• 公開:

テレビ観戦すれば走りが速くなる!? 『大阪国際女子マラソン』が「ランナー必見」の理由

3月まで続くランニングのハイシーズン。大会出場を予定しているというランナーの方も多いことだろう。大都市で開催され、トップランナーが集結するビッグレースは、走るのはもちろんのこと、テレビ観戦もまた楽しい。特に注目なのが、1月27日(日)の『大阪国際女子マラソン』だ。自分のランニングレベルアップにも繋がる観戦法を、スポーツコメンテーター・千葉真子さんに解説してもらった!

トップ選手のフォームを盗むべし!

1月27日(日)に開催される『第38回 大阪国際女子マラソン』(カンテレ・フジテレビ系 全国ネットで12:00〜)は、東京オリンピックの代表選考レースであるMGC(マラソングランドチャンピオンシップ)の出場資格を得ることができる大会の一つ。そのため、東京オリンピック出場を狙うトップランナーが集う。

世界陸上パリ大会のマラソンで銅メダルを獲得した経験のあるスポーツコメンテーターの千葉真子さんも「ビッグネームが揃う大会ですし、お手本にしたくなるフォームで走る選手が見つけられるはず」と語る。

千葉真子さんの写真
千葉真子(ちば・まさこ)/1976年、京都府生まれ。スポーツコメンテーター。〈千葉真子 BEST SMILEランニングクラブ〉を立ち上げ、市民ランナーの指導やランニングの普及活動も行っている。1997年のアテネ世界陸上 10000m、2003年のパリ世界陸上 マラソンで銅メダルを獲得。今回の大阪国際女子マラソンでは、選手の息遣いやフォームなど、細かな変化も逃さず一番近くで分析する「バイク解説」を担当。

トップランナーが42.195kmという距離をあれだけ速く走れる理由は、洗練されたフォームにあります。フォームのバランスが悪かったり、クセが強いと体力の消耗が早いですし、なによりスピードが出ません。筋肉や骨格の違いがあるので、ベストのフォームというのは選手ごとに違いますが、トップランナーたちのフォームを観察すると、無駄のないフォームがどんなものなのかが意識しやすくなります

最注目は福士選手のフォーム

ランナーの方々に特にチェックしてほしいのが、福士加代子選手のフォーム。言わずと知れたリオデジャネイロ・オリンピックの女子マラソン代表選手であり、5000mの日本記録保持者でもある。マラソンの自己ベスト、2時間22分17秒を出したのは2016年の大阪国際女子マラソン。コースとの相性もいい。

福士加代子選手の写真
福士加代子(ふくし・かよこ)/1982年、青森県生まれ。ワコール所属。2016年リオデジャネイロ・オリンピックの女子マラソン代表選手。マラソンの自己ベストは2時間22分17秒。3000m、5000m、ハーフマラソンの日本記録保持者でもある。

「トラックの選手だった頃の福士選手はバネを活かした力強いフォームでした。福士選手がマラソンを走るのは今回が10度目なのですが、長い時間をかけて作り上げたマラソン仕様のフォームは、すごく合理的な美しさを感じます」

やや前傾姿勢のフォームで、上下動がほとんどありません。上に跳ぶ無駄な動きがなく、前方にスムーズな重心移動ができています。体幹が弱いと腰が折れてしまったり、足首の柔軟性が不足していると後傾気味になってしまうのですが、軸がしっかりした前傾姿勢は多くのランナーの方の参考になるのではないでしょうか」

昨年10月に熊本県で行われた福士選手の合宿の様子
昨年10月に熊本県で行われた合宿の様子。軸がしっかりとした、お手本のような前傾姿勢。

前傾姿勢で走った方がいい、とはランナーであれば何度か耳にしたことがあるはず。しかし具体的にどの程度カラダを傾けるのが自然なのか、なかなか自分一人ではイメージをしづらい。レース観戦は、トップ選手のフォームを参考に前傾姿勢の正しい形を学ぶ絶好の機会だ。

肩甲骨と骨盤のリズムもチェック

福士選手のフォームのもう一つの大きな特徴が、肩甲骨と骨盤の滑らかな連動

「肩甲骨の動きと骨盤の動きがうまく連動できているので、フォームに余計な力感がありません。地面を蹴っているというよりは、リズムで進んでいるような印象を受けると思います」

「マラソンは力みがあるとどうしても最後まで持ちません。特に30kmぐらいまでは力を抜いて走ることがとても重要です。福士選手のフォームを追うことで、リズムの取り方やリラックスすることを自分のランでも意識できて、今より楽に走れるようになると思います」

