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〈HOKA ONE ONE〉を履くと、あれ、足が前に出てしまう!

〈HOKA ONE ONE〉CLIFTON 5/非常に軽く、優れたクッション性を備えた人気モデル。前へ前へとカラダを進ませるソールのクレードル形状が効率のいい走りを、ホールド性の高いヒールカウンター、通気性の優れたアッパーが快適な走りを約束する。17,000円。

ミッドソールの厚さが印象的な〈ホカ オネオネ〉のランニングシューズ、《クリフトン 5》。プロランニングコーチとして有名な金哲彦さんはこの靴を「初心者なら1足目に、経験者なら2足目におすすめ」と語る。金さんの解説と、3人のランナーのインプレッションから〈ホカ オネオネ〉の実力を探る。

近年、なにかと話題の多い厚底シューズ、そもそもの始まりはこの〈ホカ オネオネ〉から。見ての通り分厚いミッドソールが目を引く。従来の靴とどこがどう違うのか? そしてその実力は?

気になる、履いてみたい。けれど文字通りその一歩を踏み出せないランナーのために『ターザン』が代表して〈ホカ オネオネ〉の実力を、ランニング指導の第一人者である金哲彦さんに尋ねた。

教えてくれた人

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金 哲彦さん(きん・てつひこ)/プロランニングコーチ。早稲田大学競走部出身。箱根駅伝に4年連続出場し、山登りの5区で大活躍。1984、85年の早大2連覇に貢献。NPO法人ニッポンランナーズ理事長。指導、マラソン&駅伝の解説などに日々忙しい。

「ラクに走らせてくれる秘密がある」

2年前、白山白川郷ウルトラマラソン(100km)に出ようと思って、いろいろシューズを試したんですよ。

この大会は、スタートして最初の20kmで標高1,500mに上がり、そこからフィニッシュまでの80kmを全部下るという、とんでもない100kmレース。下りでは体重と重力が加わって脚の筋肉への負担は上り以上に大きくなります。それが80kmも続くのですから大変です。

そこでたくさんの靴を履き比べた結果、下りで筋肉のダメージがいちばん少なかったのが〈ホカ オネオネ〉でした。もちろん、そのレースで履いて完走できました、以来ずっと〈ホカ オネオネ〉。

ふかふかの厚みたっぷりのソールは衝撃吸収に効果的なんですが、もうひとつ〈ホカ オネオネ〉にはラクに走らせてくれる秘密があるんです。

CLIFTON 5のソール
〈ホカ オネオネ〉は走る環境や用途によってシューズのソール構造を変えている。《CLIFTON 5》のソール形状はロードランニング用で、地面と接触が多い部分だけにラバーを搭載。接地面が多い構造なので高い安定性を発揮する。

それまで、ランニングシューズの靴底の役目は地面からの衝撃を和らげたり、オーバープロネーション(足首の大きな捻れ)防止などのためでした。シューズメーカーは軽くて衝撃吸収に優れた素材を開発し、また、そのための斬新な構造を考えてきました。ランニングシューズの靴底の素材競争、構造競争です。

でも〈ホカ オネオネ〉はまったく違うところからスタートしています。トレイルランニングの好きな創業者が、どうしたら山道の長い下り坂を楽に速く走れるのかと考えたことをきっかけに、今の〈ホカ オネオネ〉のシューズの発想が生まれました。

そして、足の運びがまるでタイヤの回転のようにスムーズに動く、靴底のデザインを考案したのです。それが爪先から踵にかけてゆらゆら揺れるロッカー形状。このデザインのおかげで着地(踵着地であろうが、フォアフット着地であろうが)から蹴り出しまで、効率よく、速く、動けます、足が自然と前に出ます。

《クリフトン 5》は万能選手

CLIFTON 5を横からみるとソールが独特の丸みを帯びている
横からだと一目瞭然、〈ホカ オネオネ〉独自のボリュームたっぷりなミッドソール。この厚みが極上のクッション性を実現している。インパクトのある見た目とは裏腹に、衝撃吸収力だけでなく、軽量性にも優れる。

靴を真横から見ると爪先と踵が大きく削られているのがわかります、このまま靴底をなぞると大きな円を描けるくらいです。この丸みを帯びた靴底がカラダを前へ前へと乗り込みやすくしてくれます、走りそのものがとてもスムーズなんです。

〈ホカ オネオネ〉の中でもこの《クリフトン 5》は僕のお気に入りです。ウルトラ100kmを走れるし、まだ走力のできていない初心者にもうってつけ。レースに頻繁に出る人ならこの靴でダメージを減らすことができるし、フルマラソンでサブ4を狙うランナーには秘密兵器になるでしょう。

まさに《クリフトン 5》は万能選手。地方にセミナーに行くことも多いけど、新幹線の中も、講演会場も、大会で走るときも、翌朝のジョギングも全部《クリフトン 5》でOK。初心者なら1足目に、経験者なら2足目におすすめです。

