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ウルトラマラソンの聖書2冊、ラン初心者の新人編集がこう読んだ
『ボーン・トゥ・ラン』
NHK出版。クリストファー・マクドゥーガル著。2,000円。
『遙かなるセントラルパーク』
文春文庫。トム・マクナブ著。上巻740円、下巻750円。
『ボーン・トゥ・ラン』と『遙かなるセントラルパーク』。あまたあるラン本の中でも、とりわけウルトラの素晴らしさを語ってくれるこのふたつ。
かたや英国代表陸上チームのコーチが書いたアメリカ大陸横断物語、もうひとつは冒険活劇と人類進化学など多くの顔を持つ世紀のベストセラー。まったくのランニングど初心者が読んだらどんな反応が返ってくるのだろう? さあ、編集担当キドくん、答えてくれ。
戸惑いながらもまず手に取ったのは『ボーン・トゥ・ラン』。本書を読むと気になって仕方なくなるのが“走る民族”と呼ばれるタラウマラ族。著者が彼らに会いに行くところから始まる物語はやがて、「ウルトラランナーvs人類最強の“走る民族”」へと繫がっていきます。
この壮大なストーリーが実話に基づいていることが心憎く、つい引き込まれます。間に挿入されるのが、“人はなぜ走るのか?”といった疑問に端を発する人類史や、今を時めくシューズメーカーが現代人の走り方を変えてしまった罪の話。後のふたつが寝耳に水で、ランナーでなくてもふむふむと読み進められます。
そして、アメリカ大陸横断レース(約5000km!)が主題のもう一本。さすがフィクション、ぶっ飛んでんな。と思ったものの、調べてみると過去に似たようなレースが。先の本にも出てきますが、世界にはとんでもないレースがたくさんあるようです。
この本、もちろん淡々とレースの模様が綴られるわけもなく、馬と競争したり、ボクシングで闘ったり、その道中にさまざまなドラマが。参加者の一人でおしゃべりなドク・コールが走法をよく語るので、ランナーの参考にもなるはず。先の本で自らが走るために生まれてきたことを知り、後の本で走ることが生み出すドラマを知る。すると、走らない理由こそないように思えてきます。
構成・文/内坂庸夫 感想/木戸智士 撮影/大内香織
(初出『Tarzan』No.751・2018年10月11日発売)