リズムばかりは動画で確認してもらうのが確実だ。1月27日(日)の中継をじっくり観て、肩甲骨と骨盤のリズムをチェックしてみよう。

若手ランナーの走りも見逃せない

『大阪国際女子マラソン』には、招待選手のほかに、若手選手を対象にした「ネクストヒロイン」という大会独自の育成枠がある。立命館大学時代に駅伝で数多くの区間賞を獲得し、エースとして活躍した大森菜月選手は今回が注目の初マラソン。

過去に多くのオリンピック選手を輩出し、松田瑞生選手や前田彩里選手が所属する名門ダイハツが、満を持して送り出す“平成最後の大物”と呼ばれる逸材で、そのポテンシャルは陸上界でかなり高く評価されている。

大森菜月選手の写真
大森菜月(おおもり・なつき)/1994年、大阪府生まれ。ダイハツ所属。立命館大学時代に、1年生時から駅伝で区間賞を連発して注目される。日本インカレ5000mでは優勝、準優勝を2度ずつ経験。マラソンは今回が初挑戦となる。

昨年の大阪国際女子マラソンで8位に入った大阪学院大学の水口瞳選手も出場予定だ。

水口瞳選手の写真
水口 瞳(みずぐち・ひとみ)/1996年、静岡県生まれ。大阪学院大学。初マラソンとなった昨年の大阪国際女子マラソンで、2時間33分10秒で8位に。3月の学生女子ハーフでは、1時間12分34秒のタイムで優勝している。

「駅伝での大森選手はダイナミックで躍動感のある走りが特徴です。それをどうマラソン仕様に作り込んでくるのかが楽しみなところ。前半は静かに走って後半余裕があれば、どこかでギアチェンジをするかもしれませんね」

水口選手は小柄なのですがとても力強い走りを見せてくれます。腕もしっかり後ろに引けていますし、足の捌きも見事。接地時間が短い、地面を撫でるような足運びは、ぜひみなさんに観ていただきたいですね」

30km前後からはレース展開に集中しよう

『大阪国際女子マラソン』では、日本人1〜3位で2時間28分以内、日本人4〜6位で2時間27分以内(いずれも既にMGC出場権を獲得している選手を除く)であれば、MGC出場権を獲得できる。フラットで走りやすい世界屈指の高速コースゆえ記録は期待できるし、MGCを狙う選手同士の駆け引きも見応えがありそうだ。

ペースメーカーが離れる予定の30km地点までは静かな展開が予想されるものの、昨年の同大会で25km過ぎに飛び出して2位に入った前田穂南選手の例もある。タイムも着順も重要なだけに中盤以降は全く気が抜けない展開になり得る。前半で選手のフォームをじっくり観察して、中盤以降はレース展開に集中するのが、ランナーにとって2度美味しい観戦方法かもしれない

日本初の「ラップチャレンジ」も導入

ただでさえMGC出場権がかかっているレースを、さらに面白い展開にしそうなのが、日本で初めて導入された「ラップチャレンジ」。30〜35kmの5kmを最速で走ったランナーに50万円の賞金が与えられ(8位までの入賞者限定)、さらに大会最高記録(16分19秒)を更新すればさらに50万円のボーナスが獲得できる。

「ペースメーカーが離れると先頭集団の選手が牽制し合うこともあるのですが、このラップチャレンジを狙ってレースを動かす選手が出てくると思います。30km〜35kmで余裕があれば、外国人選手が果敢にペースアップすることも十分考えられます。最大100万円ですからね! 狙う選手はいるはずです」

大阪国際女子マラソンでは大阪城付近を走る
大阪国際女子マラソンでは15km過ぎと30km手前の2回、大阪城の近くを選手たちが走り抜ける。大阪ならではの風景もこの大会の魅力の一つだ。

ラップチャレンジの区間が過ぎた35km地点からは、39km付近まで緩やかな上りが続く。ここをいかに力強く走って乗り切るかも表彰台を目指すためのポイントだ。

東京オリンピック出場をかけたレースに出られるのか、出られないのか。選手生活を大きく左右するレースですから、最後まで目が離せません

1月27日(日)に開催される『第38回 大阪国際女子マラソン』は、カンテレ・フジテレビ系 全国ネットで12:00〜放映。

取材・文/神津文人 撮影/角戸菜摘 取材協力/スポーツコメンテーター・千葉真子 写真提供/関西テレビ(選手写真)

Share
Share