摂る脂質の種類で危険度が変わる? デンマーク人とイヌイットの比較から考える
取材・文/井上健二 取材協力/菅波孝祥(名古屋大学環境医学研究所教授)
(初出『Tarzan』No.756・2019年1月4日発売)
食事から摂る脂質の大半は中性脂肪で、中性脂肪は脂肪酸とグリセロールからなる。
このうち脂肪酸は食材により性質が大きく異なる。近年世界的に肉類や乳製品に多い飽和脂肪酸の摂取が増え、魚などに多いオメガ3系脂肪酸の摂取が減る傾向が強く、それが心臓病の増加と関連するという指摘がある。
魚を食べるアザラシを、食べるイヌイット
根拠の一つは、デンマーク本国の白人とデンマーク領北極圏グリーンランドに住むイヌイットとの比較。
摂取カロリーに占める脂質の割合はどちらも40%前後なのに、心臓病による死亡率は白人が約35%、イヌイットは5%ほど。
この差を生むのは摂っている脂肪酸の違い。白人は肉類や乳製品から飽和脂肪酸を多く摂るのに、イヌイットは(魚を食べる)アザラシなどからオメガ3系脂肪酸を多く摂る。飽和脂肪酸は肝臓でのコレステロール合成を促し、心臓病の前段階となる動脈硬化のリスクを高める。
反対にオメガ3系脂肪酸の代表であるEPA(エイコサペンタエン酸)は肝臓でのコレステロール合成を抑えて、肥満も防ぐのだ。
日本人は伝統的に魚介類の摂取が多かったが、今日では肉類の摂取量が魚介類を上回っている。1日に1回は意識して青魚などの魚介類を摂るようにしたい。
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教えてくれた人
菅波孝祥さん(すがなみ・たかよし)/名古屋大学環境医学研究所分子代謝医学分野教授。医学博士。基礎研究と臨床研究を繫ぎ、生活習慣病治療に繫がる研究を担う。京都大学医学部卒業。京大、東京医科歯科大学を経て現職。