったら汚れやほこりをその場で拭く、庭仕事をする、買い物に行くなど。最低限、背すじを伸ばして姿勢を正す、立つ時間を増やす、よく嚙むだけでも効果がある。

「人間の体温のうち、おおよそ4割は筋肉が生み出す熱によるもの。基礎代謝の半分以上が筋肉で行われるので、使う筋肉が増えれば代謝も上がり、体内で熱が生み出されます。特別な運動をしなくても、こうしたNEATを増やせば体温アップにもつながります」

体温が1度上昇すると、基礎代謝量は13%UPする。

日常生活でNEATを増やし、体温が1度上がったとしよう。すると病気にかかるリスクが下がるだけでなく、痩せやすくなるという特典も付いてくる。

「平熱が37度の人は、高い体温を維持するために多くのカロリーを必要とします。そのため、食事で摂取したタンパク質や脂質などがスムーズに代謝され、熱エネルギーに変換される。つまり体温が上がれば上がるほど、食べても太りにくい体質に近づくのです。

一方で低体温の人は血流が悪く、代謝を司る酵素もうまく働かないため、消化〜吸収〜代謝の流れが滞ります。そして代謝されなかった栄養が血管の内側に付着し、さらに血流が悪くなり、体温が下がるという悪循環に陥ってしまいます」

実際に平熱が1度上がると、基礎代謝量が13%も上がるという。そこで、平熱36度の成人男性が37度になった時の消費カロリーの違いを計算してみると、1日で136.5キロカロリー、1か月で4,095キロカロリーもの差が出てくる。毎日30分ウォーキングをするのと同じぐらいのこの熱量を、何もせずに消費できるのだ。

体温が1度上がると

取材・文/黒澤祐美 イラストレーション/アンドリュー・ジョイス 監修/星子尚美(真健庵クリニック院長)

(初出『Tarzan』No.727・2017年9月28日発売)

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