走力も経験も違う3人に履いてもらったら

金哲彦さんが詳しく解説してくれた〈ホカ オネオネ〉だが、他に3人のランナーにも履いてもらった。大学競走部のヘッドコーチから、『ターザン』編集部のビギナーまで。果たして走力も経験も違う3人は、どのような感想を抱いたのか。

1. 慶應義塾大学競走部ヘッドコーチ「医科学センターでテストしたんですよ」

慶應義塾大学競走部ヘッドコーチ・保科光作さん
慶應義塾大学競走部ヘッドコーチ・保科光作さん

1年前に《クリフトン》の性能分析をしたんですよ。医科学センターでトレッドミルを使い、また競走部の選手たち20名に実走してもらいました。

びっくりです、衝撃やブレが少ないのには驚きましたが、とにかく走りやすい。踵が削られているので前腿(大腿四頭筋)に負担が少なく、また爪先が上がっているのでふくらはぎの疲労が少ないんです。そして足のホールド感が素晴らしい、足関節が安定しますね。

《クリフトン》は高性能で安全、僕も選手たちもトレーニングで履いています。そして中高生へのランニング指導でもこの靴を使っています。成長過程の彼ら、故障して走ることが嫌いになったらかわいそうですから。

2. 元テニス選手「ランニング仲間に勧めたいなあ」

元テニス選手・ライ・チャンさん
元テニス選手・ライ・チャンさん

「うわ、でか。横から見ると船みたい、重そう」が《クリフトン 5》の第一印象でしたけど、実際に履いてみたらぜんぜん違いました、びっくり。どうやったらこんなに軽く作れるの?ってくらい軽い。

他のシューズより疲れが少ないのは、履き心地がいいからかな? 足全体がふんわり包まれる、ってイメージ。決してギューッと締めつけられる感じではないんです、私の足の形に合っているみたい。履いていてラクです、だからランニングとウォーキング、そしてジムでも履いています。

私はわりと捻挫しやすいんだけど、足首のあたりがしっかりしてるし、靴底が幅広なのでその心配はないみたい。あ、色も可愛いし、仲間に勧めたいな。

3. 『ターザン』編集部員「三日坊主ランナーが走り続けている」

『ターザン』編集部員・K.K
『ターザン』編集部員・K.K

ちょっと前からおなかまわりが気になってきて、脂肪燃焼のために走り出すんだけど、続かないんだ、つらいだけなんだもん。そんな三日坊主の私をこの《クリフトン 5》はお正月以来、走り続けさせてくれてます。すごい靴でしょう、そんな自分にも驚いています。へえ、ランニングって楽しいものなんだな、って初めて思いました。

この靴、履き心地がいい、ラクに走れる、そして疲れない。ジムのトレッドミルで、ゆっくりだけど45分も走れちゃった、これは自分にとって大快挙ですよ。走るだけじゃなくて、この靴は歩きも楽しいなあ、だからジムの往き帰りもこの靴です。この調子でいったら、ほんとにおなかが凹むかもしれない。

唯一無二の走りをもたらす3つのテクノロジー

〈ホカ オネオネ〉のシューズには、軽快な走りを実現するための3つのテクノロジーが搭載されている。下で紹介している機能によって、高いクッション性、優れたフィット感、スムーズな足運びが可能になるのだ。

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1. これまでにない軽量マキシマムクッション

これまでにない軽量マキシマムクッション
ひと目で〈ホカ オネオネ〉だとわかるとても厚いミッドソール。実はとても軽く、そしてふわふわのマシュマロのように柔らかだ。衝撃吸収に優れていて、長い距離を走っても、地面からの突き上げが大きな下り坂でも、カラダへの衝撃を軽くすることができる。筋力の弱い女子初心者や体重のあるビギナーにも最適。また、クッション性に優れたソールが軽やかな走りを実現し、ランニングの回数や距離を増やすことができる。

2. バケットシート型のしっかりミッドソール

バケットシート型のしっかりミッドソール
実際に履いてみるとわかるが、踵はシューズの奥深くにきちんと収まる。そして紐を結ぶと、足全体を靴が優しく、しっかり包み込んで一体化してくれる。これにより、大きな踏み込みやコーナーを曲がるときでも、シューズの中で足は揺れることもずれることもない。まるで、バケットシートに座り、4点式シートベルトでマシンと一体化したF1レーサーのよう。加えて靴底の幅が広く、安定感のある着地を叶えてくれる。

3. 自然に足が出るメタロッカーテクノロジー

自然に足が出るメタロッカーテクノロジー
靴底は、爪先と踵部分がなめらかに削り取られ、大きな円の一部のよう、ゆりかごのようなロッカー形状をしている。また、踵の高さと爪先の高さの差をドロップと呼ぶのだがこれを少なくしているため(クリフトン 5は5mm)、足の運びに無理がなく、車輪を回すようにスムーズに足が前に出てゆく。そして自然に体重移動が行われ、効率よくカラダを進ませてくれることにより無駄のないランニングができるのだ。

問い合わせ先/デッカーズジャパン(TEL)0120-710-844
www.hokaoneone.jp

取材・文/内坂庸夫 イラストレーション/羽鳥好美

(初出『Tarzan』No.759・2019年2月21日発売)

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