高性能体組成計はどう選ぶ? どう測る? 知っておきたい基礎知識10
「体組成」とは、筋肉・脂肪・骨・水分など、からだを構成する組成分のこと。そして体組成をはかる体組成計を使えば、自分のからだについてもっと詳しく知ることができるのだ。より効果的なカラダづくりのために、体組成計について知っておきたい基礎知識。
取材・文/廣松正浩 取材協力/インボディ・ジャパン、タニタ
(初出『Tarzan』No.728・2017年10月12日発売)
目次
1. 機種によって数値が微妙に違うのはなぜ?
体組成計は体脂肪量を実測しているわけではない。カラダに微弱な電流を流し、カラダの電気抵抗値を測り、身長、体重、性別なども加味し、多数のサンプルを統計処理して近い数値を表示するのだ(インボディのみ統計を用いない)。
人体の脂肪や筋肉など組織ごとの電気特性を割り出すには、多様性に富んだ基準データが必要となる。このデータに基づいた測定アルゴリズムこそが、各社の腕の見せどころ。各社それぞれ、基準とするデータやマシン設計、電気抵抗などが異なるため数値はどうしても違ってしまうのだ。
したがって、いろんなメーカーの体組成計をそろえて、日によって使う機種を変えるのはナンセンス。好みの一台に出会って、これと決めたら長い目で付き合い、日々の数値に一喜一憂しないことだ。
長期的に見て数値が増えつつあるのか、減りつつあるのか。筋肉と脂肪の内訳を把握し、生活の改善に役立てるべきものなのだ。
2. 体組成はどんな仕組みで測っている?
体組成計はカラダに微弱な電流を流す。
「脂肪は水分が2割程度で、筋肉は7割近く。だから筋肉量の多い人は電流が流れやすく、電気抵抗値が低くなります。反対に太っていて脂肪の多い人は電流は流れにくく、大きな抵抗値となります」(タニタ・西澤美幸主任研究員)
この抵抗値から筋量を推定しているから、厳密には実測ではなく、推測値を出しているのだ。
ということは、あらかじめ測定しておくサンプル数が多いほど、統計的には精度の高い測定となる。
「アームレスリングの選手のような左右の筋肉がアンバランスな方はカラダの部位別に電気抵抗を詳細に分析できる手電極グリップ付きの高精度タイプでの測定をおすすめします」。
3. 測ってはいけない人がいるなら、どんな人?
「短時間ながら微弱な電流が体内を流れるので、ペースメーカーのような電気製品を体内に入れている人はお使いになれません」
金属製部品を使った人工関節には干渉しないとのこと。「ただし、重い素材を使ったものだと、当然数値は大きく出ます」
気になるのは妊婦だが…。
「開発にご協力いただいた大学の研究者の方々のシミュレーションでは、子宮内に影響のないことが分かっていましたから、多くの妊婦さんにも測定にご協力いただき、母子ともに何の問題もなくお産に向き合っていただけました」。
4. 「ゴールドスタンダード」とは何ですか?
最近、医療機関で使用するような高精度な機種の宣伝文などで見かける気になる表現だ。
「業界用語みたいなものです。きわめて精度の高い測定法のひとつにDXAというのがあります。これは周波数の異なる2種類のX線を使ってスキャンし、画像分析で脂肪、骨、筋肉がどうついているか、全身を調べるものです」
電気抵抗で推測値を出す機器でも、高精度のものは測定結果がDXAの値に限りなく近づく。こうした診断や評価の精度が高いものとして広く認められた手法を指す。
5. 体組成の測定は毎日すべき? 一日のうち、いつ測るのがいい?
毎回の数値に一喜一憂すべきではないものの、できるだけ少ない数値を出したいのが人間のサガ。
「毎日、決まった時間の測定をおすすめします。そのときどきのカラダの状態で数値は変化します。その変化の理由を推測したり把握したりすることが大事です」
時間の取れるのが朝なら、毎日起きてから決まった時刻に。
「トイレの後がいいでしょう。ただし、起床直後は脱水気味でしょうから、体脂肪率は少し高めの数値が出やすいですね」。
6. 店頭での人気商品や売れ筋を教えてください。
多くの人が新生活を始める4月は、家電をそろえる人も急増する。この機会に体重計や体組成計を買う人も少なくないだろうが、「新製品が登場するのは、9月~10月が多いですね。ただし、時期に関係なくコンスタントに売れています」と中野翔平さん(ビックカメラ有楽町店ビューティーコーナー)は語る。
「カラダづくりが目的なら、グリップを装備し、部位ごとの数値が分かる高価格帯のモデルがおすすめですが、ダイエット目的なら、手ごろな価格でスマホと連動する機種をおすすめします」
健康、トレーニング、ダイエットなど、目的別に選ぶのがよい。
7. 本当に正確な測定は水没式しかないんでしょ?
水没式、正確には水中体重秤量法とは、被験者は水着で水槽に浸かり、アルキメデスの原理で体脂肪を割り出すというもの。
厳密な測定として長年研究機関などで行われてきたが、水中で呼気をすっかり吐き切る必要があって、慣れないと吐き切れず、誤差も生じやすい。いまはDXAの測定値を目安にするメーカーが多い。
8. 人種によって体組成に違いがあるって本当?
アフリカ系のマラソン選手の脚は驚くほど細く、美しい。彼らに日本人のデータで作った体組成計に乗ってもらっても、恐らく誤差は避けられない。
「骨格や筋肉量、骨量など、地域差によって体格の違いがありますから、海外では日本人のデータを搭載した機器で測っても正確な数値は出ません」(タニタ・西澤主任研究員)
海外の製品は、多人種でデータを取り、いろんな人種に合うような補正がされているという。
「なので、弊社も海外向けにアジアモデルとマルチエスニックモデルというものを輸出しています」。
9. 体組成計の設置場所はどこがいい?
「測定のタイミングとしておすすめなのは、トイレに行ってすっきりした後なので、トイレの近くやトイレまでの動線上ですね」(タニタ・西澤主任研究員)
水滴がじかに飛んでこなければ、脱衣所でも特に問題はない。
「いま、高精度な体組成計だと50g単位で測れますが、ここまでくると機器が非常にセンシティブになるので、しっかりした床でないと、測定完了までに少し時間を要するかもしれません」
10. 最近、増えつつあるデュアル周波数測定って?
1つの周波数だけでなく、2つ、あるいはそれ以上の電流をカラダに流して計測するのが、ひとつのトレンドになりつつある。
電流は周波数によって細胞膜を通過したり、しなかったりする。周波数が高いと全体の体水分を、低いと細胞外の水分を測定できる。
最低で高低2種の周波数でアプローチすれば、かなり正確な身体情報が得られ、精度の高い体組成データとなる。買い替えを考えている人は覚えておくといいだろう。